ファシリテーターとは?意味や役割、上手い人のコツなどを解説

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近年、会議や商談を効率よく進める役職としてファシリテーターが注目されています。ファシリテーターは1950年代にアメリカで誕生した概念で、日本ではカウンセリング分野から認知が広がりましたが、内容についてはあまり周知されていないのが実情です。

そこでこの記事ではファシリテーターに求められる具体的な役割とスキル、資格や英語表現など幅広く解説いたします。

ファシリテーターとは


ファシリテーターとは、会議やミーティングにおいて出席者が持続可能な合意を形成できるように中立的な立場で調整を行う推進役のこと。語源は英語「facilitator」で、日本語では共創支援者、協働促進者、進行促進役などと呼ばれます。

ファシリテーターには会議の参加者としての発言権や議決権はありません。あくまで中立的な立場の補佐役として、議論や討論が円滑に行われるようにサポートすることで最終的な合意の形成を促進します。

ファシリテーターが重要視される背景

日本社会でファシリテーターが重要視されるようになった背景としては、世界的な技術革新と新興国の急速な経済発展にともなって、日本企業特有の旧弊な組織特性を変革する必要に迫られていることがあげられます

日本の法人組織は伝統的に上意下達式の縦割組織が支配的で、形骸化した業務慣行が迅速な計画立案を阻害しているケースが少なくありません。ビジネス環境の変化が激しい現代において経営の意思決定を迅速化する組織体制の構築が急務となっています

こうした背景から、さまざまな課題解決策を立案する会議の場において、多様な意見と価値観を尊重しながら建設的な結論へと導びくファシリテーターの存在が重要視されるようになりました。

ファシリテーターと司会(モデレーター)の違い

ファシリテーターと同様の役割に司会(モデレーター)があります。モデレーター(moderator)は司会者や議長、調停者などを意味する言葉です。モデレーターが議長を意味する場合は、ファシリテーターと違って議決権を持つことも特徴です。

またモデレーターはインターネットのライブ配信やSNSなどのオンラインフォーラムで配信者に代ってコメントを監視する役割の意味もあります。ファシリテーターには監視者や監視権限といった意味はありません

ファシリテーターとネゴシエーターの違い

ネゴシエーター(negotiator)とは、互いに利害関係のある人の間を取り持って、双方の合意が得られるように仲介する交渉人のこと。一般的な商取引のほか、誘拐や立てこもりなどの事件現場で人質を救出するために犯人と交渉する人のことを意味します。

ネゴシエーターもファシリテーターと混同しやすい役職ですが、ネゴシエーターは複数のステークホルダー(利害関係者)が対立する場面で双方の間に入って交渉を行い、合意形成をめざす人をあらわします。

一方、ファシリテーターは議論や討論において参加者の合意形成をうながす進行役のこと。議論の参加者同士に意見の対立はあっても利害が対立するわけではありません。ネゴシエーターは利害の対立する者や犯罪者との交渉を専門に行うことが最大の違いです

ファシリテーターの役割とは


ファシリテーターは会議や討論の場でさまざまな役割を担います。ここではビジネス上の会議を例にファシリテーターの役割を5つのプロセスに分けて具体的に解説いたします。

1.会議の目的と目標を明確にする

会議を有意義なものにするためには会議の形骸化を防がなければなりません。そのための準備として、そもそも何を議論するために会議を招集するのか、どのような結論を目標として会議を行うか、といったポイントについて明確にする必要があります。

会議の目的はいわば議論の出発点です。そして目標は出席者全員の合意形成であり、会議の到達点といえるでしょう。会議の出発点と到達点を事前に設定して出席者全員と認識を共有できるように計らいます

2.出席者が積極的に発言しやすい雰囲気を作る

ファシリテーターの重要な役割のひとつが、全ての出席者が積極的に発言できる雰囲気を作ること。日本人は思慮深く自己主張が苦手とされています。特に会社のトップが参加するような会議では、下位の出席者が発言を躊躇してしまうことも少なくありません。

そのような事態を避けるために、ファシリテーターは参加者全員の地位や立場、相互関係などをあらかじめ把握して参加者全員に考えを聞いたり、まんべんなく意見を求めたりすることで発言しやすい雰囲気を醸成して公平な結論に導く配慮が必要です

3.会議の流れを整理する

出席者の意見や提案をリアルタイムで整理することもファシリテーターの重要な役割です。会議で出された発言の内容を適宜まとめてモニターやホワイトボードで可視化することで、議論の推移を出席者全員で共有できるようにはからいます

会議では出席者の自由な発言を引き出していくことが重要ですが、自由すぎて話題や論点が本筋から逸脱してしまっては本末転倒です。ファシリテーターは「話がズレてきた」と感じたら、中立な立場を守りつつ適宜介入して早めに軌道修正を行いましょう

重要人物の長広舌や私的な話に引きずられて軌道修正ができない場合も少なくありませんが、出席者の気分を害さないように配慮しながらも本筋から外れた発言には警告を与えるリーダーシップも必要です

4.会議の時間を管理する

ビジネスシーンでの会議には時間制限があります。終了予定時間までに結論が出なければ後日会議を再招集する事態にもなりかねません。ファシリテーターとしてはそのような無駄を避けるためにも会議の終了予定時間までに結論に導かなければなりません。

まず会議の進め方と全体の所要時間をあらかじめ決めておきます。次に質疑応答や意見交換、議論といった会議のプロセスごとの所有時間を予測して時間配分を決定します。会議中も予定との時間差を常に確認しながら臨機応変に調整しましょう

5.出席者の合意を形成し議論を結論に導く

出席者の意見がひととおり出尽くしたところで会議で得られた意見やアイディア、情報などを整理しながら議論を総括的に振り返り、出席者全員の理解と合意が得られたところで結論へと導き、会議を締めくくります

ファシリテーターに求められるスキル


ファシリテーターにはさまざまなスキルが求められます。ここでは特に重要とされる4つのスキルについて解説します。

1.理解力

理解力はファシリテーターに最も必要なスキルのひとつ。会議の場ではさまざまな人から多くの意見が出されます。無駄に長い意見や論旨が不明な発言も少なくありません。そんな意見の要点を素早く理解する力は、ファシリテーターに不可欠といえるでしょう。

2.論理的思考力

論理的思考力もファシリテーターには欠かせないスキルです。会議や討論で出されたさまざまな意見を頭の中で瞬時にまとめて、出席者の誰もが納得できる論理的な結論を導き出す能力が求められます

3.コミュニケーション能力

地位や年齢が異なる出席者たちのさまざまな意見を公平にまとめて会議の目標となる結論を導くには高いコミュニケーション能力が欠かせません。発言が少ない場合は、出席者を指名して発言を求めるなど、公平な立場から議論の活性化を図ります。

逆に議論がヒートアップした時は冷静に注意をうながすことも必要です。ファシリテーターは会議の参加者ではありません。自分は意見を言わず、あくまで裏方に徹して参加者の発言を引き出すという高度なコミュニケーション能力が求められます

4.交渉力

会議が終盤に入って最終的な結論を導く段階に入ると、かえって意見が対立して合意形成ができない事態に陥ることも少なくありません。そんなときに求められるのがファシリテーターとしての交渉力です。

この場合の交渉力とは、出席者の見解の相違や意見の対立を解決し、できれば全員が、無理なら過半数が合意を形成できるように仲介する能力のこと。ファシリテーターとして中立的な立場を堅持しながら、参加者の合意を形成するには高い交渉力が必要です。

上手いファシリテーターの特徴やコツ


ファシリテーションが上手な人にはいくつかの特徴があります。まず最初に聞き上手だということ。自分はほとんど話さないのに参加者の本音や考えを上手に引き出すコツを心得ています。少数意見を公平に扱うことも上手いファシリテーターの特徴です

また良いファシリテーターは参加者の発言や感情に気を配り、どんなに議論が白熱しても、中立的な立場から冷静に議論を仕切ることができます。話が横道にそれたり、議論がヒートアップした時は機敏に制するコツを心得ているのも特徴です。

ファシリテーターにおすすめの資格


ファシリテーターには法律で制度化された公的資格はありませんが、民間資格では一般の法人企業が主催する養成講座や資格認定制度や養成講座がいくつもあります。

おもな民間資格で株式会社Carritraが主催するキャリアトランプのファシリテーター資格認定講座(CTF)日本プロカウンセリング協会が主催するFITファシリテーター資格認定講座日本アンガーマネジメント協会が主催するアンガーマネジメントファシリテーター養成講座などがあります。

ファシリテーターの英語表現

英語
ファシリテーターは英語の「facilitator」が語源ですので、英語表現もfacilitatorで通用します。ただしアメリカではfacilitatorは会議の進行役にとどまらず、裏社会の交渉役なども意味に含まれますので、会議の進行役は meeting facilitatorとも呼ばれます

まとめ

  • ファシリテーターとは、会議などで出席者が持続可能な合意を形成できるように中立的な立場で調整を行う推進役のことをいいます。
  • モデレーターもファシリテーターと似た役職ですが、モデレーターにはオンラインフォーラムでコメントを監視する役割の意味もあります。
  • ネゴシエーターとは、互いに利害関係のある人の間を取り持つ交渉人のことです。
  • ファシリテーターには会議の目的と目標を明確にして出席者が発言しやすい雰囲気を作り、最後に合意を形成して結論に導くなどの役割があります。
  • ファシリテーターには法律で制度化された公的資格はありません。
  • ファシリテーターは英語のfacilitatorが語源ですので、英語表現もfacilitatorで通用します。