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文章を書くとき、しばしば迷うのが「こと」と「事」です。ほとんどの人は文章の流れの中でなんとなく、「こと」と「事」を書いているのが実情でしょう。あらためて、その違いを考えてみる人は少ないはずです。しかし、「こと」と「事」には明らかに大きな違いがあります。ビジネスでの文章などで使い方を間違えると評価が下がることにもつながるので、その使い方を知ることは、スキルアップにもつながります。
ひらがなの「こと」は形式名詞
形式名詞とは、その言葉自体に実質的な意味が乏しく具体的な内容を示さない名詞です。例えば、「そんなことはない」と言った場合、「こと」には具体性はありません。必ず「そんな」のような修飾語が入ります。「うまいこと処理する」や「書くことが好き」など修飾する言葉がついて成立するのです。
一方、「事」は普通名詞の代わりに使用します。例えば、「大変な事になる」では、「事」は「事態」という名詞に置き換えられます。「大変な事態になる」という文章でも意味は成立します。しかし、「書くことが好き」の「こと」を別の名詞で置き換えてみましょう。「行為」という漢字で置き換えれば、「書く行為が好き」となりますが、「書くことが好き」の意味とが少しずれてしまいます。
「こと」と「事」のように、ひらがなと漢字を使い分けるのが「もの」と「物」です。「たいしたものだ」の「もの」は、形式名詞です。「もの」を「宝」に置き換えると「たいした宝だ」になり、やはり文章としては変ですね。一方、「大事な物」は、「大事な宝」と置き換えても違和感はありません。
「こと」を「事」と書いてしまう理由
一般的に、「こと」よりも「事」を多く使う傾向があります。その理由のひとつは「文字数」です。特に文字数が決められた文章などは、少しでも凝縮した文章を作成しようと漢字を使いがちです。2文字の「こと」よりも1文字の「事」を使ってしまいます。
もうひとつの理由は、「漢字」に対するイメージです。一般的にひらがなよりも漢字の方が知的で格式の高い文章になると思われがちです。「そのこと」よりも「その事」と書いた方が文章としては格式が高いと判断してしまう人もいます。特にビジネスメールや挨拶文などは、少しでも相手の印象を良くしようと、漢字を多用してしまうことも少なくありません。しかし、文章の書き方を知っている人は、「こと」と「事」の違いは知っています。漢字にしたことで、評価を下げてしまうこともあるので、「こと」と「事」の使い分けは正しくおこないましょう。
まとめ
ふだん意識しない言葉でも、使い分けが明確な表現があります。自分のスキルアップのためにも、その違いを知ることが大切です。
・「事」は、他の漢字に置き換えてもその意味が通じる
・文字数やイメージだけで文章を書かない
この点を理解していれば、ビジネスの文章も正しく書くことができます。