「デカダンス」の意味とは?|「デカダン」との違いなども解説

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この記事では「デカダンス」について解説しています。「デカダンス」は文化の発展がピークを越えた後の退廃的な芸術様式のこと。現代ではアニメや音楽をはじめ、さまざまな固有名詞に使われるなど流行語に近い知名度を得ています。

そこで、ここでは「デカダンス」本来の意味と使い方に着目。類義語や英語表現をはじめ、19世紀末のデカダンス様式がその後の文学や絵画、ファッションなど様々なジャンルに与えた影響についても解説いたします。

「デカダンス」の意味とは


「デカダンス(décadence)」はフランス語で「衰退」や「虚無」を意味する言葉で、一般的には虚無的な性格や退廃的な生活態度をあらわします。また芸術学では世紀末的な退廃芸術の傾向を意味する言葉です。

文学における「デカダンス」は19世紀末のフランスで勃興した象徴主義的な世紀末芸術のこと。それまでの古典様式に反発した作家たちが病的ともいえる不健康な情緒と多彩な表現技巧を追求した耽美的退廃的な傾向が特徴です

「デカダンス」は「虚無」「衰退」を意味する暗い言葉ですが、ほかに美を徹底追究する「耽美主義」の意味もあります。たとえばベルギーのチョコレートメーカー「GODIVA」の専門店「デカダンス デュ ショコラ」の店名は後者の意味が由来です。

「デカダンス」の語源

「デカダンス」はフランス語の「décadence」のカタカナ語ですが、その語源はラテン語で「下降」を意味する「cadence」に、「否定」「脱却」を意味する接頭語「de」を付加した合成語で、「脱却して下降する」ことをあらわす言葉です

フランスで「décadence」という言葉が広まったのは19世紀ごろのこと。もとは古代ローマ帝国が絶頂期を過ぎて堕落と衰亡に転じたことをあらわす言葉でしたが、19世紀末にフランスで起こった文学運動を批判する意味でも使われるようになりました。

その批判と「デカダンス」という呼称を当の作家たちはむしろ肯定的に受け入れるようになり、詩人のベルレーヌが「われはデカダンス」と称したことから、19世紀末のフランス文学を象徴する名称として広まりました

「デカダンス」と「デカダン」の違い

「デカダンス」に関連する言葉に「デカダン」があります。言葉自体は最後に「ス」がないだけの違いですが、意味や用法にどのような違いがあるのでしょうか。

まず「デカダンス」は、前述のようにフランス語の「décadence」という名詞が語源。意味は「衰退」や「退廃的な生活態度」のことですが、歴史用語としては19世紀末にフランスで勃興した耽美主義的な文学運動を意味します

この世紀末的な芸術運動としての「デカダンス」と、それに属する芸術家を意味する言葉が「デカダン」です。「デカダン」の由来は「デカダンス(décadence)」の形容動詞「décadent」。フランス語では末尾の子音を発音しないため「デカダン」と読みます。

ちなみにフランス語の発音に近い表記では「décadence=ディカドンス」。「décadent=ディカドン」になります。

「デカダンス」の使い方


「デカダンス」は「退廃」や「世紀末芸術」をあらわす学術用語ですが、日本ではアニメや音楽のタイトルなどに使われることも多く、意味や使い方は世代によって微妙に異なる傾向があります。

まず年齢層の高い人は原語通りの「退廃」という意味で使います。一方、若年層は同じ意味でも「昭和の家がデカダンスすぎる」と今風の言い回しにすることも。また「デカダンス」の「デカ」に反応して「大きい」を意味するスラングにもなるなど意味や用法はさまざまです

ここでは「デカダンス」を本来の「世紀末文学」の意味で用いる例文を示します。

「デカダンス」の例文

日本文学においてデカダンスの影響が最も濃厚な作家として三島由紀夫の名をあげる人もいるが、三島文学の本質性はデカダンスよりもむしろアバンギャルドな破壊の美学にあるといえよう。

「デカダンス」が与えた影響

千載一遇
デカダンスの退廃的かつ耽美的な表現様式は、その後の芸術動向に大きな影響を与えました。そこでここでは文学、絵画、ファッションにおけるデカダンスについて解説いたします。

文学におけるデカダンス

文学におけるデカダンスは19世紀末にフランスで発生しました。その後イギリスをはじめヨーロッパ各国に拡散。イギリスではオスカー・ワイルドを中心に「世紀末文学」が勃興し、オーストリア・ハンガリー帝国ではウイーン世紀末芸術に発展しました

ファッションにおけるデカダンス

「デカダンス」はファッション界にも大きな影響を与えています。たとえば2018年のサルバトーレ・フェラガモのコレクションテーマは「モダン・デカダンス」。爛熟と退廃が共存するファッション界においてデカダンスは人気が衰えないテーマのひとつです

絵画におけるデカダンス

絵画におけるデカダンスは近代ヨーロッパ諸国全般の美術活動に見られますが、それぞれの様式美に共通点はありません。一般には退廃的かつ官能的な表現を特徴としたクリムトやエゴン・シーレ、「叫び」のムンクなどがデカダンスを代表する画家とされています

またイギリスのロセッティやエヴァレット・ミレーなど「ラファエル前派」と呼ばれた象徴主義の画家たちもデカダン派の先駆けといえるでしょう

音楽におけるデカダンス

19世紀後半のヨーロッパは政治経済の発展が社会に定着しつつあった時代です。音楽では後期ロマン派が主流となり、演奏技術や作曲技法の進化によって大規模なオペラや交響詩が作曲されるようになりました

この時代に活躍したデカダンの作曲家としては、大規模なオペラ(楽劇)で知られるワーグナーをはじめ、指揮者としても活躍したマーラーやツェムリンスキー、リヒャルト・シュトラウスなどをあげることができます

いずれもロマン主義の作曲技法を極めた作曲家たちで、20世紀初頭の新ウィーン楽派から現代音楽に通じる橋渡しとしての役目も果たしています

「デカダンス」の類義語と例文


「デカダンス」の類義語としては「頽唐(たいとう)」「退廃」「虚無」「世紀末的」などをあげることができます。「頽唐」は「くずれ落ちること」「健全な道徳精神や気風が衰えて、刹那的な刺激に価値を求めるような不健康な状態」という意味の言葉です。

デカダン派のことを日本語で「頽唐派」ともいいます。また西洋哲学で虚無主義を意味する「ニヒリズム」も広義では「デカダンス」の類義語といえるでしょう。

「虚無」の例文

虚無に美の究極を見いだそうとする唯物論的な試みは、イデア的な美の虚構性を証明する手段とはなり得ない。

「デカダンス」の対義語と例文


「デカダンス」の逆の意味を持つ対義語には「健全」「道徳的」「満足」などがあります。「健全」は「心身が正常で健康なこと」「思想や言動が偏らず調和がとれていること」「物事や社会の状態が良好で正常に機能すること」などの意味を持つ言葉です。

次に「道徳的」は「物事が道徳にかなっていること」「物事の意義や善し悪しを道徳によって判断すること」などをあらわす言葉です。

「満足」は「希望や欲求がかなって不平不満がなくなること」「不足するものがないこと」などをあらわします。

「健全」と「道徳的」を含む例文

もしも健全で道徳的な社会構造を形づくることができたとしても、異なる人々の自己中心的な欲求活動を道徳の名のもとに抑制することにでもなれば、ほとんどの人が猛烈な生きづらさを感じるだろう。

「デカダンス」の英語表現


「デカダンス」は英語で「decadence」と表記します。意味は「快楽や贅沢への過剰な惑溺をともなう道徳的または文化的な退廃」のこと。単に「退廃」「衰退」などを意味する名詞としても用いられます。

「decadence」の形容詞は「decadent」。英語の場合、フランス語とちがって最後の子音を発音するので、「decadent」の読みは「ダカデント」となります。

まとめ

  • 「デカダンス」は「虚無」「衰退」「耽美主義」などを意味する言葉です。
  • 「デカダンス」の由来はフランス語の「décadence」です。
  • 「デカダンス」は古代ローマ帝国の衰亡をあらわす言葉でしたが、世紀末芸術の意味でも使われるようになりました。
  • 「デカダンス」の類義語には「頽唐」「退廃」「虚無」「世紀末的」などがあります。
  • 「デカダンス」は英語で「decadence」と表記します。