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ここでは「偽善者」について解説いたします。
「偽善」は人として最も嫌われる行為のひとつ。そのため政治や社会制度を批判する際によく使われる言葉です。 その一方で、たとえ動機が偽りであっても言動そのものが「善」だとしたら、結果も善と同じではないか、という疑問も生じてきます。
そこでここでは「偽善者」の言葉としての意味だけでなく、現実に存在する偽善者の特徴なども交えて、「偽善者とは何か」を深く掘り下げていきます。どうぞ最後までお読みください。
「偽善者」の読み方・意味・使い方
「偽善者」は「ぎぜんしゃ」と読みます。意味は文字通り「偽善を行う者」のこと。そして「偽善」とは、「本心からでなく、うわべをつくろった見せかけの善」をあらわす言葉です。
具体的には、周囲の高評価や利益を得るために本心を隠して善や美徳をとりつくろうことを「偽善」といいます。偽善は人間精神の本質に関わる問題として古くから多くの宗教家や思想家に論じられてきました。
現在でもさまざまな議論や解釈がなされていますが、一般には「偽善」は「外面だけの善行」「うわべだけのきれいごと」の意味で用いられています。
ほかにも、「自らが表明している道徳的な信念に従わない言行不一致の思考や感覚」、「自分が持っていない知恵や信念、人格や美徳などを持っていると主張すること」なども偽善とみなすことができます。
「偽善者」の語源
「偽善者」の語源は中国語にあります。現在の中国語表記では「伪善者」。意味は日本語と同じ「偽善者」「食わせもの」になります。
一方、英語では「偽善者」は「hypocrite」といいます。語源はギリシャ語で「舞台俳優」を意味する「hypokritēs」。由来については「舞台で他人を演じる演技力がある者は信頼できない」ことから「猫かぶり」「偽善者」の語源になったとされています。
また、英語で「偽善」を意味する「hypocrisy」はもともと決定力の欠如を意味する言葉で、それが転じて「筋の通った信念がない」「偽善的」という意味を表すようになったといわれています。
「偽善者」の特徴
ひとことで「偽善者」といっても、宗教や思想によってさまざまな定義があります。一般的な偽善者の特徴としては以下のような共通点をあげることができます。
社交的で、第一印象が良い
偽善者が善い行いをするのは、周囲の人に見返りや高評価を期待するからです。そのため偽善者の言動はふだんから明るく社交的で、第一印象を悪くするようなヘマをすることはまずありません。
偽善者の本質や目的が何であれ、人に良い印象を与えるのが得意な人が多く、世のため人のためにつくす本物の「善者」とみなされることも少なくありません。
ほとんどの偽善者は、明るく裏表のない善人としてふるまう技術を習得しています。その本質を一目で見抜くのは容易ではありません。
打算的に行動する
偽善者は周囲の人にどう思われるかをいつも気にしています。そして期待した見返りが得られなければ、すぐにでも「善行」から手を引き、傍観か無視を決め込みます。
人間が損得勘定にもとづいて行動するのは自然なことですが、偽善者は損得への執着が強すぎるあまり、他人の立場や気持ちをわきまえずに打算的な行動に走りがちになるという特徴があります。
他人の不幸話が好き
人は誰しも他人の不幸を喜ぶものですが、そのレベルには個人差があります。他人の不幸な話を聞いて心の中では幸福を感じても顔には出さずに心の中でひそかに手をたたく人もいれば、あからさまに喜びをあらわす人もいます。
偽善者の多くは他人の不幸に接することの喜びを隠す必要を感じていません。むしろ「人の不幸は蜜の味」と昔からいうように、人間は本質的に他人の不幸を喜ぶものであり、無理に同情したり悲哀を共有しようとするほうが偽善であると信じています。
人が他人の不幸に喜びを感じることは脳科学的にも証明されている事実です。とはいえ、それは人間社会のマナーとしては無条件に容認できるものではありません。
偽善者は他人からよく思われたいと願いながらも、他人の不幸を露骨に喜んでしまうという矛盾した傾向を示すことがあります。そんな点からも偽善者の浅はかさな本質がうかがえます。
「偽善者」の類義語と例文
「偽善者」と同じような意味の類義語としては「猫かぶり」「食わせもの」「ブリっ子」「偽君子」などをあげることができます。
「猫かぶり」とは、本性を隠して別の性格を装うことを表す言葉です。語源には諸説あり、猫は愛らしい見た目とは裏腹に獰猛な性質を隠し持つことが由来とする説と、「ねこだ」というムシロをかぶって知らんぷりを決め込むのが由来とする説があります。
「食わせもの」の意味は偽善者と同じです。「食わす」という言葉には、古くは人に不利益なことを押しつけるという意味があります。そこから派生して「人を欺く」という意味も併せ持つようになったといわれています。
「偽君子(ぎくんし)」は中国の古語で、現代ではめったに使われません。意味は「ほんとうは君子(立派な人)ではないのに、表では君子らしくふるまう人」をあらわします。
「食わせもの」の例文
「偽善者」の対義語と例文
「偽善者」と反対の意味を持つ言葉としては「偽悪家」「露悪家」があります。
「偽悪家」は「偽善者」の正反対の意味をあらわす対義語ですが、「偽善者」に比べると使用頻度は非常に低く、日常生活では使われないと言っても過言ではありません。
一方、「偽悪家」は夏目漱石が小説「三四郎」で使った造語で、「善人」に見られることを拒否して、あえて悪人に見られるように開き直る人をいいます。
小説「三四郎」では「偽悪家」の本質をアイロニカルに描いており、それを読む限り単純に偽善者の反対語とはいいきれない部分もあります。
いずれにせよ「露悪家」は特に流行することもなく「三四郎」の文中でのみ用いられた言葉といえます。
偽悪家の例文
「偽善者」の英語表現
前述したように「偽善者」は英語で「hypocrite」 といいます。語源はギリシア語で「俳優」の意味ですが、現代英語の「hypocrite」に俳優の意味はありません。
ほかには「偽物」意味する「fake」や「ingenuine」も偽善者の意味で使われますが、一般に「偽善者」をあらわす言葉としては「hypocrite」の使用頻度が最も高いといえます。
hypocriteの例文
政治家や弁護士はみな偽善者です。
まとめ
・「偽善者」は「偽善を行う者」を意味する言葉です。
・「偽善者」の語源は中国語の「伪善者」で、意味は「偽善者」「食わせもの」になります。
・「偽善者」は英語で「hypocrite」といいます。
・「偽善者」は社交的で第一印象が良く、打算的に行動しがちで他人の不幸話が好き、といった特徴があります。
・「偽善者」の類義語には「猫かぶり」「食わせもの」「ブリっ子」「偽君子」などがあります。
・「偽善者」の対義語には「偽悪家」「露悪家」があります。
・「偽善者」は英語で「hypocrite」 というのが一般的です。