ここでは「佳い」という言葉について解説します。少しまぎらわしいですが「住まい」の「住」ではありません。「佳作」や「佳人薄命」などの熟語や、人名の「佳子」「由佳」などでおなじみの「佳」という漢字を訓読みした「佳い」という形容詞をとりあげます。

「佳」を「佳い」と単独で訓読みする用法はあまり一般的ではありませんが、祝賀の席の挨拶などで「佳き日」「佳き一年」といった、やや古風な言い回しで使うことがあります。

そこで本項では 「佳い」の読み方や語源、正しい使い方について詳細に解説いたします。どうぞ最後までお読みください。

「佳い」の読み方と意味

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「佳い」という字の読み方は「よい」になります。意味は「すぐれていること」「よいこと」「姿形が美しいこと」などをあらわします。「佳い」は「良い」と基本的に同じ意味ですが、「佳い」には風景や花、人などが美しいというニュアンスがあります。

「佳い」の語源

「佳」という漢字の語源は「人」の象形に由来する人偏(にんべん)と「圭」を合わせた会意文字になります。「圭」は四本の横線を平行かつ均等に並べた象形文字で、「幾何学的で均整が取れていること」「整っていること」をあらわします。

そこで「人」と「圭」を合わせて「均整がとれた美しい人」をあらわす「佳」という漢字が誕生しました。やがて「佳」は「よいこと」「すぐれていること」「美しいこと」など「良いこと」全般をあらわすようになり、日本にも古くから浸透しています。

「佳い」は「嘉い」の代用字としても使われる

「佳い」と読みが同じ漢字に「嘉い」があります。意味も「佳い」と同じ類義語になります。もともと「嘉」は祭祀用の楽器と音符を示す象形文字で「めでたい」ことをあらわし、「佳」が持つ「外観が整っていて美しい」というニュアンスは含まれません。

また「嘉」はおめでたい文字として「佳」と同じく人名にも用いられますが、常用漢字ではないため、人名以外では基本的に使用されません。そのため「嘉い」と読みと意味が同じ「佳い」が代用字として使われることがあります。

ただし厳密には「佳い(よい)」という使い方もまた常用漢字では「表外」つまり規定外です。そのため公的文書や新聞記事では使うことができません。日常のやりとりやビジネス文書では「佳い」や「嘉い」は使わず、常用漢字の「良い」で統一しましょう。

「佳い」の使い方と例文

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先述したように「佳い」は「すぐれている」「美しい」「めでたい」などの意味をあらわす言葉です。基本的な意味は「良い」と同じですが、使い方によって「佳い」ならではの「美しい」というニュアンスが強調されます。

「佳い男」「佳い女」

「佳い」を人の形容に使うと「容姿が美しいこと」「知性や品格にすぐれること」といった意味をあらわします。「佳い男」「佳い女」はそれぞれ「美男」「美女」の意味ですが、「佳」は見た目だけでなく「知性や品格にすぐれる」というニュアンスもあります。

同様に「佳人薄命(かじんはくめい)」は「美女は長生きしない」「美人は幸せになれない」という意味をあらわす故事成語ですが、この「佳人」も単なる美女や美人ではなく品格にもすぐれる、という「才色兼備」に近いニュアンスになります。

ちなみに「佳人(かじん)」は「美しく気高い女性」をあらわす言葉です。男性の意味は含まれませんのでご注意ください。

「佳い男」の例文

二枚目役者は星の数ほどいるが、男も惚れる佳い男となると彼の右に出る者はいないだろう。

女将は還暦を過ぎていますが、袷(あわせ)の着物で舞う姿は今も隆(りゅう)として、それはそれは佳い良い女ですよ。

 

「佳い時間」「佳い一日」「佳い一年」

「佳い」という形容詞を時間や年月などの期間に添えて「佳い一年」のように用いると、単なる「良い一年」ではなく、「めでたい一年」「縁起の良い年」というニュアンスが加わります。そのため年賀状や祝宴の案内文でよく使われます。

「佳い一日」の例文

今日は朝から日本晴れで、願ってもない佳い一日となった。

「佳い」と「良い・善い・宜い・吉い」の違い

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「佳い」と読みが同じで意味も似ている言葉はたくさんあります。そこでここでは「良い・善い・宜い・吉い」の4語をピックアップして解説します。

まず最初に「良い」について。「良」という漢字の元は、収穫した穀物から良いものを選別する古代の器具の象形文字です。「良い」の意味は人や物の見た目や性質が秀でていること。天候などが好ましいこと。肯定的な意味を示す最も一般的な形容詞です。

次に「善い」は「道徳や規範、秩序に照らして理にかなった正しい行い」を意味する言葉です。熟語でも「善行」や「善人」のように「正しい行い」または「正しい行いをする人」の意味で用いられます。

3番目の「宜い」は「宜しい(よろしい)」から派生した言葉です。「宣」は「のたまう」とも読みます。「宜」の由来は、古代人が神前に捧げた供物の象形文字。神が供物に満足の意を示したという意味で「宜し(よろし)」という言葉が成立しました。

「宜い」の意味も基本的に「良い」と同じですが、「よろしい」という語源が意味する「適切である」「許容範囲である」というニュアンスもあります。

最後の「吉い」は「めでたいこと」「幸先が良いこと」をあらわします。

「佳い」「善い」「宜い」「吉い」は同じ「よい」でもそれぞれニュアンスが違います。ただし、いずれも常用漢字ではありません。日常的に使用する文言はなるべく「良い」に統一しましょう。

「佳い」の類義語と例文

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「佳い」と同じ意味の類義語について、前述した「良い」や「善い」など、同じ「よい」と読む言葉があります。それらを除いても「良好」「善良」「優秀」「絶妙」「素敵」「気高い」「卓越」「美麗」「眉目秀麗」など数多くの言葉をあげることができます。

そのうち「眉目秀麗(びもくしゅうれい)」は容貌が端正で美しいことを言いますが、「佳人」とは逆に男性の顔だちをあらわします。女性の容姿をあらわす言葉ではありませんので注意しましょう。

「眉目秀麗」の例文

先生のご子息はモデルばりの眉目秀麗な美男子だ。

「佳い」の英語表現


「佳い」の英語表現としては「awesome」「brilliant」「excellent」「extraordinary」「great」「good-looking」など数多くの言葉や言い回しがあります。

それらは皆様もよくご存じと思いますので、ここでは本来の意味は悪いのにスラングでは逆に絶賛の意味で使われる要注意の英語をご紹介します。

sickとill

「sick」は「病気」の意味ですが、とりわけ「吐き気」「嘔吐する」という意味で使われます。一方、「ill」は重い病気を意味します。そんな「sick」と「ill」ですが、スラングではどちらも「最高」「かっこいい」という意味で使われます。

「sick」と「ill」は車はファッションなど見た目がイケている、というニュアンスが強く、その意味でも「佳い」の今風の英語表現にぴったりの言葉といえるでしょう。

badass

「badass」は直訳では「悪い尻」の意味。もとは「くそ野郎」と相手を誹謗する言葉でしたが、現在では「タフなやつ」「最高」「イケてる」など、おもに男性をほめる意味で使われます。

まとめ

  • 「佳い」は「良い」と読みも意味も同じです。
  • 「佳い」には風景や花、人などが端麗で美しいというニュアンスがあります。
  • 「佳い」と読みと意味が同じ文字に良い・善い・宜い・吉いなどがあります。
  • 「佳い」の類義語は「良好」「善良」「優秀」「眉目秀麗」など数多くあります。
  • 「佳い」と同じ意味の英語の中には「sick」や「ill」のようにスラングで意味が変わる言葉もあります。