嚆矢の読み方・意味・語源 類義語・対義語を解説

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この記事では「嚆矢」の意味や語源、類義語、対義語について解説します。

「嚆矢」は日常生活でほとんど見聞きすることがない言葉です。
この記事で初めて読み方や意味を知る人も多いでしょう。知らないととても困るという言葉ではありませんが、小説などの文献で目にすることがあったり、ビジネスの会話で出てくることもあります。

ビジネスではさまざまな年代の人と接する機会が多いですから、この機会に知識を増やしておくことは社会人として活躍するために役立つでしょう。

嚆矢の読み方・意味・使い方

嚆矢の読み方

「嚆矢」は「こうし」と読みます。

「嚆」は音読みで「コウ」、訓読みでは「さけ(ぶ)」と読みます。

「嚆」は普段ほどんど目にすることがない漢字だと思いますので、この字について少し説明をします。「嚆」は部首は「口(くちへん)」、JIS第2水準の漢字で、漢字検定では1級にあたります。「矢が鳴る。矢がうなる」意味を持っています。

「嚆」は「嚆矢」以外の単語で使うことはほぼありません。「嚆矢(こうし)」の単語として読みと漢字を覚えておけばよいでしょう。

「矢」は音読みで「シ」、訓読みでは「や」と読みます。「や」という読み方はなじみがありますが、「シ」の読み方は初めて知った人もいるのではないでしょうか。

「嚆矢」のほかに「矢」を使った単語には、「矢言(しげん)」「矢口(しこう・やぐち)」「矢面(やおもて)」「矢印(やじるし)」などがあります。

嚆矢の意味・語源

「嚆矢」には次の意味があります。

①かぶらや。鳴り響く矢。
②ものごとの最初。はじまり。起り。起源。

②は、古代の中国で合戦の初めにかぶら矢を敵陣に向けて射かけたことから、「ものごとの最初、はじまり、起源」を指す意味で「嚆矢」が使われるようになりました。

現代の文献や会話中で「嚆矢」と言う場合は、①のように矢そのものの名前をさすことはほぼありませんので、「嚆矢」の意味は「ものごとの最初。はじまり。起源」のことと覚えておけばよいでしょう。

嚆矢の語源

ものごとのはじまり、起源を意味しまする「嚆矢」は、中国の古典に由来する言葉です。

古代の中国では、合戦が始まる合図として鏑矢と呼ばれる矢を敵陣に向かって射かける習わしがありました。このことから、ものごとの始まりを表わす意味で「嚆矢」が使われるようになりました。

「嚆矢」は中国戦国時代の思想家、荘周の著作である「荘子(そうし・そうじ)」の中で最初に使われたといわれています。

鏑矢とは?

「嚆矢」の語源は、古代中国で合戦の合図として鏑矢が放たれたことによります。「鏑矢(かぶらや)」とは先に鏑をつけた矢のことです。

鏑とは木・竹の根または角などを用いて蕪(かぶら)の形に作り、中を空にし、数個の孔(あな)を穿って矢の先に付けるもので、蕪の形に似ていることから「鏑」と呼ばれています。

鏑を取り付けた「鏑矢」は、空中を飛ぶ時、鏑の孔に風が入ってブーンという唸りをあげてとび、合戦のはじまりの合図に使われました。役割としては敵を威嚇したり注意を喚起するために射込む矢で、矢そのものを武器として攻撃をするようなものではありません。

「嚆矢」は「鏑矢」のことですが、「鏑矢」をものごとのはじまりを表わす意味として使うことはありません。ものごとのはじまりの意味では「嚆矢」を用います。

嚆矢のビジネス上での使い方

「嚆矢」はビジネスシーンでは主に会話の中や社内のやり取りで使われます。契約書や仕様書などの公式な文書や連絡メールなどで「嚆矢」が使われることはほとんでないといえるでしょう。

ビジネスシーンでの使われ方としては、「この会社の嚆矢を知るなら〇〇部長に聞くといい」「この決起会を以って新事業の嚆矢とする」などのように、「~のはじまり」を言い換えた形で「嚆矢」が使われること多いでしょう。

「嚆矢」は「講師」「公私」「行使」など同音異義語が多くあります。特に会話ではどの「こうし」を意味しているのかを理解しないと意味を取り違えてしまうので注意が必要です。

嚆矢の例文

「嚆矢」はものもごとのはじまりや起源を意味します。次に「嚆矢」を使った例文をいくつか紹介します。

この施設は、今では各地に作られている体験型テーマパークの嚆矢となった。
今となっては、この会社の講師を知る人物は社長と専務の2人だけとなった。
日本にスマートフォンを普及させた嚆矢はiPhoneだと言われています。

次に「嚆矢」の例文を文献からいくつか紹介します。

草木の風に靡く様を戦々兢々と真面目に形容したのは是公が嚆矢なので、それから当分の間は是公の事を、みんなが戦々兢々と号していた。
「満韓ところどころ/ 夏目漱石(著)」
私の見たのでは言文一致の小説は是が嚆矢でした。「硯友社の沿革/ 尾崎紅葉(著)」

※上記の2つは「嚆矢」を「はじめ」と読ませています。

謡曲の文辞を、解釈的に観ようと企てたのも、秀次をもって嚆矢とする。
「猿飛佐助/ 柴田錬三郎(著)」

嚆矢濫觴とは?

「嚆矢」は「嚆矢濫觴(こうしらんしょう)」という四字熟語でもよく使われます。

「濫觴」とは「大河もその源は觴(サカズキ)を濫(ウカ)べるほどの小さな流れである」という孔子家語の言葉から転じて、ものごとのはじまり、起源を意味する言葉です。

「嚆矢」と「濫觴」というはじまりを表わす言葉を2つ重ねた四字熟語の「嚆矢濫觴」もまた、ものごとのはじまり、起源を意味します。

嚆矢の類義語

「嚆矢」と似たような意味を持つ言葉と例文を、次に紹介します。

端緒(たんしょ)
ものごとの手掛かり。いとぐち。きっかけ。
例文
やっと問題解決の端緒が見えてきた。
糸口(いとぐち)
物事の始まり。手がかり。(糸の端が転じての意)
例文
事件の糸口を見つけるのは容易なことではなさそうだ。
発端(ほったん)
物事のはじまり。おこり。いとぐち。
例文
彼の提案が発端となって当社にテレワークが取り入れられました。

嚆矢の対義語

「嚆矢」という言葉自体の対義語はありませんが、「はじまり」という意味の反対を表わす表現としては次のようなものがあります。

終局(しゅうきょく)
ものごとのの結末。終末。落着。
例文
長引いていた騒乱がついに終局を迎えた。
終末(しゅうまつ)
ものごとの終わり。おしまい。
例文
この物語はこれで週末を迎えます。

嚆矢についてのまとめ

  • 「嚆矢」は「こうし」と読みます。
  • 「嚆矢」は「ものごとのはじまり、起源」の意味があり、古来の中国で合戦開始の合図として鏑矢が射かけられたことが語源となっています。
  • 「嚆矢」は「嚆矢濫觴」という四字熟語でも使われます。
  • 「嚆矢」の類義語には「端緒」「糸口」「発端」などがあります。
  • 「端緒」に対義語はありませんが、結末、終わりを表わす言葉としては「終局」「終末」などがあります。