食指|読み方・意味・使い方・誤用表現・英語表現などを解説

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この記事では、「食指」の意味や使い方、類語、対義語、英語表現について解説します。

「食指」という言葉を聞いたことがありますか?一般的には「食指が動く」などの表現として使われる言葉ですが、その意味を正しく言えるでしょうか?

ビジネスの場でも「食指」を使った表現は時々見られます。この記事を通して、「食指」の正しい意味や使い方を理解して、社会人としての知識を身につけてください。

「食指」の読み方・意味・使い方

「食指」は、古代中国の漢語で「人差し指」の意味で、「しょくし」と読みます。
有島武郎の代表作「或る女」の中では、「大きな食指を鍵形にまげて、たぐるやうな恰好をして見せた」と表現しています。

「食指が動く・食指が動かない」の意味

「食指」を使う場合は、「食指が動く」や「食指が動かない」などの慣用句として使われることが多くなっています。
「食指が動く」とは、「食欲がおこる」という意味とそこから転じて「物を欲しがったり」「なにかをしたくなる」ことの意味です。逆に、「食指が動かない」は、「欲しくない」「興味がわかない」の意味になります。

・赤くてみずみずしいイチゴの写真は、見ただけでも食指が動きます。
・彼の企画書は非常にインパクトがあり、誰もが食指を動かしました。
・味が良くても、このような見栄えでは食指が動きません。
・いくら大金を積まれても、今回の仕事は彼の食指が動きませんでした。

「食指が動く」の語源

「食指が動く」の語源は、古代中国の春秋時代を記述した史書「春秋左氏伝」に由来します。

「食指が動く」の由来となった原文

楚人献黿於鄭霊公。公子宋与子家、将入見。子公之食指動。以示子家曰、他日、我如此、必嘗異味。及入、宰夫将解黿。

原文の日本語訳

ある日、春秋時代の楚の国の人が、鄭の君主である霊公にすっぽんを献上しました。その時、貴族の子供である子公と子家が霊公の屋敷を訪れようとしていましたが、子公の人差し指がピクリと動きました。子公は子家に「私の人差し指が動くと必ず珍味にありつける」と言いました。二人が霊公の屋敷に入ると、ちょうど料理人がすっぽんをさばいているところでした。

以上のような内容から、故事成語の「食指が動く」が生まれたのです。

「食指」のビジネス上での使い方

ビジネスにおいても、「食指」は、「食指が動く」や「食指が動かない」という慣用句で使うのが一般的です。但し、ビジネスで使う場合は、「食欲」ではなく「興味」という意味合いで使うことが多くなります。

・今回の応募者の中には、食指が動く人材が多いようです。
・その仕事は以前からやってみたかったので、話を聞いた時はおもわず食指が動きました。
・よく練られた企画書だとは思いますが、なぜか食指が動きません。
・社長の食指が動かないのは、商品のアイデアに斬新さが感じられないからでしょう。

また、食品関係の広告写真などでは、「食欲がおこる」という意味で「食指が動く」を使うことがあります。

・料理にシズル感があれば、写真でも自然に食指が動かされるものです。

「食指が伸びる・食指を伸ばす・食指をそそられる」は誤用

美味しそうな食べ物を見て、「食指がそそられるね」と言われたらどう感じますか?
多くの人は、違和感がないかもしれません。

2011年に発表された文化庁の「国語に関する世論調査」では、「食指が動く」と「食指がそそられる」のどちらを使うかを年代別に以下のように報告しています。

 

食指が動く 食指がそそられる どちらも使わない
16歳~19歳 26.9% 32.1% 32.1%
20歳代 35.4% 29.7% 25.1%
30歳代 37.8% 30.1% 23.2%
40歳代 42.5% 27.9% 21.4%
50歳代 38.2% 38.5% 15.2%
60歳以上 37.9% 30.5% 16.6%

16歳~19歳では、「どちらも使わない」が多く、使う人でも「食指がそそられる」の方が多くなっています。
40歳代では、「食指が動く」が多くなっていますが、50歳代では約40%、60歳代では約30%の人が「食指がそそられる」を使っています。
つまり、50歳以上の半数近くがよく使う表現として、「食指をそそられる」をあげているのです。

しかし、「食指」は、古代中国語の「人差し指」の意味で、人さし指が動くと美味しいものにありつけるという話から、「食指が動く」という故事成語が生まれたのです。
語源を知っていれば、「食指がそそられる」は誤用だとわかりますが、多くの人が知らないのが現実です。

これは、「食指が伸びる」や「食指を伸ばす」も同様です。

・あの企画には食指が伸びます。
・どうやら社長は新規分野に食指を伸ばしているようです。

なんとなく意味が通じるので、間違いとは思わない人は多いでしょう。ですが、違和感がないのは「食指」の意味を知らないからです。
もし、「食指」が「人差し指」だとわかったらどうでしょうか?

人差し指がグングン伸びたとしたら、まさにエイリアン。背筋が寒くなりますね。
さらに、「食指が動く」の由来を知っていれば、「食指が伸びる」がとんでもない誤用であることも理解できますね。

「食指がそそられる」「食指が伸びる」「食指を伸ばす」は誤用ですから、特にビジネスでは間違えないようにしてください。

「食指」の類義語と例文

「食指」の類語には、「人差し指」の他に「お母さん指」「塩嘗め指」などの言い方があります。
「塩嘗め指(しおなめゆび)」は、お酒を飲む時に小皿の塩をなめる時に使う指のことで、食指になります。
慣用句の「食指が動く」の類語では、「欲が湧く」「色気を出す」「山っ気を出す」などがあります。

欲が湧く(よくがわく)
意味:ものに対して欲をもつこと。
例文:新商品が好評だったことで、社長はさらに欲が湧いたようです。
色気を出す(いろけをだす)
意味:成功するかもしれないと思い、分不相応なことに手をだすこと。
例文:本業が順調でも、他業種に色気を出すのは危険です。
山っ気を出す
意味:万が一の儲けや幸運を狙って、思い切ったことを仕掛けること。
例文:山っ気を出して株なんか買うから、こんな結果になるんですよ。

「食指」の英語表現

「食指」、つまり「人差し指」は英語で「index finger」や「pointer finger」です。どちらも何かを示す指の意味になります。
慣用句の「食指が動く」は、日本語で「食欲がおこる」と「興味を持つ」の2つの意味で英語にすると、「make me hungry」と「make me curious」になります。

・Just hearing it is making me hungry.
 聞いただけでも食指が動くね。
・The project made me curious.
 そのプロジェクトに食指が動きました。

まとめ この記事のおさらい

・「食指」は、古代中国の漢語で「人差し指」の意味で、慣用句として「食指が動く」が使われています。
・「食指が動く」の語源は、古代中国の春秋時代を記述した史書「春秋左氏伝」に由来。
・「食指が伸びる・食指を伸ばす・食指をそそられる」は誤用ですが、50歳以上の半数近くが「食指をそそられる」を使っています。
・「食指」の類語は、「人差し指」「お母さん指」「塩嘗め指」、「食指が動く」の類語は、「欲が湧く」「色気を出す」「山っ気を出す」など。
・「食指」は英語では、「index finger」「pointer finger」、「食指が動く」は、「make me hungry」「make me curious」などになります。