この記事では、杞憂の意味や正しい使い方をご紹介します。
「それは杞憂だよ」と言われても、なんとなく意味は分かっても、正確な意味を知っているかと問われると不安になりますね。

杞憂のような難しい言葉を正しく使えれば、ビジネスのスキルアップにもつながります。この記事を通して、杞憂の正しい使い方を覚えてビジネスシーンに上手に活用してください。

杞憂とはどのような意味か

杞憂とは、「無用の心配」「取り越し苦労」のことで「きゆう」と読みます。

杞憂の「憂」は「心配する」「案ずる」などの意味がありますが、杞憂を使う場合は、単純に何かを心配するという意味では使いません。

例えば、「日本の将来を杞憂する」のように、日本の将来はどうなるか分からないのに、「杞憂」という言葉は使いません。杞憂は、無用の心配の意味ですから、多くの人が心配するであろうことには当てはまりません。

また、「子供の成績が悪いので、将来を杞憂してしまう」のように一見正しい使い方のように思われますが、杞憂は「無用の心配」なので、「将来に関して無用の心配をしている」という意味になってしまいます。杞憂の意味を正しく理解することが大切ですね。

杞憂の語源

杞憂の「憂」には心配する意味がありますが、「杞」の意味について解説いたします。

「杞」には「くこ」「おうち」「かわやなぎ」などの植物の名前がありますが、もうひとつ、中国、周代の国の名があります。杞憂の語源には、この中国の古代の国名が大きく関係しています。

中国の周の時代、「杞」という国に、「天が崩れ落ちて住む場所がなくなったらどうしよう」と心配して夜も寝れずに食事もとれなくなった男がいました。この男を心配した人が「天の崩壊など心配する必要はない」と説得すると、「天は落ちなくても、太陽や月や星は落ちないだろうか」と心配したのです。

次々と心配する男にいろいろ説明して、どうにか男は納得したのです。

この故事から、無用の心配をする「杞憂」という言葉が生まれました。杞憂の他に「杞人の憂」とも言います。

杞憂のビジネス上での使い方

ビジネスシーンで杞憂を使う場合は、そう多くはありませんが、クライアントや取引先に対して、なにか心配なことがあった場合に「杞憂」を使うことがあります。

  • 杞憂でしたら申し訳ありませんが、輸出先の政情がかなり悪くなっているようです。
  • 杞憂かもしれませんが、再度提携先を調査された方がよいのではないでしょうか。

「余計なお世話かもしれませんが」というよりも、杞憂を使えばより丁寧な敬語表現にもなります。

杞憂を使った例文

では、「無用の心配」という意味の杞憂を使った例文は下記になります。

  • 大雨の影響が心配されたが、杞憂に終わりました。
  • 健康診断の結果が気になったが、私の杞憂に終わった。

「杞憂に終わる」はよく使われる表現です。心配していたけど大丈夫だった場面は日常生活ではよくあることでしょう。

  • 大型台風の被害が心配です。杞憂であれば良いのですが。

心配事が現実にならないように願う気持ちが、「杞憂であれば」にあらわれています。

  • 「君たちの心配は杞憂でしかない」と社長が顔を真っ赤にして怒鳴りました。

世の中にはあれこれ余計な心配をする人はいます。そんな人に「杞憂でしかない」と一喝することもあるでしょう。

  • 友人がなにか怪しいビジネスをやっているようだ。杞憂であればよいのですが。

この場合、「悪いことが起きなければ」という願いが込められています。

杞憂の類語は?

杞憂の類語には「憂慮・懸念・危惧・恐れ・取り越し苦労」などがあります。

憂慮(ゆうりょ)
心配すること。不安に思うこと。特に、実際に起きていることがさらに悪化することを
心配する場合に使います。

例文
今の事態を憂慮しています。

懸念(けねん)
実際に起きるかどうかは分からないが、悪いことが起きそうな気がして心配すること。「心配する」よりも畏まった表現なので、ビジネスではよく使用します。

例文
今回のプロジェクトの成り行きを懸念します。

危惧(きぐ)
あやぶみ、おそれること。物事が思ったようになりそうなことをおそれること。当事者ではなく第三者が悪い結果を想定して使う表現になります。

例文
彼の無計画な行動には何か悪いことが起こるのではないかと危惧しています。

恐れ(おそれ)
こわがる気持ち、恐怖、不安。良くないことが起こるかもしれないという不安。恐いという気持ちが表れている表現です。

例文
それは法律に抵触する恐れがあります。

 

取り越し苦労
どうなるかわからないことをあれこれ心配すること。杞憂にもっとも近いニュアンスで使われる言葉と言えるでしょう。

例文
取り越し苦労ばかりしていると、いつか病気になってしまうよ。

 

杞憂の対義語は?

杞憂は中国の故事からの言葉なので、明確な対義語はありませんが、「楽観」や「楽天」が対義語に近いでしょう。

楽観(らっかん)
物事をすべてよいように考えること。将来の行き先をよい方に考えて心配しないこと。
杞憂のように根拠がないのに心配することに対して、楽観は、根拠はないけど心配しないという意味になります。

例文
私は子供の将来については楽観している。

楽天(らくてん)
自分の境遇を天が与えたものとして考え、くよくよしないで人生を楽観すること。「楽観」と似ていますが、楽天は起きていることに関して言うのに対して、楽観はこれから起こること全てに対しての表現になります。

例文
母は楽天的で、長男の成績が落ちてもあまり心配していない。

また、「呑気」や「能天気」なども杞憂の対義語としてあげられます。

呑気(のんき)
気持ちや性格がのんびりしていること。杞憂のように無用の心配とは正反対の状態です。「暢気」と書く場合もあります。

例文
明日は試験なのに、彼は呑気に漫画を読んでいる。

能天気(のうてんき)
呑気で軽薄なこと。また、その人。

例文
こんな時でもゲームに夢中になれるなんて、彼は本当に能天気だ。

杞憂の英語表現

杞憂を英語に直訳すると「needless anxiety」「absurd fear」になりますが、一般的な会話や文章ではあまり使われません。
杞憂を英訳する場合は、日本語の「取り越し苦労」のニュアンスで訳した方が自然でしょう。

It’s too much worry.
それは杞憂だ
It is no empty fear.
それは杞憂ではない

また、文章で表現する時には、「杞憂に終わる」や「杞憂に過ぎない」は、「心配する必要がない」という意味の英語に訳すのがベストです。

There is nothing to worry about that.
それに関しては何も心配する必要はありません。
Don’t worry about that.
それについて心配しないでください。

杞憂は難しい日本語のため、英訳する場合は意味を噛み砕いて文章を作るようにしましょう。

まとめ この記事のおさらい

  • 「杞憂(きゆう)」は、「無用の心配」「取り越し苦労」のことです。
  • 杞憂の語源は、「天が崩れ落ちて住む場所がなくなったらどうしよう」と心配する男の故事から生まれたものです。
  • 杞憂をビジネスで使う場合は「余計なお世話ですが」の敬語表現として「杞憂でなければよいのですが」などと使います。
  • 杞憂の類語には「憂慮・懸念・危惧・恐れ・取り越し苦労」がありますが、もっとも意味として近いのは「取り越し苦労」でしょう。
  • 杞憂の対義語としては「楽観」や「楽天」が考えられます。
  • 杞憂の英語表現では、「心配する必要がない」という意味の「There is nothing to worry about that.」などが自然な訳になります。