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「ユング」はフロイト、アドラーと並ぶ心理学の3大巨頭と呼ばれています。多くの人は学生時代の倫理の授業などで名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、ユングの学説について詳しく知る機会はあまりないでしょう。
この記事では、ユングの学説や、心理学の3大巨頭であるユング以外の2人、フロイトとアドラーについて解説していきます。
ユングとは
ユング(カール・グスタフ・ユング/Carl Gustav Jung)は、スイスの心理学者、精神分析学者です。1875年スイスの牧師の家庭に生まれ、1961年、85歳でこの世を去っています。
精神分析学の創始者であるフロイトの協力者として精神分析学の発展につとめましたが、後に考え方の違いからフロイトのもとを離れています。
ユングの心理学は「人間の心の働きは意識のコントロールや認識を超えた“無意識”の働きが大きな位置を占める」という考えに基づいています。
ユングの学説を語るときに欠かすことができないのが「集合的無意識」の概念です。人の心には個人の体験に基づく個人的無意識のほかに、遺伝的に伝えれられる「集合的無意識」があると考えました。そして、個人的無意識と集合的無意識の両方を含む人の心の全体像を解明する分析心理学を確立しました。
ユングの心理学とは
ユングの心理学の基本は「対話」
ユングの心理学の基本は「対話」にあります。ユングは、片方がもう一方の話を聞くという一方通行のやり取りに疑問を持ち、互いのやり取りを通してお互いに影響しあうという「対話」にこだわっていました。
ユング以前の心理療法の世界は対話型ではなく、患者の話を医師が聞き、分析を行うという形式のものでした。この患者が一方的に自分を主張し、医師が一方的に分析をすることがはたしてよいことなのだろうか…とユングは疑問を持ちます。そして、「対話」によりお互いに高め合ったり深め合ったりと影響しあうことが、人の心理をより深く理解することにつながるのではないかと考えたのです。
ユングの「対話」は、ただ単に言葉を交わすものとは違います。お互いの心がかみ合い、お互いの反応を積み重ねることによって「対話」は成立するとしています。
そしてユングは、人対人だけではなく自分の内面と向き合う、自分自身との「対話」も重要視しています。自分は今、何をどう感じてどう反応しているのか、自分自身と「対話」することで自身の内面の変化を見逃さないことが大切だとしているのです。
人の心の中は複雑で、「誰かに構ってほしい」という気持ちと「束縛されるのは面倒」だという気持ちのような相反する気持ちが同居しています。自覚しているものもあれば、自分では気づかないレベルで相反する気持ちを抱いていることもあります。
ユングは、このような複雑な心のしくみを理解するためには、「対話」を繰り返すことが大事だと考えたのです。
集合的無意識
ユングの心理学で最も有名なのが「集合的無意識」の概念でしょう。集合的無意識とは、人類が太古から繰り返してきた無数の体験が積み重なってできた、普遍的なイメージを持つ無意識の領域のことです。
フロイトは、無意識を個人の体験から解釈する精神分析学をとなえましたが、ユングはフロイトの成人分析学を批判し、人の心には個人的無意識のほかに集合的無意識が存在する。集合的無意識とは、原子からの人類の経験に基づくものであると考えました。
元型(げんけい)
元型は「アーキタイプ」といい、すべての人間の心の根底にある集合的無意識の普遍的な型のことです。元型的なイメージは、時代や民族をこえてすべての人類の神話・宗教・夢などに共通して現れます。
代表的な元型としては「グレートマザー(大母)」「アニマ(男性の中の女性の魂)」「アニムス(女性のないの男性の魂)」などをあげています。
タイプ論
ユングは、人間を大きく「外向的」「内向的」の2つに分けました。この2つは、エネルギーが外側(他者)に向いているか、内側(自分自身)に向いているかという違いです。外向的な人は世の中の情勢や流行に左右されやすいタイプ、内向的な人は自分自身の内側のものに左右されやすいタイプといえます。
さらにユングは、心のパターンを「思考」「感情」「感覚」「直観」の4つに分けました。4つのうちどの機能が最も強く働くかで、人をタイプ分けできるという考え方です。
「思考」
物事を論理的にとらえるタイプです。好き・嫌い、心地よい・心地悪いといった基準ではなく、論理性重視で物事を判断します。
「感情」
思考とは反対に、物事を、好き・嫌い、心地よい・心地悪いで判断するタイプです。
「感覚」
物事を、見たまま、あるがまま、いってみれば写真で撮ったように捉えるタイプです。
「直感」
思いつき・ひらめきを重視するタイプです。感覚とは反対のタイプとされます。
この「外向的」「内向的」と「思考」「感情」「感覚」「直観」の4つのタイプを組合せて、ユングは人は2×4の8つのタイプに分類されると考えました。
ユングは「心理学の3大巨頭」の一人
ユングは「フロイト」「アドラー」と並ぶ「心理学の3大巨頭」の一人とされています。ユング以外の二人についても、簡単に触れていきます。
フロイトは「精神分析」の創始者
フロイト(ジークムント・フロイトSigmund Freud)は、オーストラリアのウィーンを中心に活躍した精神医学者です。頭に浮かぶことを患者に自由に離させる自由連想法にによって、神経症の治療を行いました。
フロイトは無意識の中に抑圧された性的欲求を患者に自覚させ、それを意識的に制御できるように導くことで神経症を治療しようとする精神分析学を唱えたことで有名です。
アドラーは「嫌われる勇気」で有名
アドラー(アルフレッド・アドラー/Alfred Adler)は、オーストリア出身の心理学者で、「アドラー心理学」と呼ばれる心理学を創唱したことで有名です。
「嫌われる勇気」は、「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学を物語調にして平易に伝えた書籍です。2013年に出版され、100万部を超えるベストセラーとなったことで、アドラーの名前が日本に急激に広く知られるようになりました。
ユングについてのまとめ
- ユングはスイスの心理学者、精神分析学者で、1875年に生まれ、1961年、85歳でこの世を去っています。
- ユングの心理学に基本は、互いに心を通わせ反応を積み重ねる「対話」にあります。
- ユングの代表的な概念に「集合的無意識」「元型」「タイプ論」があります。
- ユングは「フロイト」「アドラー」と並ぶ「心理学の3大巨頭」の一人とされています。
- フロイトは精神分析の創始者として、アドラーはアドラー心理学をベースにした「嫌われる勇気」で知られています。