奇譚とは|読み方・意味・使い方・類語や同音異義語・英語表現を解説

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ここでは「奇譚」という言葉について解説いたします。「奇譚」は昭和以前の文学作品などに見られる古い言葉で、現代ではほとんど使用されることはありません。そのため読みが同じ「忌憚」と混同されるケースが多い言葉でもあります。

そこでここでは「奇譚」の正しい意味や用法、類義語や同音異義語、英語表現などを含めて多角的に解説いたします。どうぞ最後までお読みください。

「奇譚」の読み方と意味

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「奇譚」は「きたん」と読みます。「奇譚」は「めずらしい話」「ふしぎな物語」をあらわす言葉です。「奇」は「普通と違うもの」「すぐれている」「ふしぎ」を意味する漢字。「譚」は「話」「物語」を意味する漢字です。

「奇譚」を日常会話で使うことはほとんどありません。目に触れるとしたら、文学作品のタイトルや、文学の論評などに限られます。小説のタイトルでは、村上春樹の「図書館奇譚」、三島由紀夫の「月澹荘(げったんそう)奇譚」などの作品が知られています。

「異聞奇譚」とは

「奇譚」を含む熟語に「異聞奇譚」があります。意味は「非常にめずらしい話」「際だって変わった話」をあらわします。「異聞」の意味は「奇譚」と同じ。つまり「異聞奇譚」は「異聞」と「奇譚」いう同義語を重ねることで意味を強調した熟語になります。

「奇譚」の使い方

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「奇譚」は現在ではほとんど使われない言葉です。使う場合は「めずらしい話」を意味する名詞として、「北欧は奇譚と神話の宝庫です」といった表現が可能です。会話の中で使う場合は、同音異義語の「忌憚」と誤解されないように注意が必要です。

「奇譚ない」は誤用

「奇譚」は使用頻度や知名度が低く、会話では「忌憚」と混同される可能性があります。「忌憚」は「いみはばかる」という意味の言葉ですが、現在では「忌憚なく」「忌憚ない」のような否定形で「遠慮なく」を意味する用法が一般的です。

そのため「忌憚」と読みが同じ「奇譚」と混同して「奇譚ない」「奇譚なく」という使い方も散見されますが、これは完全な誤用です。前述のように「奇譚」は「めずらしい話」「ふしぎな物語」を意味する名詞です。「奇譚ない」という表現はありえません。

もっともスピーチや会話の場合は「忌憚」も「奇譚」も読みは同じですから、間違えても相手は気づきません。問題は文章で使う場合です。PCやスマホでは稀に誤変換される可能性があります。「きたんない」と打つときは変換される漢字に気をつけましょう。

また近年、「奇譚」の使用法として「奇譚なもの」「奇譚な物語」「奇譚な言い伝え」などのフレーズを正しい使用例とするケースも増えていますが、「奇譚」は「珍奇」や「奇怪」などと違って、形容動詞としての活用法はありません。

したがって「奇譚な○○」のように「奇譚」に形容動詞の活用語尾の「な」をつけることはできません。「奇譚な」を「大層珍しい(不思議な)〜」の意味の形容動詞とする解説は誤りですので真に受けないように注意してください。

「奇譚」の類義語と例文

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「奇譚」と同じような意味を持つ類義語としては、前出の「異聞」をはじめ「異説」「奇談」「奇話」「椿説(珍説)」「珍談」などをあげることができます。

「異説」はおもに「他人の主張する説や、世間一般の通説とは異なる説」という意味で用いられますが、ほかにも「珍奇な説」「変わった説」といった意味があります。この2番目の意味が「奇譚」の類義語に相当します。

「奇談」と「奇話」はともに「珍しい話」「変わった話」「奇怪な話」を意味する言葉です。「奇譚」との違いは、「奇譚」が「物語」のニュアンスが強いのに対して、「奇談」や「奇話」は会話や噂話のように口頭で伝える話のニュアンスがあります。

最後の「椿説」は「ちんせつ」と読みます。意味と読みは「珍説」と同じで、「めずらしい話」「風変わりな意見」をあらわす言葉です。また「珍談」と「珍説」には「めずらしい意見や話」のほかに「ばかばかしい話」という、やや見下した意味もあります。

また「奇譚」ほど「奇」ではないものの、「長く語りつがれる神秘的でふしぎな物語」という意味では「言い伝え」「神話」「伝説」「昔話」などの言葉も広い意味で類義語に含めることができます。

「異聞」の例文

神話というものは洋の東西を問わず荒唐無稽な異聞奇譚の集積と言えよう。

「椿説」の例文

源義経とチンギス・ハンは同一人物だったという椿説を真に受ける人がいるとは驚きだ。

「昔話」の例文

昔話の桃太郎に出てくる犬・猿・キジ・鬼はそれぞれ陰陽五行説の「方角」を象徴しています。

「奇譚」の同音異義語と例文

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「奇譚」の同音異義語は多くはありませんが、以下の二語は混同しやすいので使う際は注意が必要です。

「忌憚」

「忌憚」は「忌(い)まわしい」と「憚(はばか)る」という字を合わせた熟語で、「遠慮する」「気がねする」という意味をあらわします。現在では否定形で「遠慮なく」「気がねなく」の意味で用いるのが基本的な用法となっています。

「忌憚」の例文

「開発担当者を前にしては言いづらいとは思いますが、モニターの皆様には忌憚のないご意見をお聞かせくださいますようお願いいたします」

「綺譚」

永井荷風の代表作のひとつに「濹東(ぼくとう)綺譚」という名作があります。「綺譚」は「綺麗(きれい)」の「綺」と「譚」を合わせた熟語で、「美しい物語」という意味をあらわす、とされる言葉です。

「綺譚」は「濹東綺譚」を発表する際に、永井荷風みずからがこの作品のタイトル用に考案した造語とされており、他に用例はありません。「奇譚」と混同するとすれば、むしろ「濹東綺譚」のタイトルを「濹東奇譚」と間違えるケースが多いといえます。

「綺譚」の例文

「濹東綺譚」の「きたん」は「奇譚」ではなく「綺譚」です。混同しないように注意しましょう。

「奇譚」の英語表現

英語
「奇譚」を英語に翻訳する場合、同じ意味を一語であらわす単語はありません。そこで「奇怪な話」という意味で「mysterious story」と表現するのが、「奇譚」のスタンダードな英訳となります。

ほかには「ふしぎな話」の意味で「strange story」「strange tale」という言い方も可能です。この場合「story」と「tale」は同じ意味ですが、「tale」のほうが「物語」というニュアンスが強くなります。

一方、伝説や寓話、神話といった意味では、「fable」「legend」「myth」「mythology」「old tale」などの言葉をあげることができます。

「fable」は「寓話」「伝説」「神話」「作り話」などを意味する単語です。

「legend」は「伝説」「説話」「伝説的人物」などを意味する単語です。

「myth」は「神話」「作り話」などを意味する単語です。

「mythology」は「神話」「神話学」などをあらわします。また「myth」は個々の神話をあらわし、「mythology」はギリシア神話や北欧神話のような神話集をあらわすという意味の違いもあります。

「old tale」は「昔話」「古譚(こたん)」をあらわす言葉です。

まとめ

  • 「奇譚」は「めずらしい話」「ふしぎな物語」をあらわす言葉です。
  • 「奇譚」は名詞ですので、「奇譚ない」「奇譚な」という使い方はできません。
  • 「綺譚」は「美しい話」という意味で永井荷風が作った造語です。
  • 「奇譚」の英語表現は「mysterious story」「strange story」「strange tale」などになります。