フレキシキュリティとは、欧州で生まれた労働に関する用語です。現代では、日本でもフレキシキュリティを取り入れようと様々な政策が検討されています。

この記事では、今注目のフレキシキュリティについて以下の点を中心に解説いたします。

この記事の内容
・フレキシキュリティとはなにか
・フレキシキュリティの他国の状況
・フレキシキュリティのメリット、デメリット

フレキシキュリティは柔軟と安全を混ぜた言葉

フレキシキュリティとは、柔軟性「Flexibility(フレキシビリティ)」と安全性や保障「Security(セキュリティ)」を合わせた造語です。英語では、flexicurityと書きます。

言葉自体は、1990年代にデンマークで生まれました。デンマークやオランダなどヨーロッパを中心に失業率の改善と経済の活性化に効果があり、日本でも注目されています。

フレキシキュリティは労働市場の柔軟性という意味

フレキシキュリティは、柔軟性と安全性、保障などを組み合わせた言葉です。ここでいう柔軟性とは、労働市場の柔軟性のことで、安全保障とは生活の保障を意味しています。

労働市場が柔軟になれば、企業は労働者を解雇しやすいです。しかし、労働者が失業しても生活が最低限保障されるということであれば、深刻な問題にはなりません。

フレキシキュリティはある労働者がある職業で解雇されたとしても、国の制度により訓練を受け、新しい職業に就くことができるという仕組みを作っています。

より労働者にあった職場で働くことができるため、企業にとっても労働者にとってもメリットがある事が特徴です。

他国のフレキシキュリティの状況

フレキシキュリティという言葉は1990年代にデンマークで誕生しました。デンマークとオランダが最新にこの政策に乗り出しました。

北欧では労働市場の流動化の政策がある

フレキシキュリティは労働市場の流動化のために、企業が労働者を簡単に解雇することができる仕組みを作る事から始まります。

北欧では簡単に解雇できる事で、労働者が解雇されても反発や問題が起こらないように、失業者へ手厚い保障がされています。

フレキシキュリティに手厚い保障がある

日本では失業してきちんと手続きを行うことで、失業給付金(失業手当)をもらうことができます。しかし、給付額は前職の賃金の半分程度で、給付期間は通常6ヶ月(最大でも1年)が通例です。

スウェーデンやデンマーク、ノルウェー、フィンランドなど北欧では、給付額が前職の賃金の60%〜90%で、給付期間は約2年間あることが特徴です。

北欧には積極的労働市場政策がある

北欧では失業者に対して手厚い保障があるため就職活動を行わなかったり、新しい仕事につかないまま過ごしたりしてしまうのではないかという心配があります。

しかし、就職活動を行わなければ失業者への保障も減らされます。

新しい職業が早く見つかるように失業者に対して改めて教育や職業訓練を行っているため、これまでとは異なる職種にも挑戦することができる事が特徴です。

訓練の種類も充実しており、訓練の期間は1日から6週間までのものが多いですが、中には1年というものもあります。

訓練内容も、特定業種にのみ対応しているものから、どの産業でも通用するような知識を身につける訓練など幅広く取り揃えらえています。

就職に向けた職業訓練で実践的なものが多いため、国民には、たとえ失業したとしても他の仕事に行くことが出来る自信が生まれます。

失敗しても立ち直ることが出来る自信が就職活動への意識を高め、労働市場の流動化に貢献しています。

企業側は、不況のときには人員削減を簡単に行うことができ、好況時には増員するという柔軟な対応ができます。

職を失った人も、ある程度は生活できる保障があり、職業訓練によって新たな就職先を見つけることもできるため、双方においてメリットがある事がフレキシキュリティの特徴です。

フレキシキュリティの方が幸せとは限らない

デンマークは日本に比べて企業で働く時間が短いです。多くの企業では16時退社が基本であるため、日本に比べると就業時間がとても短いと思われるでしょう。

しかし、企業側は利益を出さなければならないため、従業員は限られた時間の中で成果を出さなければなりません。

限られた時間の中でを仕事の成果を出さなければならないのは大きなプレッシャーです。

仕事で成果を出せなければ、デンマークではすぐに解雇されてしまいます。人によっては日本の働き方に比べると厳しいようにも思えるでしょう。

役所なども毎日開庁しているわけではないため、開いた日には人が殺到します。

役所の人もその日限られた時間の中で、多くの仕事をさばかなければなりません。結果的にひとつひとつの仕事に丁寧に取り組むことができず、対応もそれなりになってしまいます。

上記の点を総合して考えると、フレキシキュリティは本当の意味で幸せな働き方なのかどうかは、人によって捉え方が変わるでしょう。

フレキシキュリティの問題点

フレキシキュリティはEUの雇用政策モデルとして高評価を得てきました。しかし、長年フレキシキュリティで労働環境を整えてきたデンマークにもひずみがでてきています。

フレキシキュリティの問題①:好況時でも労働力不足

フレキシキュリティにより企業側は労働者を解雇しやすくなりましたが、常に労働力が不足している状況になりました。

好況時でも労働力不足に陥っており、デンマークはEUの中で就業率に関して最も低い割合だったという見方もあります。

業種によっては常に労働者不足になっているにもかかわらず、2008年以降の世界的な不況によって失業手当給付が急増するという矛盾が生じました。

赤字が増加したため、政府は失業手当給付の期間を短くしたり、給付金の金額を下げたりという対策をとりました。

しかし、失業者がこれまで通りの生活ができなくなってしまい、フレキシキュリティの大原則が崩れてきたという問題があります。

フレキシキュリティの問題②:職業訓練の質の低下

失業手当給付はこれまで国から行われていましたが、国から地方自治体に移行されることが決まり、職業訓練のあり方も変わりました。

自治体は職業訓練や就業支援の責任を担うようになり、結果的に失業者を早く労働市場に送り込まなければ、自治体の財政が逼迫するようになりました。

職業訓練の質ではなく、数をこなし、就職させることに重点を置くようになったことも問題です。

職業訓練の質が低下したため、就職したしても使える人材は少なくなり、これまで以上に企業は労働者をすぐに解雇してしまいます。

失業者は安定的な生活が望めないため、早く就職したいと思います。しかし、職業訓練の質が悪いため、新しい仕事にもなかなかつけません。

上記のサイクルを繰り返せば、必ず不況になる事が、現代のフレキシキュリティの問題点です。

フレキシキュリティについてのまとめ

  • フレキシキュリティとは、柔軟性「Flexibility(フレキシビリティ)」と安全性や保障「Security(セキュリティ)」を合わせた造語です。
  • フレキシキュリティは、はじめデンマークで行われた政策で、その後北欧を中心にEU諸国の労働に影響をもたらしました。
  • フレキシキュリティの仕組みでは、企業が簡単に従業員を解雇でき、失業者も最低限の生活を保障されています。
  • フレキシキュリティの政策を長年続けてきたデンマークでは、好況時でも人手不足に陥り、ひずみがでてきている問題があります。