「桃源郷」とは|意味・使い方、類語・対義語・英語表現を解説

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本記事では「桃源郷」という言葉について解説しています。

小説や漫画などで使われる桃源郷。日常生活でもものの例えとして使われることがあります。

しかし、桃源郷がどういう場所なのかをイメージできないという人は多いです。意味や使い方以外にも、語源や類義語、対義語などについても解説しますので、本記事を読むことで、桃源郷に関する理解は深まっていくことでしょう。

桃源郷の読み方・意味・使い方

桃源郷は「とうげんきょう」と読みます。現実世界からかけ離れた別世界のことで、仙人が暮らすような清らかで美しい土地です。現実世界においても、悠々自適に暮らせるような居心地の良い場所の比喩として使われます。

「私の故郷は山々に囲まれた田舎だが、年老いた両親はのんびりと畑仕事をし、気心の知れた近所の人たちとの付き合いを毎日楽しんでいます。2人にとっては、いわば桃源郷のような場所だといえます」

桃源郷の語源

桃源郷は、六朝時代に活躍した中国の詩人・陶淵明が記した『桃花源記』の中で使われたのが始まりです。

晋の時代、とある漁師が舟で長い渓谷を進んだ末に、桃の花が咲き乱れる場所にたどり着き、そこにある村で人々が豊かな暮らしを送っているのを目の当たりにします。

手厚いもてなしを受けながら話を聞くと、彼らは戦乱を避けるために山奥に移り住んだという経緯がありました。そして、これからも静かに暮らしていたいからと、漁師に村のことを他言しないよう願います。

しかし、漁師は約束を破り、村のことを役人に話してしまうのです。役人から案内を頼まれた漁師は、帰る際につけておいた道標をたどって再び村を訪れようとしますが、道標が消されてしまったことで、結局村にはいけなくなってしまったのでした。

このストーリーは、桃源郷が人々の心の内に存在するものであり、それを心の外に求める、すなわち探すとかえって見つけられないのだということを表現しているのではないかと解釈されています。

桃源郷のモデルとなった地域

桃源郷のモデルとされる土地はいくつかありますが、とくに有名なのが中国は湖南省常徳市の郊外にある桃源県の農村「桃花源」です。公認も受けており、観光地として人気です。『桃花源記』の中で描かれているような華やかさはありませんが、桃の木がたくさん見られ、毎年3月には「桃花フェスティバル」というイベントが行われています。

また、同じく湖南省の張家界市の「武陵源」も桃源郷のモデルだといわれています。こちらは柱のように岩山が立ち並ぶ独特の雰囲気で、映画『アバター』の舞台になったことでも有名です。岩山の麓に広がる豊かな森林には貴重な動植物が多数生息しており、1992年に世界自然遺産として登録されています。

「桃源郷エイリアン」とは

桃源郷を含む言葉で、若者を中心に聞き覚えがあるのが、「桃源郷エイリアン」です。これはロックバンド「Serial TV drama」の楽曲で、2011年に発売されました。その後、大人気アニメ『銀魂』の最初のオープニングテーマに採用され、有名になりました。

曲名の由来は、1997年に開発されたコンピューターゲーム『平安京エイリアン』で、タイトルをもじったものです。時代劇風コメディである銀魂の世界観に合った和風なロックとなっています。

桃源郷の類義語と例文

桃源郷の類義語はいくつかありますが、中には微妙に意味が異なる言葉もあります。ここで挙げるのは、「楽園」「ユートピア」「理想郷」の3つです。

楽園(パラダイス)

「楽園」とは文字どおり、苦しみのない、楽しさに満ち溢れた場所のことです。リゾート地などのキャッチフレーズの中に含まれることが多い言葉です。英語でパラダイスとも言いますが、これは古代ペルシア語の「パイリダエーザ(兵に囲まれた場所)」が語源といわれています。

「一人暮らしの休日は、好きなだけのんびりできる、まるで楽園にいるかのような日だ」

ユートピア

「ユートピア」とは、現実の社会に不満を持つ人が思い描く、理想的な社会のことです。桃源郷は現実には存在しない世界であるのに対し、ユートピアは実現の可能性がある世界であるという点で異なります。ただ、この違いはあくまで「厳密に言えば」という程度のもので、桃源郷の代わりにユートピアを使っても問題ありません。

「この立候補者のマニフェストが実現すれば、この社会はユートピアになるかもしれないが、それはかなり難しいと思う」

理想郷

「理想郷」とは、想像上の、幸福に満ちた暮らしやすい社会のことです。こちらも桃源郷と同じ意味で使うことができます。

「漫画やアニメで描かれているような理想郷に、一度は行ってみたいといつも思っています」

桃源郷の対義語と例文

続いて、対義語について解説していきます。桃源郷の対義語というよりは、先ほど説明した類義語の対義語といえるものなので、ペアで覚えると定着しやすいです。

ディストピア

「ディストピア」とは、ユートピアの対義語で、人々が望まないようなことが実現してしまった社会のことを意味します。たとえばSF作品では、環境破壊が進行して荒廃した世界や、ロボットによって人類が管理される社会などが描かれています。

前者は人々が苦しみを抱えながら暮らす社会で、後者は一見合理的で完全な社会のようですが、果たしてそこに暮らす人は幸せと言えるのか、と疑問に思うような社会です。このような社会を描いた作品には、社会的課題を未解決のままにしておくことへの警鐘などを意図しているものが多いです。

「大気汚染を食い止めなければ、世界はやがて特殊なマスクや防護服なしでは外出できないようなディストピアと化すだろう」

現実郷

「現実郷」とは、煩わしくて面倒な、苦しみや悩みの多い社会のことを意味します。すなわち、今私たちが暮らしている世界のことです。

もちろん、実際には苦悩することだけではありません。しかし、幸福というのは当たり前の日常の中にあるため、人々は感じ取りにくいものです。それゆえ、現実というものが苦しみに満ちていると考えてしまうのです。

「この現実郷を脱出して、のんびりと暮らせる世界に行きたい」

桃源郷の英語表現

次に、桃源郷を英語でどのように表現するのかについて解説します。外国の人に、自然豊かな観光地について説明するときなどに役に立ちます。

hidden paradise

1つ目の表現は、「hidden paradise」で、直訳すると「隠れた楽園」となります。『桃花源記』でも桃源郷は山奥という世間からかけ離れたところにあり、そこに暮らす人は誰にも見つからないようにしていました。山々に囲まれていたり、道路が整備されていなかったりして、人が行くには困難な場所にある観光地は、桃源郷と呼ぶにふさわしいです。

Shangri-La

2つ目は「Shangri-La」です。日本語で「シャングリラ」という言い方をします。イギリスの小説家であるジェームズ・ヒルトンの著書『失われた地平線』に登場する理想郷のことです。カラカルという8,500m以上の高山のふもとにある寺院の名前で、そこには長命で老いるのが遅い人々が暮らしています。このことから、外界から隔絶された永遠の楽園としてShangri-Laという言葉が有名になったのです。

まとめ この記事のおさらい

  • 桃源郷とは、現実世界とは別の世界にある、清らかで美しい場所のこと
  • 桃源郷の語源は『桃花源記』で描かれた桃の花が咲き乱れる光景
  • 中国湖南省の「桃花源」や「武陵源」が、桃源郷のモデルとされている

桃源郷についての解説は以上です。意味や語源、使い方を押さえておくことで、今後見聞きしたときにより具体性の高いイメージができます。国内外の「桃源郷」と呼ばれる地域に、実際に行ってみるのもいい経験になることでしょう。