ニーチェの「神は死んだ」の意味・英語表現を解説|生涯・思想についても

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この記事では「神は死んだ」の意味やニーチェについて解説いたします。

「神は死んだ」とはニーチェを代表するフレーズであり、また彼自身やその思想をより理解する上で不可欠なものです。
また哲学を学んでいく上でも、避けては通れない程有名なものだといえます。

それでは言葉の意味やニーチェの生涯等について、一つずつ確認してみましょう。

ニーチェの「神は死んだ」の意味

「神は死んだ」とはニーチェの著作「ツァラトゥストラはこう言った」の中に出てくる極めて有名な言葉です。

19世紀後半のヨーロッパは科学が進歩し、従来のキリスト教はもはや信ずるに値しない存在だという主張が「神は死んだ」の意味だといわれています。
また「絶対的な視点は存在しない」という意味でも使われています。

「喜ばしき知恵」に書かれた原文

ニーチェが初めて「神は死んだ」と書いたのは「喜ばしき知恵」という作品です。

原文ではドイツ語で「Gott ist tot! ! Gott bleibt tot! Und wir haben ihn getötet.」というセリフが書かれています。

日本語に訳すと「神は死んだ。神は死んだままだ。そしてわたしたちが神を殺したのだ。」という意味です。

「ツァラトゥストラはこう言った」に書かれた原文

「喜ばしき知恵」の後に書かれた「ツァラトゥストラはこう言った」の原文では、以下のようなセリフが見られます。

「Dieser alte Heilige hat in seinem Wälde noch nichts davon getötet.」

これは「あの老いた聖者は森の中にいて、まだなにも聞いていないのだ。神が死んだということを。」のように訳されています。

ニーチェとは

それではここでニーチェについて確認していきます。

ニーチェはドイツの哲学者で、実存主義の代表的な思想家の一人です。

ニーチェの哲学がその後の文学や哲学に与えた影響は多大で、特にハイデガーやユンガー等多数の哲学者や思想家は大きな影響を受けたといわれています。

代表作は「喜ばしき知恵」や「ツァラトゥストラはこう言った」の他、「悲劇の誕生」や「道徳の系譜」等枚挙に暇がない程です。

ニーチェの生涯

ニーチェは1844年にプロイセン王国領の小村レッツェン・バイ・リュッケンに生まれました。

当時のプロイセン国王「フリードリヒ・ヴィルヘルム4世」と誕生日が同じだった為、「フリードリヒ・ヴィルヘルム」と名付けられたのです。

ニーチェは幼い頃に父や弟を亡くしており、家計を保つ為残された一家全員で父方の祖母らがいるナウムブルクに移住します。

その後小学校に入学しますが、そこでのニーチェの性格を表すエピソードはとても有名です。

ある日の学校帰りに、あいにくの雨が降っていました。
他の子らは走って帰る中、ニーチェは頭にハンカチを乗せて歩いて帰ったのです。

心配した母が「何故走って帰らないのか」と怒ったところ、ニーチェは「校則に帰りは走らず静かに帰りなさいと書いてあるから」と答えます。

上記は多くの解説書等でも取り上げられる、ニーチェの生真面目さがよく分かるエピソードです。

またニーチェは特に音楽と国語で優れた才能を認められており、ドイツ屈指の名門校プフォルタ学院の校長から特待生として転学の誘いが届きます。

そうして転学したプフォルター学院でも模範的な成績を残し、ボン大学の哲学部と神学部に籍を置きました。

その後ライプツィヒ大学へ転学し、そこでの学びはニーチェの思想に大きな影響を与えたのです。

24歳でこれまでの功績を認められ、バーゼル大学で古典文献学の教授を務めますが、そこで著した「悲劇の誕生」の不評等もあり冷遇されてしまいます。

そうした中で様々な人物との交流を経て自身の思想・哲学を深め、多くの著書を残しました。

晩年は病を患ったり狂気状態になったり等もあり、最後は肺炎の為1900年にその生涯に幕を閉じたといわれています。

ニーチェの思想

ニーチェはギリシャ哲学やショーペンハウアー等から強く影響を受けており、実存主義の先駆者ともいわれています。

神や真理、理性や権力等既存の概念を逆説ともいえる理論で構築し直し、デカダンスやニヒリズム、超人や永劫回帰の独自概念によって新思想を生み出しました。

例えば永劫回帰説は「世界は現在と同じ世界を何度も繰り返す」という世界観をさし、これはクリスチャニズムの悪癖を否定し、後の「超人」思想に繋がります。

上記はニーチェの医大なる思想の一部に過ぎず、いかに偉大な人物であったかがよく分かります。

代表作「ツァラトゥストラはこう言った」

「ツァラトゥストラはこう言った」はニーチェの代表作の一つです。

キリスト教を人類の敵だと考えたニーチェは、「聖書」に対抗する為「ツァラトゥストラ」を教祖とする教典としてこの作品を書きました。

副題は「だれでも読めるが、だれにも読めない書物」です。
誰でも読むこと自体はできるが、理解することは難しいという意味が込められています。

というのは、「ツァラトゥストラはこう言った」は寓話形式で書かれていますが、意味を理解しながら読み進めるのが非常に難解だからです。

またニーチェはこの作品で「超人」思想について言及しました。
人間はその弱さをごまかす為にキリストや哲学を拠り所としてきましたが、それらを克服して積極的に生きる人間を「超人」と呼んだのです。

さらに先述の永劫回帰説についても取り上げています。
全ての存在は意味がないという、まさにニヒリズムの極地ともいえる思想を提唱しているといえるでしょう。

なお「ツァラトゥストラはこう言った」は「ツァラトゥストラはこう語った」や「ツァラトゥストラかく語りき」等様々な表現をされますが、全て同じ作品です。

「神は死んだ」の英語表現

「神は死んだ」を英語で表現すると、「God is dead」です。

また最も有名なのは「喜ばしき知恵」の第125章に出てくる以下の文でしょう。

「God is dead.God remains dead.
And we have killed him.
Yet his shadow still looms.
How shall we comfort ourselves,the murderers of all murderers?」

これを日本語にすると、次のように訳せます。

「神は死んだ。神は死んだままだ。
そして私たちは神を殺したのだ。
しかし神の影はまだ立ちはだかっている。
私たちはどうやって自分自身、全ての殺人者の殺人者を慰めるのだろうか?」

前後の文も合わせて確認すると、よりこの文意が伝わるかもしれません。

まとめ この記事のおさらい

  • 「神は死んだ」は「従来のキリスト教はもはや信ずるに値しない存在だ」というニーチェの主張を意味している。
  • ニーチェはドイツの哲学者かつ実存主義の代表的な思想家の一人で、後世の文学界や哲学界に大きな影響を与えた。
  • ニーチェの代表作には「喜ばしき知恵」や「ツァラトゥストラはこう言った」、「悲劇の誕生」や「道徳の系譜」等が挙げられる。
  • ニーチェ はデカダンスやニヒリズム、超人や永劫回帰の独自概念によって新思想を生み出した。
  • 「ツァラトゥストラはこう言った」は寓話形式で書かれており、副題の通り「誰でも読むことはできるが、意味を理解するのは難しい」書物である。