記憶力がないのは、個人の能力差によるものではありません。あるとすれば、覚えるための工夫の仕方が違ったり、覚えなければならないという切迫感などの違いです。一方で、記憶力を低下させたり、妨げたりする原因があるのも事実で、低下を防ぐ方法を合わせて紹介します。

記憶力に個人の能力差はない

記憶力に個人の能力差がないという証拠に、人間誰にもあてはまる「エビングハウスの忘却曲線」というのがあります。

これは、心理学者のエビングハウスが行った実験で、記憶と経過時間の関係をグラフにし、時間が経過すればするほど当初覚えたことを忘れてしまうことを示しました。「人間は忘れる動物だ」というわけです。

実際には、「節約率」という指数を使っていますが、一旦覚えたものを思い出すのに、時間が経過すればするほど手間ひまや時間を節約する割合が少なくなるといっています。

逆にいえば、エビングハウスは、一旦覚えたものを早いうちに復習すると、あまり手間ひまをかけずに思い出すことができるとしました。

記憶力がない人の特徴

忘却曲線が証明するように、一旦覚えても何もしないと忘れてしまうのが当然なのに、自分のことを「記憶力がない」という人には特徴があります。記憶力がない人の特徴は以下の通りです

メモを頼りにし過ぎる

「記憶力がない」という思い込みのせいか、メモを多用し過ぎる人がいます。たとえば、誰かと会う約束をメモしたとします。時間、場所、目的など克明にメモを取ったことで、覚えたかのような錯覚に陥ってしまいます。

メモを取ったことは覚えたということではありません。また、メモの置き場所を忘れるとメモの意味がありません。メモを頼りにし過ぎる人は記憶の仕方を間違っている場合が多いです。

周囲に頼り過ぎる

メモに頼るのと同様に、覚えなければならないことを周囲の人に伝えて「記憶力が悪いから、私が忘れていたら思い出してね。」と他力本願になるという特徴があります。秘書でも雇わない限り、そんなにタイミングよく思い出すのを、普通は助けてくれません。

誰かに頼った時点で自分の頭の中に、大事なことなので覚えていなければダメだという切迫感が抜け落ちてしまい、本来備わっている記憶する力が損なわれてしまいます。

復習をしないと記憶力が低下する

tせっかく覚えても長い間復習せず放置しておくと、忘却曲線で言う「節約率」が限りなく少なくなり、当初覚えたときと同様の手間ひまや時間をかけなければ思い出せなくなります。

記憶力は、「復習」といわば繰り返し覚える「努力」の上に成り立つものであるという意識に変える必要があります。

記憶力の低下の原因

一方で、こんな原因で記憶力を低下させてしまうことがあります。いずれも、脳の健全な活動を阻害しているのが原因です。

ストレスで記憶力が低下する

ストレスとは、ストレッサーというストレスの種を、「嫌なもの」に脳が作り上げた虚構です。「夏の暑さ」がストレスという人もいれば、夏が好きな人はストレスとは思いません。

こんな状態で脳がストレスと戦っているときに、覚えたり復習したりしている余裕はなく、記憶力は自ずと低下していきます。また、次に述べる睡眠不足にもつながり、さらに記憶力を低下させるでしょう。

睡眠不足で記憶力が低下する

日中に経験したことは、脳に一旦短期記憶として残りますが、眠ることではじめて整理されて記憶として残るといいます。特に記憶の整理・定着に影響するのは、「ノンレム睡眠」という深い眠りのときです。

通常の7~8時間の睡眠だと、浅いレム睡眠とノンレム睡眠がうまく組み合わさりますが、睡眠不足になるとうつらうつらとした状態が続き、なかなかノンレム睡眠に入れません。その結果、記憶の定着に影響が及んでしまい、あまり覚えられなくなります。

悪い生活習慣で記憶力低下する

睡眠時間が不足すると昼間の集中力にも影響します。昼間、起きているようで実際には眠っている状態になったり、本来の食事時間や栄養事情も影響を受けます。この悪循環の状態は、ひとことでいえば、不規則な生活習慣です。

脳が正常に働くのは、人間本来の正常な活動があればこそです。不規則な生活週間で記憶力を減退させておいて、勝手に記憶力がないとうのは大きな間違いです。

記憶力の低下を防ぐ方法

記憶力の低下を防ぐ方法は、まずは日々の規則正しい生活習慣を心掛けた上で、さらに以下のような工夫をすると記憶力が上がります。

教えながら覚える

覚えたり記憶したりすることに効果的なのが、「人に教える」ことです。人に教えようとすると、自分でその内容をすべて理解していないと教えられません。

教えていて自分も自信のない説明をすると、必ず質問を受けます。説明というアウトプットをしながら、話の筋道とか内容の整合性をきっちりと整理することが、自身の記憶強化につながっていきます。

声に出す、字に書く

覚えるのは、目や耳に入ってくるものを頭の中にインプットしていくイメージがありますが、何もしなければ時間とともに消えていくのは述べた通りです。

しかし、ここで覚えたものを声に出す、あるいは字で書いてみるというアウトプットの作業をすることは、同時に再び復習するというインプット作業をしていくことになり、記憶を定着させています。

運動する

運動は、脳以外の他の機能を一緒にフル活用します、記憶力低下の原因であるストレス解消に役立つでしょう。気分転換で脳は新たなインプットを受け入れようとし、記憶の低下に歯止めをかけてくれます。

また、運動しながら記憶すると効果が上がることが知られています。ちょうど、何かを思い出そうとするとき、体をゆすったり手を動かしたりするのと同じ理屈で、脳と手足がつながっているためです。