ここでは「定性的」という言葉について解説いたします。

「定性的」は人類学をはじめ、さまざまな学問分野で広く使われている学術的な言葉です。近年ではビジネス用語としても浸透していますが、元が学術用語だけに正しい意味はあまり理解されていません。

そこでここでは「定性的」の正しい意味や使い方について、実際の用例や類義語・対義語、英語表現などもあわせて詳細に解説いたします。どうぞ最後までお読みください。

「定性的」の読み方・意味・使い方

ハロー効果
「定性的」は「ていせいてき」と読みます。辞書的な意味は「ものごとの性質に視点を置くこと」。学術分野では「対象の質的な要素に注目した研究」という概念で用いられています。

この場合の「質」とは「数値で示せない質的な側面」を意味します。言葉を換えると「定性的」とは「数字で示せない性質のこと」をあらわします。そこでビジネスシーンでは「数字ではなく言葉で説明すること」という意味で使われています。

「定性的」は「定量的」という言葉の対義語となります。「定量的」とは、対象の数値的なデータに視点を置くこと。「定性」と「定量」の意味の違いは文字通り「質」と「量」の違いですが、具体的には「非数値化」と「数値化」の違いとも言えます。

「定性的」も「定量的」も意味は難解ですが、学術研究や統計分析のジャンルでは非常に重要な概念でもあります。ビジネスシーンではマーケティングの統計やリスク分析でよく使われる言葉です。

「定性的」と「定量的」の意味と違いをわかりやすく解説するために、自動車の解説を例にあげてみましょう。

たとえば、ある自動車について以下のような解説があるとします。

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4010×1730×1450mm
ホイールベース:2560mm
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:1.5リッター直列4気筒DOHC
定員:5名
燃費:27.5km/リッター

この解説では自動車の特徴を数値のみで示しています。これが「定量的」な視点による解説です。

一方、「定性的」な視点で解説すると以下のようになります。

この車は小型で扱いやすいサイズで室内が広く、燃費がとても良いファミリー向けの乗用車です。

この解説では数値を一切使用せず、自動車の特徴を「小型」「室内が広い」「燃費がとても良い」などの質的な概念でとらえています。これが「定性的」な視点による解説です。

「定性的データ」とは

「定性的データ」(または定性データ)とは、統計やマーケティング調査などの分析に使用されるデータの中で数値化できないものをいいます。たとえば「おいしい・まずい」などの感覚的な評価や、「好き・嫌い」などの心理的な評価に該当します。

マーケティングでは、「商品のどこが気に入ったか・気に入らないか」「パッケージデザインは好きか・嫌いか」「商品のことをどこで知ったか」といった数値化できない質的な要素が、消費者の購買意識を分析するうえで重要視されています。

一方で、「定性的データ」は調査対象者の主観による情報が多く、分析者の主観によっても結果が変わる可能性があります。そこでマーケティング分析の基礎資料には、客観性の高い定量データと主観性の高い定性的データを併用するのが一般的です。

「定性的リスク分析」とは

「定性的リスク分析」とは、リスクの発生する確率とその影響度を定性的に分析すること。システム開発などのプロダクションマネージメントでリスクの査定・評価に用いられる手法です。

具体的には「誤認識」や「操作ミス」など識別可能なリスク項目について、発生確率と影響度を分析します。発生確率は「非常に少ない」から「非常に高い」までの定性的な評価と、「1から5まで」のような定量的な評価があります。

一方「影響度」はプロジェクトの目標に与える影響の大きさのこと。こちらは脅威によるマイナス効果と好機によるプラス効果のふたつがあります。影響度も「非常に低い」から「ほぼ確実」までの定性的な評価と、数値化した定量的な評価があります。

こうして査定したリスクの発生確率と影響度の結果によってリスクの等級を決定し、緊急度や優先順位も検討したうえで効果的なリスク対策を実施します。一般にリスク分析では定性的分析が重視されるため、定量的分析は省略される傾向もあります。

「定性的」のビジネス上での使い方

リフレクション
「定性的」という言葉は、ビジネスシーンにも広く浸透しています。具体例をあげると「定性的な目標」「定性的な説明」「定性的な分析」といった表現がよく用いられます。

「定性的な目標」

定性目標とは、目指すべき状態などの質的な目標のこと。質的=非数値的な目標を掲げて成果に至るまでの過程に着目し、行動の価値を計るための指標となるため「行動目標」とも呼ばれます。

ただし要素は定性的でも数値化できる目標も少なくありません。定性的目標と定量的目標は二者択一ではなく、表裏一体のプロセスとして目標を設定することが重要です。

「定性的な目標」の例文

今期の定量目標として前年比2割アップの売り上げをめざします。定性目標としては、売り上げ2割アップを達成するために経験の浅い社員の研修を重点的に行い、スキルアップをめざします。

「定性的な説明」

「定性的な説明」とは、ものごとの特徴や性質を数値ではなく、言葉で表現することです。

「定性的な説明」の例文

お客様との商談では商品の特徴や魅力についてわかりやすく定性的な説明をするように心がけなさい。

「定性的な分析」

「定性的な分析」とは、数字であらわせないデータを分析すること。調査対象者の趣味趣向や心情などの分析を意味する表現です。

「定性的な分析」の例文

今回の市場調査では、街頭インタビューや自由記述式のアンケートによって定性的な分析データを重点的に収集しました。

「定性的」の類義語と例文

OEM
学術用語で「定性的」と全く同じ意味をあらわすのは「質的」という言葉です。

「質的」の例文

学術分野における調査研究では量的アプローチと質的アプローチは全く異なるものではなく、ともに対象から採取したデータを統計的に処理して結論を得るというプロセスは共通している。

「定性的」の対義語と例文

ROA
定性的と逆の意味を持つ対義語としては、「定量的」「量的」をあげることができます。学術用語としての意味は「定量的」も「量的」も同じで、ものごとの状態や変化などを数値化して分析することをあらわします。

「定量的」の例文

定量的リスク分析とは、特定のリスクを量的に算定し、プロジェクトに与える影響の度合いを分析することをいいます。