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この記事では「逢瀬」という言葉について解説します。「逢瀬」は日常で頻繁に聞く言葉ではありませんが、小説の一節や映画のセリフで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。読み方や意味を気にせずになんとなく聞き流していた人もいるかもしれません。
この記事では「逢瀬」の意味やどんな場面で使われるのか、例文を交えて紹介します。今まで知らなかった言葉について理解を深めることは、人としての厚みを増すことにも繋がるでしょう。
逢瀬の読み方・意味・使い方
逢瀬の読み方
「逢瀬」は「おうせ」と読みます。
「逢」は音読みで「ホウ」、訓読みでは「あ(う)」「おお(きい)」「むか(える)」と読みます。「逢」を使った他の単語には、「逢着(ほうちゃく):でくわすこと」「逢引(あいびき)」などがあります。
「瀬」は音読みで「ライ」、訓読みでは「せ」と読みます。「瀬」を使った他の単語には、「瀬戸際(とぎわ:勝敗・成否などの 分かれめのこと)」「潮瀬(しおせ:潮水の流れのこと)」「急瀬(きゅうらい:急流の瀬のこと)」などがあります。
「逢」は「逢う」と書いて「あう」と読みますが、「逢瀬」は「あうせ」ではなく「おうせ」と読むのが一般的です。「逢瀬」以外にも「おう」という読み方をするものはあり、代表的なのは「逢坂(おうさか:地名)」です。「これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関」という百人一首の一首にも、この「逢坂」が出てきます。
逢瀬の意味・使い方
「逢瀬」には次の意味があります。
会う機会。特に、恋愛関係にある男女が人目をしのんで会うこと。
何かの事情があって陽の光の下で堂々と逢うことができない愛し合う中の男女が、人目を忍んでひそかに逢うのが「逢瀬」です。
人と人が「あう」ことを表わす漢字は、多くの場合「会う」を使います。「逢瀬」の場合は「逢う」の漢字を使っていますが、「会う」と「逢う」は、ニュアンス的に少し違いがあります。「会う」は人と人とが対面することを指しますが、「逢う」は「思い入れのある人と会う。親しい人と巡り会う」ような、情緒を感じるシーンで使われることが多くなっています。
「逢瀬」という言葉も独特のニュアンスを感じることからか、小説や和歌に多く使われています。
逢瀬を重ねるとは
恋愛関係にある男女が、人目を忍んで何度も繰り返し会うことを「逢瀬を重ねる」といいます。「重ねる」は「同じことを何度も繰り返す」という意味を持っています。本来なら会ってはいけない者同士がどうしても惹かれ合い、いけないとは知りながらも会うことをやめられないという情景が「逢瀬を重ねる」から感じられます。
逢瀬の語源
「逢瀬」の「瀬」は水に関係する意味がある字ですが、「流れが急で、なかなか渡れない所」をあらわしています。また、それが転じて「なんとか その事が出来る」という意味でも使われます。
この「瀬」が「思い入れのある人と会う」と事を意味する「逢」と合わさって、「思いを寄せている人となんとか会うことができる、人目をしのんでなんとか会う」を意味する「逢瀬」という言葉ができあがっています。
「逢瀬」を思わせる行為は古くからあり、源氏物語の現代訳でもたびたび目にします。
王命婦がどんな方法をとったのか与えられた無理なわずかな逢瀬おうせの中にいる時も、幸福が現実の幸福とは思えないで夢としか思われないのが、源氏はみずから残念であった。(源氏物語 若紫 紫式部 與謝野晶子訳)
逢瀬の例文
「逢瀬」は「恋愛関係にある男女が人目をしのんで会うこと」です。次に例文をいくつか紹介します。
- 彼が出張で出向くたびに、彼女と逢瀬を重ねていたようだ。
- 忙しい日常から離れて、二人はつかの間の逢瀬を楽しんでいた。
- 既婚者と知っていながらも、彼との逢瀬をどうしても止めることができなかった。
次に「逢瀬」が使われている小説の一節を紹介します。
- 表面は同じ繰り返しでも、二つの逢瀬がまったく同じということはない。 (渡辺淳一『ひとひらの雪(上)』)
- もう十回近い逢瀬おうせであるから、二人の手順はすっかり出来上がっている。 (林真理子『不機嫌な果実』)
- まるで、周りの目をのがれて密通の逢瀬おうせにたどりつけたようにも見える。 (石原慎太郎『化石の森』)
逢瀬の類義語と例文
「逢瀬」と似たような意味を持つ言葉と例文を、次に紹介します。
恋し合う男女が人目を忍んで会うこと。
例文:夫と不倫相手の逢引現場を目撃してしまい、怒りが収まらない。
恋愛に関する事柄。いろごと。
例文:惹かれ合う二人が情事に及ぶまでに時間はかからなかった。
思いあう男女が人目を避けてあう。密会する。
例文:忍び合いの現場を週刊誌に激写されてしまった。
こっそり会うこと。特に、男女がひそかに会うこと。
例文:二人の間でたびたび密会が行われていたことを知る人は少ない。
逢瀬と逢引の違い
「逢瀬」と「逢引」はどちらも「恋し合う男女が人目を忍んで会う」ことを指します。ほとんど同じ意味なのですが、少しニュアンスが違います。「逢瀬」は「恋し合う男女が人目を忍んで会う機会」のことです。いっぽうで「逢引」は「恋し合う男女が人目を忍んで会う」ことです。「逢瀬」は会う機会、「逢引」は「会うこと自体」をさしています。
逢瀬の対義語と例文
「逢瀬」自体の対義語はありませんが、「逢瀬」を会うことと捉えるのであれば、次のような言葉が反対の意味といえるでしょう。
きっぱり別れること。再び会うことのない別れ。
例文:彼女とは長年微妙な関係を続けていたが、やっと決別した。
それまで続いてきた関係を全く断つ。
例文:不倫相手とはきっぱり縁を切りました。
逢瀬の英語表現
「逢瀬」は英語で「tryst」です。
彼女は彼との逢瀬を楽しんでいる。
また、秘密のデート、秘密の待ち合わせと考えて「secret date」と表現することもできるでしょう。
ふたりは逢瀬を重ねていた。
逢瀬についてのまとめ
- 「逢瀬」は「おうせ」と読み、「恋愛関係にある男女が人目をしのんで会うこと」を意味します。
- 「逢瀬」の類義語には「逢引」「情事」「忍び逢い」「密会」などがあります。
- 「逢瀬」は「人目を忍んで会う機会」のことを、「逢引」は「人目を忍んで会う」ことそのものを指します。
- 「逢瀬」の直接的な対義語はありませんが、「会う」の反対と考えると「決別」「縁を切る」などがあげられます。
- 「逢瀬」は英語で「tryst」「secret date」で表現できます。