有象無象とは|意味・読み方・使い方・語源・類語・対義語・英語表現を解説

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今回は「有象無象」という言葉について解説します。

テレビや書籍などで見聞きすることがある言葉ですが、実際に使う機会はあまりないという人が多いことでしょう。使いこなせれば表現の幅が広がりますが、深く理解しないまあ使っていると、恥ずかしい思いをしたり、相手に不快感を与えたりしてしまうおそれもあります。

そこで、本記事では「有象無象」の意味や使い方に加え、語源や類義語、英語表現についても解説していきます。

有象無象の読み方・意味・使い方

「有象無象」は「うぞうむぞう」と読みます。間違えて「ゆうぞうむぞう」や「ゆうしょうむしょう」などと読んでしまわないように注意が必要です。意味は2通りの意味があり、それぞれ「多く集まった、つまらない存在」と「仏教の『有相無相』」です。前者は後者が転じて生まれたものです。

意味①:多く集まった、つまらない存在

多く集まった存在、すなわち集団には良いものと悪いものがあり、良い集団はきちんとした目的に沿って統率の取れた行動をします。一方、悪い集団は取り立てて目的がなく、それぞれが好き勝手に行動するため、統一性や一貫性がありません。後者のような集団をつまらない、すなわち数ばかり多くて役に立たないとさげすむ意味で、「有象無象」というのです。人だけでなく物に対しても使うことができます。

  • 「目的も無いまま人を寄せ集めただけでは、有象無象になってしまう」
  • 「この店に売っている商品は、有象無象と言われても仕方のないほどひどいものばかりだ」

意味②:仏教の「有相無相」

「有相無相(うそうむそう)」とは、世の中に存在するすべての「現象(=形のあるもの)」と「心理(形のないもの)」を表す仏教用語です。形のあるものを通じて形のないものが表されるという考え方です。これにさげすみのニュアンスが加わって①の意味になったといわれています。

同じ仏教用語に「有想無想」というのもあります。これは「心に何も思い浮かべることのない状態」という異なる意味を持っているので、混同しないようにしましょう。

  • 「時間とともに変化するのは、有象無象に共通することだ」

有象無象の語源

先述のとおり、「有象無象」は「有相無相」が語源だとされています。意味ももともとは②だけでした。

「相」から「象」になった理由については諸説ありますが、有力なのは「相」が姿や形を表す字として一般に理解されにくかったというものです。当初は「像」のほうがわかりやすいと考えられ、まず「有像無像」に変わりました。そして、その読みである「ぞう」が転じて「象」の字が当てられたのです。

また、意味が「数が多いだけで役に立たない人々や物」に変化したのは、あらゆるものを指すことから転じて、「形が有るかどうかも分からない」というニュアンスになった体という説があります。また、「うじゃうじゃ」や「うぞうぞ」と語感が似ており、「統率の取れていない、バラバラな動きをする群れ」という意味が加わったという説もあります。

有象無象のビジネス上での使い方

「有象無象」をビジネスシーンで使う場合には、注意が必要です。有象無象はさげすみのニュアンスを含む表現なので、人に対して使うのは失礼にあたり、トラブルの原因にもなりかねません。②の意味で使ったつもりが①の意味に捉えられてしまう可能性もあります。

もし使うのであれば、自社の商品や企画に対して「有象無象にならないようにブラッシュアップしてまいります」などというように、上司や取引先に謙遜するようにして用いるのがベターです。

有象無象の類義語と例文

有象無象の意味は2通りあり、それぞれに類義語が存在します。ここでは意味①の類義語として「烏合の衆」と「十把一絡げ」の2つを、意味②の類義語として「森羅万象」「諸事万端」「有情非情」の3つを紹介します。

烏合の衆

「烏合の衆(うごうのしゅう)」とは、「統制や団結力のない集団」という意味です。有象無象とほぼ同じ意味なので、そのまま入れ替えて使っても問題はありません。「烏」はカラスのことで、「合」は集団を意味しています。また、「衆」は多くの人々という意味を持っており、「カラスの群れのような人々」ということになります。カラスが群れをなして無秩序に鳴く様子から生まれました。

十把一絡げ

「十把一絡げ(じっぱひとからげ)」とは、「いろいろなものを区別なくひとまとめにして、価値の低いものとして扱うこと」または「数が多いだけで、値打ちの低いこと」です。後者の意味が有象無象と似ています。

「十把」は「十束」と同様の意味で、「一絡げ」は「一つに束ねること」です。つまり、ひとまとめにして扱ってもいいくらいに取るに足らない者の集まりということになります。ただ、有象無象は集団の中の個々の価値や能力は問題にしておらず、あくまで集団としての質を評価しています。この点では、個々の質が低いニュアンスで使う十把一絡げとは異なっていると言えるでしょう。

森羅万象

「森羅万象(しんらばんしょう)とは、「この世に存在するすべてのもの」のことを意味します。「森羅」は木々が限りなく茂り並んでいる様子ことで、「羅」は「羅列」という言葉があるように、並ぶことです。「万象」の「万」はこの場合は「すべて」、「象」は有象無象と同じく有形のものを意味しています。

有情非情

「有情非情(うじょうひじょう)」は、森羅万象と同じく「この世に存在するすべてのもの」という意味です。「有情」とは感情や意志があるということであり、すなわち「命があるもの」のことを意味します。対して「非情」は石などの「感情を持たないもの」すなわち「命のないもの」のことです。

有象無象の英語表現

有象無象の英語表現はいくつかありますが、ここでは「odds and sods」「the ragtag and bobtail」「the mob」の3つを紹介します。

odds and sods

「odds and sods」は「半端者」「がらくた」という意味です。

「odds」はもともと「勝ち目」や「見込み」のことで、日本語でも競馬などでオッズという言葉を見聞きします。一方で「What’s the odds?(どうでもいいじゃないか)」という表現があり、これにより「どうでもいいものごと」という意味も加わりました。また、「sods」は「馬鹿者」「厄介者」のことで、これが転じて「不要なもの」「どうでもいいもの」を意味しています。

the ragtag and bobtail

「the ragtag and bobtail」は、有象無象や烏合の衆と訳される言葉です。「ragtag」は「寄せ集めの集団」という意味で、これだけでも有象無象の英語表現として使えます。一方、「bobtail」は「短いしっぽ」のことです。

the mob

「the mob」には「大衆」や「群衆」といった意味があります。日本でも近年漫画やアニメを中心に使われています。また、「フラッシュモブ」と呼ばれる、SNSなどで集まった不特定多数の人々が、通行人を装っている最中に突然ダンスなどのパフォーマンスを始める活動も話題になりました。

まとめ この記事のおさらい

  • 有象無象は「うぞうむぞう」と読む。
  • 有象無象の意味は「取るに足らない集団」と「この世に存在するすべてのもの」という2通りの意味がある。
  • 有象無象の語源は「有相無相」という仏教用語。
  • 有象無象をビジネスシーンで使う場合は、謙遜してものごとを言うときに用いるのがベター。

以上が「有象無象」についての解説です。もともとは仏教の世界で用いられていた高尚な言葉でしたが、使われるにつれてさげすむ意味が加わってしまった言葉です。

このように、最初は上品な言葉が人々に使われていくうちに品のない言葉になっていくケースは多くあり、有名な例として「お前」などもあります。そうした過程を知っておくことで、言葉に関する理解が深まり、使い方を誤ることも減らすことができることでしょう。