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ここでは「速記」について解説いたします。
速記は衆参両議院の国会をはじめとする会議録の作成などに欠かせない技術です。一方で、録音・録画・音声認識といった電子機器の進歩によって、手書きの速記を使わずに会議録を作成できるシステムの開発や普及も進んでいます。
そこで、ここでは時代の変革期を迎えている手書きの速記にあらためて焦点を当て、その方式や資格についてくわしく説明いたします。どうぞ最後までお読みください。
速記とは?読み方と意味
「速記」は「そっき」と読みます。意味は人の会話や発言をリアルタイムで正確に記録すること、またはその方法や技術をいいます。手書きによる速記の場合は、人が話す速さに対応するため、速記専用の簡略化した速記記号を用いて記録します。
速記記号は「かな」や濁点・半濁点などの発音記号を限界まで単純化しています。しかも熟練した速記者ほど癖字になるため他人には読めません。そこで書いた速記文字をあとで解読し、通常の文章に仕上げる「反訳」までの過程を「速記」といいます。
日本では1890年開催の第一回帝国議会から会議録の作成に速記が導入されました。現在では衆参両院ともに音声自動認識システムや、録音・録画をもとにパソコンで文字にする電子速記に移行していますが、本会議や委員会は現在も速記者が記録しています。
「速記記号」とは
速記記号は速記に用いる記号化された文字のことで、「速記符号」や「速記文字」とも言います。速記記号は「ひらがな」や濁音などの文字と記号をすばやく書けるように「か」は「ー」、「さ」は「)」のように画数をぎりぎりまで削っています。
また、ひらがなだけでなく、「日本」は「にほん(二本)」で「=」。「困る」は「こまる(小丸)」で「o」と書くなど、よく使われる単語も記号化して一字にすることもあります。
代表的な4つの速記方式
日本初の速記方式は1882年に田鎖綱紀(たくさり こうき)が発表した「日本傍聴記録法」だと言われています。田鎖は19世紀にイギリスで開発された「ピットマン式」速記を参考に日本語に合う速記法を考案。指導者として普及につとめました。
しかしながら田鎖の「日本傍聴記録法」は、英語の速記法を応用したため全体的に画数が多く、熟達しても筆記スピードが頭打ちになってしまうという大きな欠点がありました。
そこでさまざまな人が改良を加えた結果、10種類を超える速記方式が登場。それらは「かな」を1本の線で書く「単画派」、2画で書く「複画派」、両派の中間の「折衷派」、運筆に草書体を取り入れた「草書派」の4派に分類することができます。
ちなみに「折衷派」は、複画派と単画派の「良いとこ取り」ではなく、田鎖の「日本傍聴記録法」を始祖とする複画派 から単画派へ移行する過程で派生しました。現在の速記は折衷派と単画派が主流で、複画派と草書派はほとんど用いられていません。
現代に伝わる手書き速記の流派としては早稲田式・中根式・参議院式・衆議院式などがあります。いずれも田鎖の「日本傍聴記録法」の改良型で、「単画派」か「折衷派」の2派に分類することができます。
早稲田式
早稲田式は1930年に早稲田大学の学生だった川口渉が開発した速記法です。速記記号は「折衷派」で、50音の「かな」のうち約20音が単画、他は複画になります。基本文字数は181とやや多いものの、文字に法則性があり、覚えやすいのが特徴です。
中根式
中根式は教育者の中根正親が1914年に発表した単画派を代表する速記方式です。中根式は、ひとつの文字の頭部と尾部に分類用の記号を接続し、漢字の読みや助詞などを簡便に表記することができます。基本文字数は82。習得のしやすさにも定評があります。
参議院式
日本の国会は1890年の第1回帝国議会から会議録の作成に速記が導入されました。1918年に貴族院(のちの参議院)・衆議院の両院に専門の速記者養成所を開設。戦後に貴族院が廃止されると、貴族院速記者養成所は参議院速記者養成所となります。
速記者養成所が参議院と衆議院に別れているのは二院制議会の独立性を保つためですが、当初は両院とも田鎖綱紀が開発した複画派の「日本傍聴記録法」を採用していました。その後、衆議院は単画派に移行し、現在に至っています。
一方、参議院式は複画派から折衷派に移行し、一時は単画派になりましたが、再び折衷派に戻って現在に至ります。参議院式の基本文字数は92となります。
衆議院式
衆議院式の速記法は田鎖綱紀の「日本傍聴記録法」を単画式に改良したもので、基本文字数は103あります。
「速記者」とはどんな仕事?
速記者は「速記記号」と呼ばれる手書きの符号や電子機器などを使って人が話す内容を記録し、一字一句正確な文書にまとめる仕事です。速記記号や電子機器で記録した後で通常の文字に書き直す作業を「反訳」と言います。
速記者は基本的に速記会社に勤務しています。速記の依頼主は官公庁や新聞・出版関係が多く、会議や審議会、講演会、インタビューなどの記録を速記会社に依頼します。
依頼を受けた速記会社は通常は1~2名の速記者を現場に派遣。手書きの速記や録音・録画により速記録を作成します。反訳は手書きの速記の場合は速記者自身が、録音・録画の場合は契約ライターが行います。
その後、専門の校閲者による校閲を経て、会議録などの原稿を作成します。
衆議院や参議院の速記者は速記会社の社員ではなく、直属の国家公務員となります。かつて衆参両議院がそれぞれ開設していた速記者養成所では、2年間の養成課程で1級速記士という国家資格を取得して国会の速記者になりました。
ただし現在は音声認識や録音・録画したデータからの反訳が速記の基本となり、両院とも2004年12月をもって速記者養成所を閉鎖しました。新規で手書きの速記者を募集することもありません。
一方、裁判所にも直属の速記官がいますが、速記は専用のタイプライターで記録して閉廷後に反訳し速記録を作成するという方法を採用しています。手書きで行われることはありません。
速記士の資格を取得すると就職に有利
速記士とは、公益社団法人日本速記協会が実施している速記技能検定で1級か2級の合格者にのみ与えられる称号です。国家資格ではありませんが、速記会社に就職を希望する場合は速記士の資格を取得したほうが有利になります。
速記技能検定では速記の方式は問われません。パソコンを使用してもかまいませんが、スマートフォンやタブレットは不可。録音や声認識機能の利用も禁止されています。
速記技能検定の等級は最も低い6級から、専門職レベルの1級までの6等級です。平成30年からはパソコンの使用も認可され、それにともなって一般財団法人全日本情報学習振興協会のパソコン速記検定試験は休止となりました。
まとめ
・「速記」は人の会話や発言をリアルタイムで正確に記録すること、またはその方法や技術をいいます。
・現在主流の手書き速記には早稲田式・中根式・参議院式・衆議院式などがあります。これらは速記文字の特徴から「単画派」か「折衷派」に分類できます。
・速記技能検定で1級か2級に合格すると速記士の資格が得られます。