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ここでは明けの明星が見える時刻や方角、宵の明星との違いについて解説します。
都会では星が見えないせいか、大人になると天体には興味も関心もなくなった、という人も少なくありません。
でも「明けの明星」の明るさは最大でマイナス4.6等もあります。
これは「不夜城」と呼ばれる都心でも、じゅうぶん見える明るさです。
ふだん星は見ないという方も、この機会に夜明け前の空を見上げて、明けの明星を探してみてはいかがでしょうか。
明けの明星とはなにか
明けの明星(あけのみょうじょう)は、夜明け前に東の空にひときわ明るく見える金星の呼び名です。
「明星」は「明るくかがやく星」を意味する言葉ですが、金星の別名でもあります。
金星は太陽を中心に公転する8個の惑星のうち、内側から2番目の星になります。
金星の公転周期は地球よりも短く、太陽のまわりを224.7日で1周します。
太陽との距離が近いため、金星が地球から見えるのは、明け方か日没の時間帯に限られます。
そこで明け方に見える金星を「明けの明星」、日没に見える金星を「宵の明星(よいのみょうじょう)」と呼んで区別しています。
宵の明星との違い
明けの明星と宵の明星の違いは、金星が見える時間帯と方角にあります。
地球から見た金星は、太陽を中心として東西に扁平な楕円軌道を描いています。
金星が太陽の西側に回ってくると、東の空に太陽より先に金星が昇ってくるようになります。
それが「明けの明星」です。
逆に金星が太陽の東側に回ってくると、今度は太陽のあとに続いて西の空に沈むようになります。
それが「宵の明星」です。
宵の明星は月や太陽以外では最も明るく見えるので、「一番星」とも呼ばれています。
このように同じ金星でも、見える時間帯と方角のちがいによって「明けの明星」と「宵の明星」に区別されています。
ただ「明けの明星」と「宵の明星」とでは、金星の軌道上の位置が正反対になるため、同じ日に見ることはできません。
2020年以降を例にあげると、明けの明星が見えるのは2020年7月から2021年2月ごろまで。宵の明星は2021年7月から2021年12月ごろまで見えるようになります。
見える時間と方角
「明けの明星」が見える時間帯は地域によって違いますが、おおむね午前4時から5時ごろにかけて、東の方角に見えるようになります。
一方、「宵の明星」は、日が沈むころ西の方角に見えるようになります。時間帯は午後5時から6時ごろになります。
金星が真夜中に見えない理由
金星は太陽と距離が近く、夜は太陽と同じように地球の裏側に回り込むため、真夜中に金星を見ることはできません。
一方、昼間は太陽がまぶしすぎて、他の星と同じように目視することはできません。
ただし金星と水星の場合、太陽をめぐる公転軌道が地球の内側を通るため、まれに太陽と地球の間を通過して、日中でも太陽面にシルエットを描く形で見えることがあります。
これを金星や水星の太陽面通過(日面経過)といい、地球からは数年から十数年程度のスパンで観察することができます。
金星とはどのような星か
金星は太陽系を構成する8つの惑星のひとつです。
夜明け前か日没後の空にひときわ明るくかがやく星として、西洋ではローマ神話の愛と美の女神「ビーナス(Venus)」の名称を与えられています。
太陽をめぐる金星の公転軌道は地球のすぐ内側にあり、地球との最短距離が最も近い惑星でもあります。
ただし地球との距離を平均した場合、計算上は金星よりも水星の方が近くなる、とも言われています。
金星の赤道半径は、地球の0.95倍にあたる6,052km。推定質量は地球の0.82倍と、大きさ重さともに地球に近く、内部構造も地球と同じように地殻とマントルがあり、中心には鉄やニッケルを主成分とする重い「核」が存在すると考えられています。
また、金星は太陽系の惑星で唯一、自転の方向がちがう星でもあります。
その原因は今なお解明されておらず、太陽系をめぐる大きな謎のひとつになっています。
金星の地表付近の大気は高濃度の二酸化炭素に占められ、気圧は90気圧に達しています。
大気の層は非常に厚く、高度50km以上でようやく地球に近い気圧になると言われています。
さらにその上空には、厚さ数十キロに及ぶ濃硫酸の雲の層があり、日光を完全にさえぎっているため、地表から太陽を見ることはできません。
日差しがなければ涼しそうに思えますが、実際には大気中の二酸化炭素による温室効果がきわめて強く、金星の表面温度は昼夜を問わず摂氏460度もあるといわれています。
この温度は亜鉛の融点よりも高く、太陽に最も近い水星の表面温度をも上回ります。
このように金星は、「愛と美の女神」のイメージとはかけ離れた過酷な環境の星ですが、一方で、濃硫酸の雲は太陽光の反射率が高く、金星をひときわ明るく輝かせる要因になっています。
夜明けや日没の空にきらめく「明けの明星」や「宵の明星」の美しい光は、実は有害性が極めて高い濃硫酸の雲のおかげでもあるのです。
その他の惑星と特徴
ここでは金星と地球以外の太陽系の惑星を紹介します。
水星
水星は太陽系で最も太陽に近く、最も小さい惑星です。
直径は月よりもわずかに大きく、質量は地球の18分の1しかありません。
自転の周期は非常に遅く、1日の長さが地球の59日分に相当します。
水星は太陽に近いため、地球のほぼ1ヶ月におよぶ日中には、地表付近の最高気温が400度まで上昇します。
もちろん暗黒の夜も同様に長く、最低気温はマイナス160度になると言われています。
この気温差は、水星に大気がほとんどないことも理由のひとつです。
もちろん水もありません。
このように「水星」の実態は、名前とは裏腹の乾いた過酷な環境の星です。
火星
火星は太陽から4番目に近い惑星です。
火星は地球のすぐ外側を、1周687日の周期で公転しています。
直径は地球の半分程度、質量も地球の10分の1しかありません。
大気は薄く、地表には川も海もありませんが、地形には水の痕跡が数多くあり、かつては火星にも大量の水があったことを示しています。
木星
木星は、太陽系最大の惑星で、直径は地球の約11倍もあります。
体積は地球の1300倍もありますが、星を構成する成分のほとんどが水素とヘリウムのガス惑星ですので、重さは地球の320倍程度しかありません。
星の大きさに比べると自転の周期は非常に速く、10時間ほどで1回転します。
逆に公転周期はきわめて長く、木星の1年は地球の12年に相当します。
木星の特徴的な縞模様と、「大赤斑」と呼ばれる大きな赤い斑点は、天気が良ければ小型の望遠鏡でも観察することができます。
土星
土星は太陽系の中では木星に次いで2番目に大きな惑星です。
直径は地球の約9倍。体積は764倍もありますが、質量は95倍しかありません。
土星は木星と同じく水素を主成分とするガス惑星で、周辺には49個の惑星と、きわめて特徴的な輪があります。
この輪は100倍程度の天体望遠鏡で観察することができます。
天王星
天王星は太陽系で外側から2番目の惑星です。
直径は太陽系で3番目に大きく、木星や土星と同様に水素を主成分とするガスで構成されています。
大気はメタンの雲に覆われています。メタンは赤い光を吸収するため、天王星は青く見えます。
天王星の最大の特徴は、地球から見ると自転軸が横倒しになっていることです。
これは天王星が誕生して間もないころに、他の大きな星と衝突し、その衝撃で自転軸が大きく傾いたからだと言われています。
また、土星ほどではありませんが、天王星にも輪があることもわかっています。
海王星
海王星は太陽系で太陽から最も遠い惑星です。
直径は地球の約4倍、質量は約17倍のガス惑星です。
地球から肉眼で観望することはできません。
明けの明星の英語表現
「明けの明星」は英語で「Daystar」「Lucifer」「the morning star」などと言います。
一方、「宵の明星」は英語で「Hesperus」「vesper」「the evening star」などと言います。
一般的には「金星」を意味する「Venus」で通用します。
まとめ
- 「明けの明星」は、夜明け前に東の空に見える金星を意味する言葉です。
- 「明けの明星」に対し、日没前後に西の空に見える金星を「宵の明星」と言います。
- 金星は濃硫酸の雲と二酸化炭素の大気に包まれた灼熱の星です。