「所存」と「意向」、文書でよく目にし、ビジネスシーンでは会話でも使われる言葉です。意味が似ているためか、誤用されることが多い言葉でもあります。

「所存」と「意向」の意味

所存の意味

所存とは〔改まった場合や書簡文で用いる言葉〕心に思っていること。考え。意見。(出典:三省堂大辞林)

意向の意味

意向とはどうしたいか,どうするつもりかという考え。(出典:三省堂大辞林)

所存と意向の違い

意味の違いをはっきりさせるのに重要なポイントは、「誰の」考えなのかということです。

「所存」は自分側の考えを指す

「思う」「知っている」の謙譲語である「存ずる」と、「思うところ」の「ところ(所)」が、漢文の語法で「所存」になっています。
以上の由来から、「所存」は主語が自分の時に使います。

「意向」は相手側の考えを指す

「意向」は、「心の向くところ」「思惑」の意味で、考えの方向性や本心を意味しています。通常は、「意向」の前に、誰の意向なのかを表す言葉が使われます。誰かを表現すれば、目上の人に対しでも、上司、後輩に対してでも使えます。

本来、「私の意向は…」という表現は間違いで、「私の所存は…」と表現すべきです。
しかし、「意向」は誰の考えでも指せるというのが一般的になってきており、現在では一概に間違いとは言えません。

「所存」と「意向」の使い分け方

使い分けの重要なポイントは、意味に加えて「敬語」なのか「敬語」ではないかです。

「所存」は敬語の中でも謙譲語

前述したように、「所存」は「思っています」「考えています」の謙譲語です。謙譲語とは、話す相手よりも自分がへりくだった表現のことで、目上の人に対して使います。
つまり、「所存」は、目上の人に自分の考えを伝える際に使うのが正しい使い方です。

「ご所存」は二重敬語

「所存」に「ご」を付けるのは間違いです。「所存」自体が謙譲語なので、あえて丁寧にして二重敬語で使う場面はありません。

「〜と思う所存です」は二重表現

「~と考える所存です。」「~と思う所存です。」という表現も、同じ意味が2つ重なっているため誤りです。

主語が自分ではない場合は「所存」使えない

例えば、「○○さまの所存をお伺いしてもよろしいでしょうか?」という表現は、主語が自分ではないのに謙譲語を使っているので誤りです。

「意向」は敬語ではない

「所存」と違い、「意向」自体は敬語ではないので、目上の人に対して使う際は「ご意向」として使いましょう。敬語にしなくてもいい相手、後輩や自分に対して使う時には、「意向」のままで使います。
「先方のご意向を伺います。」とは言いますが、「私のご意向では…」とは言いません。

「所存」と「意向」を使った例文18個

「所存」の例文11選

リーダーとして、新しい挑戦に取り組む所存です。
今後は、報告を徹底する所存です。
今後も鋭意努力してまいる所存です。
決意を新たに取り組む所存です。
精いっぱい、努力いたす所存です。
今後も精進してまいる所存です。
目標を新たに取り組む所存です。
より一層サービスの向上を目指す所存です。
仕事に邁進する所存です。
社会貢献に尽力する所存です。
いいチームワークを築いていく所存です。

「所存」の意味が「思う・考える」なので、決意や意向を伝える場面に使います。また、謙譲語なので相手を敬う意を込めて伝えることができます。

「意向」の例文7選

再度ご意向をお伺いしたく、連絡いたしました。
大変申し訳ございませんが、ご意向には添いかねます。
こちらの意向を○○様にお伝えいたしました。
◯◯(相手)のご意向に添う形で調整いたします。
ご意向をお伺いしてもよろしいでしょうか?
そちらのご意向に沿うよう努力致します。
先方のご意向を踏まえると…。

お客様や目上の方、上司に対して使用する場合は「ご」を付けましょう。自分の考えを述べる場合は「所存」を使いましょう。

まとめ

「所存」と「意向」に関してのポイントを以下にまとめます。

所存と意向の意味の違い ポイント

「所存」は自分側の考えを指す
例)○:決意を新たに取り組む所存です。(決意をするのは自分)
×:社長の所存をお伺いしてもよろしいでしょうか?(社長は自分ではない)

「意向」は相手側の考えを指す
例)○:大変申し訳ございませんがお客様のご意向には添いかねます。(お客様が相手)
×:私の意向では、このように進めていきたいと考えます。(私は相手ではない)

※しかし、「意向」は誰の考えでも指せるというのが一般的になってきており、現在では一概に間違いとは言えない状況になってきています。

所存と意向の使い分け ポイント

「所存」は敬語の中でも謙譲語、目上の人に自分の考えを伝える際に使う

「意向」は敬語ではないので、目上の人に対して使う際には「ご」をつけて「ご意向」として使う

日本語にはわかっているようでわからない言葉も多く、「所存」と「意向」は、誤用や意味の混乱が多い言葉のひとつです。「所存」のように、日本語ならでは敬語のニュアンスを正しく使いこなし、相手を敬う気持ちを表現できることは、ビジネスマナーのひとつではないでしょうか?
言葉の意味を正しく理解して相手をたてながら使い分けすることは、うまく自己表現をする技術(アサーション)に通じるので、できるビジネスパーソンには必須といえるでしょう。

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