「さもありなん」とは|意味・使い方、類語・英語表現と例文を解説

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この記事では「さもありなん」の意味や使い方について解説いたします。

「さもありなん」はよく見聞きする言葉ですが、その意味についてはなかなか分かりにくいところがあるかもしれません。
なぜなら字面だけでは意味を推測しにくいからです。

間違った解釈をすることがないよう、実際にどういう意味でどのような使われ方をしているのか一つずつ解説します。

さもありなんとはなにか

「さもありなん」は漢字で「然もありなん」と書きます。

どこか方言のような響きに感じることがあるかもしれませんが、方言ではなく古文に由来しているものです。

見聞きしただけだと意味を想像しにくいのはその為だといえるでしょう。
また口語(話し言葉)より文語(書き言葉)として多く見られるのは、古文でよく取り上げられているからだといえます。

「さもありなん」は分解して考えるとその由来や意味がよく分かるので、それぞれ確認していきましょう。

さもありなんの意味

「さもありなん」は「いかにもそうであろう」や「確かにそんなことだろう」、「当然だろう」という意味です。

また状況や使い方によっては「そうであるに違いない」や「そうであることはもっともだろう」という意味で使われることもあります。

なお「さもあらん」と表現がありますが、これも「さもありなん」と同じ意味です。

さもありなんの語源

「さもありなん」は複数の品詞が組み合わさってできた言葉です。

品詞は「ひんし」と読み、「単語を形態と職能によって分類した種別」という意味があります。
品詞の例としては名詞や動詞、形容詞や副詞等があり、「さもありなん」も品詞分解して考えた方が分かりやすいです。

「さもありなん」を品詞分解すると「さ・も・あり・な・む」に分けられます。
「さ」と「も」と「あり」が合わさると推量や許容の意味がある複合助動詞「さもあり」になり、完了の助動詞「む」の未然形「な」と推量の助動詞「む」と合わせたものが「さもありなん」です。

なお「む」は発音の都合上「ん」とされる場合があり、「さもありなん」の場合も「ん」が使われています。

専門的な用語が並んでいますが、ここで肝心なのは推量を意味するものが複数使われていることです。

推量は「すいりょう」と読み、「物事の事情や人の心等を推し量ること」という意味があります。
送り仮名を入れると「推し量る」と書くので連想しやすいかもしれません。

推量の意味がある言葉が混じっているからこそ「さもありなん」は先述のような意味になるのです。

そのまま意味を覚えるより、このように品詞分解して覚えた方が記憶として定着しやすいかもしれません。

文法上のさもありなん

文法上で「さもありなん」と考える際には、語源で取り上げた品詞分解が最も効果的で分かりやすいといえるでしょう。

古文では「そのようになると思った」や「予想通りになった」等の意味で使われています。

例えば日本三大随筆の一つ「徒然草」には次のような表現があります。

「久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て、通を失ひけんは、まことに手足・膚(はだえ)などのきよらに、肥えあぶらづきたらんは、外の色ならねば、さもあらんかし。」

上記を現代語訳すると以下のようになります。

「昔久米の仙人が、川で洗濯している女の、裾をたくし上げてあらわになった脛(すね)を見て神通力をなくし、空中から落下したという伝説がある。
女の手足や肌がきめこまかく、むっちり脂がのっているのは他の色と違い女の色香だから、そこそこ人間臭さを残していた仙人が心惑わされたのも当然といえば当然であった。」

この場合「さもありなん」は「さもあらん」と表記されており、末尾に「かし」がついています。

「かし」は強意の補助動詞として使い、今回は「当然といえば当然であった。」のように意味を強める為に使われています。

また文法上でよく取り上げられるのは、「むべなるかな」です。
末尾に「むべなるかな」とつけて「さもありなん むべなるかな」とすることで、「心から納得した」や「そうだったんだ」という意味で使われます。

さもありなんの類語

「さもありなん」の類語として、次のようなものが挙げられます。

・もっともだ
漢字では「尤もだ」と書き、「道理にかなっている」や「当然」という意味で使われます。

品詞上は「もっとも」だと副詞、「もっともだ」では形容動詞です。

なお「最も」も「もっとも」と読みますが、「一番の」や「最上の」のように英語でいう「best」の意味で使われます。

・無理からぬ
「無理からぬ」は「無理ではない」や「もっともな」という意味があります。

「良からぬ」のように末尾に打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」がついている為、無理を否定した意味になるというわけです。

・当然だ
「当然だ」は「当たり前」や「誰が考えてもそうであるはずだ」という意思を表す時に使う言葉です。

上記以外では「不思議ではない」や「想像に難くない」、「理にかなっている」や「織り込み済み」等が考えられるでしょう。

類語の例文

上記の類語の例文としては、次のようなものが考えられます。

 

「もっともだ」の例文
・いくら技術があっても、練習を疎かにする選手を起用しない監督の考えはもっともだ。

才能やセンスはあるものの、それに甘んじて練習をさぼったり手を抜いたり選手というのはいるものです。

 

監督はそうした態度に対してよく思わず、真面目に打ち込んでいる選手を抜擢している様子が伺えます。

 

「無理からぬ」の例文
・合格確実だといわれていた試験に失敗したのだから、彼が落胆するのも無理からぬことだ。

受かるかどうかではなく確実に合格するといわれていた試験に不合格だと、ショックも一際大きくなることが分かります。

 

「当然だ」の例文
・遅刻ばかりしていては、普段温厚な上司が怒るのも当然だ。

あまり怒らない上司でも、何度も遅刻を繰り返している部下に注意しないわけにはいきません。

 

また他の人への影響もある為、温厚な上司が怒ってもおかしくはないでしょう。

さもありなんの英語表現

「さもありなん」の英語表現としては、次のようなものが挙げられます。

  • be not surprised(さもありなん)
  • be natural to(当然だ)

他には「not blame」や「be no wonder」等も考えられるでしょう。

また上記の英語表現を使うと以下のような例文を作ることができます。

・I am not surprised that he is leader.
(彼がリーダーなのはさもありなんだ。)

リーダーシップがあり優秀な人だと感じたので、そんな彼がリーダーであっても驚かないということが読み取れます。

・It is natural to prohibit that in this place.
(この場所でそれが禁止されているのは当然だ。)

周囲の人へ危害が及ぶ危険性がある場合等に当該行為を禁止にする為に使われる表現です。

まとめ この記事のおさらい

  • 「さもありなん」は「いかにもそうであろう」や「確かにそんなことだろう」、「当然だろう」という意味がある。
  • 「さもありなん」は方言ではなく古文の「然もありなん」に由来している。
  • 「さもありなん」を品詞分解すると「さ・も・あり・な・む」に分けられる。
  • 末尾に「むべなるかな」とつけて「さもありなん むべなるかな」とすることで、「心から納得した」や「そうだったんだ」という意味で使われることもある。