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この記事では「スループット」について解説いたします。
この言葉自体を見聞きしたことがないという人もいるかもしれませんが、特にIT業界や通信業界では非常によく使われる言葉です。
そこで今回は「スループット」の意味や種類、「レイテンシ」との関係も含めて取り上げました。
この記事の中で一つでも参考になるような情報があれば幸いです。
スループットとは
「スループット」とは英語の「throughput」をカタカナ語にしたもので、「単位時間当たりの処理能力」という意味です。
機器や通信路などの性能を表す特性の一つで、IT業界や通信業界ではよく見聞きされます。
「単位時間当たりの処理能力」が高いということは性能の良さを見極める上で一つの基準になっていますが、業界によって意味が少し変わります。
この項目では、IT業界と通信業界での意味や使われ方、「帯域幅」との違いを取り上げました。
コンピュータの処理性能におけるスループット
IT業界で使われる場合、「コンピュータの処理性能」を意味しています。
つまり「単位時間当たりに処理できる件数や量」を表すものです。
ただしIT業界での「スループット」はCPUやストレージ、メモリといった装置の構成や性能、処理内容等が複雑に作用しあって決まるものなので、単一の指標ではありません。
その分野や用途によって業界団体等が用意した試験用のソフトウェア(ベンチマークプログラム)を実行し、処理件数を測定したものを相対的な値とすることが多く見られます。
つまりIT業界の「スループット」は様々な要素が組み合わさっている為一概に優劣を決められないので、ベンチマークを用いて相対値を算出することで比較材料の一つにするということです。
もちろん処理件数が多いものが全てにおいて優れているというわけではないので、あくまで指標の一つに過ぎないということは頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。
通信回線のデータ量におけるスループット
通信業界で使われる「スループット」は、通信回線や装置のデータ入出力の性能を表します。
つまり伝送路を通じて単位時間あたりに送受信できるデータ量が「スループット」ということです。
単位としてよく見られるのが1秒当たりに伝送できるビット数である「ビット毎秒」(bps:bits per second)や1秒当たりのバイト数「バイト毎秒」(Bytes/s)、またこれらに大きさを表す接頭辞を付けたもの(Mbps、MBytes/s等)があります。
これらは携帯電話やインターネット回線を取り扱っている会社のパンフレット等にもよく載っているので、見たことがあるという人も多いかもしれません。
「スループット」と「帯域幅」の違い
「スループット」と同じ文脈で使われる言葉の一つとして「帯域幅」が挙げられます。
「帯域幅」を理解する上でよく用いられるのが、道路の広さの例えです。
狭い道路と広い道路では後者の方がスムーズに車が流れるように、通信の世界でも最高周波数と最低周波数の差が広い方が単位時間当たりに送れる情報量も多くなります。
ただし「帯域幅」はデジタル回線(デジタル通信)でも使われることに注意が必要です。
デジタル回線で使われる場合はデータ伝送速度を指していることもあるので、文脈でどちらの意味として使われているかを判断しなければなりません。
「スループット」は処理能力のみを表す言葉ですが、「帯域幅」は必ずしもそうではない場合があるのでその点に留意する必要があるということです。
一言でまとめると、「帯域幅」は「通信に使われる周波数の範囲、あるいは通信速度」を意味していると考えて間違いではないでしょう。
スループットの種類
「スループット」には様々な種類があり、それらは明確に使い分けられています。
どのような種類があるのか確認しておきましょう。
理論スループット
「スループット」の種類の一つに「理論スループット」というものがあります。
これは実際に計測したわけではなく、「理論上では単位時間当たりの処理能力がこれくらいになる」というものです。
正に「理論上のスループット」で、実際に測定してみるとこの「理論スループット」とは異なる結果が出ることも十分起こり得ます。
その一方でベンチマークテストを行ったり測定を逐一実施したりするのには手間がかかる為、「理論スループット」が不要かと言われると必ずしもそうではありません。
実際に測定する前段階での目安として、「理論スループット」は活用できるものだといえるでしょう。
実効スループット
「理論スループット」とは別で「実効スループット」というものがあります。
「実効スループット」は「有効スループット」とも表現されるもので、「通信速度や処理能力の尺度の一つで、実際に通信や計算を行った時の単位時間あたりの処理能力やデータ転送量」のことです。
「理論スループット」が理論上の話であったのに対し、「実効スループット」は実際に通信や計算、測定等を行ってその処理能力やデータ転送量を確認します。
例えばシステムの処理能力においては実際のデータを処理した時の単位時間当たりの処理能力を表し、理論上の最大処理能力、つまり「理論スループット」が同じであっても、処理させるデータの選び方等の条件によって「実効スループット」は変化するのです。
スループットとレイテンシの関係
処理能力やデータの転送量は「スループット」だけで決まるものではありません。
実際には状況によって一回毎にかかる遅延時間が大きく影響する場合があり、この遅延時間のことを「レイテンシ」といいます。
一般的には、大量のデータを連続的に扱う場合「スループット」が主要因です。
しかし通話のように二者が双方向的に相手からの応答を待ち、短く何度も繰り返し伝送を行うような場合は「レイテンシ」が支配的な要因になることがあります。
例えば高解像度の映像を伝送できる高「スループット」の衛星回線でテレビ中継を行ったとしても、出演者が回線越しに会話をすると発言毎に数秒の「間」が生じるかもしれません。
これは衛星が遠く電波の到達に時間がかかることによる「レイテンシ」の影響だというわけです。
なお「レイテンシ」はms(ミリ秒)の単位で示され、ネットワークの種類や構成等によってその値は変化します。
また遅延時間が短いことを「レイテンシ」が小さい(低い)、逆に遅延時間が長いことをレイテンシが大きい(高い)といいます。
この「レイテンシ」が小さければ小さい程データアクセスに関する性能は高く、またインターネット通信の状態が良好であると評価できるでしょう。
まとめ この記事のおさらい
- 「スループット」とは英語の「throughput」をカタカナ語にしたもので、「単位時間当たりの処理能力」という意味がある。
- IT業界で使われる場合は「コンピュータの処理性能」を意味し、「単位時間当たりに処理できる件数や量」を表すものとして用いられる。
- 通信業界で使われる「スループット」は通信回線や装置のデータ入出力の性能を表すもので、伝送路を通じて単位時間あたりに送受信できるデータ量のことを指す。
- 「帯域幅」は「通信に使われる周波数の範囲、あるいは通信速度」を意味している。
- 「理論スループット」が理論上の話なのに対し、「実効スループット」は実際にその処理能力やデータ転送量を確認する。
- 処理や転送の際にかかる一回毎の遅延時間のことを「レイテンシ」という。