自己愛|意味、使い方・自己愛性パーソナリティ障害・類義語や対義語などを解説

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ここでは「自己愛」について考察します。

スマホやPCの普及によって他人との関わりが希薄化する中で、学校や職場のリアルな人間関係に悩む人が多くなっています。上司や部下、家族との関係に苦しむうちに性格が不安定になるというパーソナリティ障害も増加しています。

そこでここでは近年注目を集めている自己愛性パーソナリティ障害を中心に、自己愛について解説いたします。自分自身の性格の問題や精神疾患を理解する上で、障害に関する知識を得ることは、とても大切です。どうぞ最後までお読みください。

自己愛の読み方・意味・使い方

「自己愛」は「じこあい」と読みます。意味としては自分自身に陶酔的な愛情を抱き、理想化したイメージを重ねることをいいます。「自己愛」は心理学や精神医学で使われる専門用語のひとつです。日常生活ではめったに使われることはありません。

「自己愛が強い」とはどういう人か?

「自己愛が強い」というと、「ナルキッソス」というギリシア神話の美青年を思いうかべる人も多いでしょう。ナルキッソスを語源とする「ナルシスト」は、自分自身をこよなく愛し、陶酔する人をいいます。

ただし精神医学で「自己愛が強い人」とは「自己を性愛の対象と見なす陶酔型のナルシスト」の意味ではありません。

「自分には特別な才能がある」「自分は有能で重要な存在だ」といった誇大妄想に近い自信を抱き、虚栄心が強い一方で、他人からの批判には極端に弱く、自分が理想とする空想の世界にひたることで現実から逃避する人を「自己愛が強い」といいます。

「自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)」とは

前述したように精神医学で定義される「自己愛が強い」人とは、「自己陶酔型のナルシスト」ではなく、「自尊心が強く自信過剰な人」「自分が理想とする空想の世界にひたる傾向がある人」ということがいえます。

それらの特徴が特に顕著な人を「自己愛性パーソナリティ障害(または自己愛性人格障害)」という精神疾患のひとつに位置づけています。

自己愛性パーソナリティ障害のおもな特徴

アメリカ精神医学会がまとめた「DSM-5(精神障害の診断および統計マニュアル第5版)」では、自己愛性パーソナリティ障害について「以下の9項目のうち5つ以上当てはまること」という診断基準を定めています。

1.自分は重要人物であるという誇大な感覚を持っている。
2.無限の成功や権力、才気、美貌、あるいは理想的な愛にめぐまれる自分について空想している。
3.自分が特別な存在であり、他の特別な人達だけに理解できる独特の人間だと信じている。
4.他人からの過剰な賛美を期待している。
5.特権的な待遇を根拠なく期待している。
6.自分の目的を達成するために他人を利用することをいとわない。
7.他人の気持ちや欲求を理解しない。
8.他人に嫉妬されていると思い込む。
9.態度や行動が尊大で傲慢な傾向が強い。

上述の「DSM-5」は経験豊富な精神科の医師が診断基準のひとつにしている専門的な指針です。一般の人が自己診断の基準にすることはできません。

「自己愛性パーソナリティ障害」の基本的な特徴としては、空想または行動において誇大な自信が認められること。賛美されたいという欲求が強いこと。傲慢で共感性が欠如していること。などのポイントがあげられます。

統計によれば日本人の10人に1人は「自己愛性パーソナリティ障害」の疑いがあると言われています。また男性の方が女性よりも多く、高齢者よりも若者に多いという特徴があります。

「自己愛性パーソナリティ障害」の人は多くの場合、自分に問題があることを認識しないため、根本的な治療は困難とされています。しかしながら、よほどの重傷でなければ、社会生活に支障をきたすような疾患ではありません。

「自己愛」という言葉によって意味を誤解されがちですが、「自己愛性パーソナリティ障害」の「自己愛」とは「過剰な自信とプライド」の意味になります。「自分に対する陶酔的な愛」のことではありません。

自己愛そのものは家族愛や異性との愛と同様に健全な感情であり、人として健康な生活を維持するために欠かせない心理的な動機とされています。くれぐれも「自己愛は悪だ」と安易に決めつけないように注意してください。

自己愛の類義語と例文

自己愛と同じような意味を持つ類義語としては「ナルシシズム」「自己陶酔」「自己満足」があげられます。自己愛を否定的な意味で用いる場合は、「虚栄心」「うぬぼれ」「スノッブ」「自己中」なども加えることができます。

「ナルシシズム」は前述したようにギリシャ神話の美少年ナルキッソスが語源です。ナルキッソスは水面に映った自分自身の姿を熱愛するあまり死んでしまいます。

そこから自己愛が強い人のことを英語では「ナルシシスト(narcissist)」、日本ではオランダ語を語源とする言葉で「ナルシスト(narcist)」と呼ぶようになりました。

否定的な言葉の「スノッブ(snob)」は、おもにイギリスで使われる言葉です。意味は「知識や教養をひけらかす見栄っぱりの俗物」「気取り屋」などをあらわします。

「ナルシシズム」の例文

思春期から成年にみられる二次性のナルシシズムは「自己愛性パーソナリティ障害」の核になる心理だと言われています。

「うぬぼれ」の例文

受付嬢が毎朝笑顔で挨拶してくれるから「自分に気がある」と思い込むのは、うぬぼれにもほどがある。

自己愛の対義語と例文

自己愛と反対の意味を持つ対義語としては、「自己嫌悪」「自虐」「卑下」などがあります。「卑下」は現代語ではサ変動詞の「する」をつけて「卑下する」という形で用いるのが一般的です。

「自己嫌悪」の例文

スマホをトイレに落としたぐらいで自己嫌悪に陥ることはない。修理すればまた使えるよ。

「卑下」の例文

「謙虚は美徳」とはいうけれど、君は自分を卑下しすぎだ。もっと自信を持ちなさい。

自己愛の英語表現

自己愛を意味する「ナルシシスト」は英語で「narcissist」と書きます。他にも「自分自身に陶酔する人」の意味で「self absorbed」「love oneself」ということもできます。

また「尊大」「自己中心的」「傲慢」「うぬぼれ」の意味では「arrogant」「conceited」「haughty」「selfish」などの言葉があります。

「arrogant」は「尊大にふるまうこと」「自信過剰で他人を見下す横柄で不愉快な人」のことをあらわします。

「conceited」は「うぬぼれが強い人」「思い上がっている人」をあらわします。

「haughty」は「傲慢な「横柄な」を意味する言葉です。

「selfish」は「わがままな人」をいいます。

まとめ

・「自己愛」とは自分自身に強い愛情を持ち、理想的なイメージを重ねることをいいます。
・精神医学では自信過剰で自尊心が高すぎる傾向がある人を「自己愛が強い」といいます。
・自己愛性パーソナリティ障害の特徴としては、空想または行動において誇大な自信が認められること。賛美されたいという欲求が強いこと。傲慢で共感性が欠如していること。などがあげられます。
・「自己愛性パーソナリティ障害」の原因は過剰な自信とプライドであり「自分に対する陶酔的な愛」が原因ではありません。
・「自己愛は悪だ」と安易に決めつけてはいけません。