「塩梅」とは?正しい意味や語源、「按配」との違いなどを解説

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ここでは「塩梅」という言葉について解説します。

みなさんは、田舎のおじいちゃんやおばあちゃんが「ええあんばいじゃ」と上機嫌で口にするのを聞いたことはないでしょうか。その「あんばい」を漢字で書くと「塩梅」になります。

漢字で「塩梅」と書くと、なんだか梅干しを作るときの塩加減のように思えます。意味はそれと似ていますが、語源は少しちがいます。

みなさんもこの記事で「あんばい」の正しい意味や語源を覚えて、次に帰省したときに、おじいちゃんやおばあちゃんが「ええあんばいじゃ」と言ったら、「その意味、知ってる?」と、「あんばい」のうんちくを披露してあげましょう。

塩梅の読み方・意味・使い方


塩梅は「あんばい」と読み、意味は「料理の味つけの具合や加減」「機械の調子や体の健康、仕事などの状況」「物ごとやスケジュールなどを考えて処理したり整えたりすること」などの意味をあらわします。

「塩梅」の一般的な使い方は、名詞として「味の調合」「様子」「具合」などを意味する用法と、「塩梅」にサ行変格活用の「する」を連結して、動詞的に用いる用法とがあります。

「塩梅」を名詞として使う場合は、以下の用例で示すような使い方ができます。

「だし汁の塩梅(味の調合)は悪くないですね」

「今朝の電車はいい塩梅(様子)に空いていました」

「彼は仕事を休んでいるそうだが、体の塩梅(具合)はだいじょうぶかね」

次に「名詞+サ行変格活用(する)」の形で用いる場合は、以下のような使い方ができます。

「台風で野外フェスのスケジュールを塩梅(調整)するのが大変ですよ」

「忘年会の幹事は君だったね。来週の金曜日ということでちゃんと塩梅してくれてますか?」

塩梅の語源

「塩梅」の語源は文字どおり「塩」と「梅」です。ただし、この場合の「梅」は「梅の実」や「梅干し」の意味ではなく、「梅酢」のことをいいます。

「酢」といえば、ふつうは果物や穀物を原料に醸造酒を作り、それを酢酸菌で発酵させて作りますが、梅酢の起源は酢よりも古く、醸造や発酵の技術が確立される前から作られ、利用されていたことがわかっています。

現在でも梅酢は塩漬けにした梅の実からしみ出した果汁を抽出する、という昔ながらの方法で製造されています。酢のような発酵や醸造の工程はありません。梅酢を製造したあとに残った梅の実を食したことが「梅干し」の起源といわれています。

梅酢は製造方法がシンプルで、梅の風味と酸味が強いのが特徴です。醤油も醸造酢もなかった時代は、ほとんど塩と梅酢だけで料理の味付けをしていました。

たった二種類の調味料の、ほんのわずかな配分のちがいで味の善し悪しが決まります。そこから「塩梅」という言葉が生まれました。

「もともと塩梅」は「えんばい」と読まれていました。その後、意味や読みが近い「案配」などの言葉と混同されて、「塩梅」も「あんばい」と読まれるようになったといわれています。

現在でも、雅楽器の篳篥 (ひちりき) に「塩梅(えんばい)」という奏法があります。これも、かつて「塩梅」を「えんばい」と読んでいた名残と考えられます。

塩梅のビジネス上での使い方

「あんばい」という言葉は、田舎の老人が満足の気持ちを表明する温かい方言のイメージがありますが、「塩梅」そのものは方言ではありません。全国各地で広く使われる立派な共通語のひとつです。でもビジネスシーンで耳にする機会は決して多くありません。

「塩梅」がビジネスになじまない理由としては、語感が古風で若い人に意味が伝わりにくいためと考えられます。かといってタブーというわけでもありません。

たとえば最近よく使われる「ワーク・ライフバランス(work–life balance)」という言葉を日本語に訳すと「仕事と生活の調和」になりますが、言い方を変えれば、「仕事と生活の塩梅」にもなります。

また「損益分岐点は限界利益と固定費によって決まる」という文章を、「損益分岐点は固定費と限界利益の塩梅で決まる」と言い換えることもできます。

「塩梅」と同じ意味の「配分」や「加減」「バランス」といった言葉はシーンを問わずよく使われます。「塩梅」という言葉もそのうち何かのきっかけで大ブレイクするかもしれません。

塩梅の類義語と例文


塩梅と同じような意味の類義語としては、「さじ加減」「塩加減」といった調理関係の言葉や、「案配」「按配」などの同音異字語、「具合」「容態」「コンディション」など状態や調子を意味する言葉をあげることができます。

「さじ加減」の例文

「さじ加減」は料理の味つけの意味でもよく使われますが、本来は薬の調合を意味する言葉です。また以下の例文のように「個人の裁量でどうにでもなる」という意味でも使われます。

私だって上司にこびなど売りたくないが、会社員の命運は上司のさじ加減ひとつにかかっているからね。

「コンディション」の例文

選手のほうはベストコンディションでしたが、いかんせんグラウンドコンディションが悪すぎて、記録のほうは伸び悩みました。

「塩梅」と「按配」の違い

「塩梅」と「按配」はどちらも「あんばい」と読み、意味もほとんど同じです。「塩梅」の語源は先述の通りですが、「按配」は最初から「あんばい」と読み、「程よく物を並べる」という意味でした。

そして中世末頃から次第にこの2語が混同して使われるようになり、今日では同音同義語として使われるようになったという経緯があります。

「塩梅」と「按配」はどちらも使っても間違いではないですが、「按配」よりも「塩梅」を使う方が一般的です。そのため文章で見かけるのも、「按配」より「塩梅」の方が多いでしょう。

塩梅の英語表現


塩梅の意味を英語で表現すると、「味」を意味する「taste」「seasoning」、感覚を意味する「feel」、比率や等級を意味する「rate」、「状態」を意味する「state」などをあげることができます。

「いい具合」「いい感じ」の意味では「It’s perfect!」「It’s just good!」などの口語的な表現がよく使われます。また「ねらいどおり」「バッチリ」を意味する「spot on」を使って「It’s spot-on!」と言うこともあります。

「塩梅」を英文にする場合は、「さじ加減」や「塩加減」などの日本語的なニュアンスにこだわるよりも「It’s just good!」「It’s perfect!」「It’s spot-on!」とストレートに絶賛する方が英語的な表現になります。

またコンディションの語源の「condition」も「健康状態」や「機械の調子」「状況」などの意味で使われますが、どちらかといえば診断書や報告書など専門的な文書で使われる業界会用語で小難しいニュアンスがあり、日常会話で使われことは多くありません。

なお英語の「condition」と日本語化したカタカナ英語の「コンディション」では、微妙な意味のちがいがあります。たとえば、英語の「condition」には「条件」という意味もあります。

英語で「working condition」というと、「稼働中の機械の状態」という意味に解釈できますが、「working conditions」と複数形になった場合、「労働条件」の意味にもなります。

「condition」を和訳するときには、日本語のイメージにとらわれすぎないように注意しましょう。

まとめ

  • 塩梅は「あんばい」と読みます。
  • 塩梅は田舎の方言のようですが、全国で広く使われる共通語です。
  • 塩梅の意味は「料理の味つけの具合や加減」「機械の調子や体の健康、仕事などの状況」「物ごとやスケジュールなどを考えて処理したり整えたりすること」などの意味をあらわします。
  • 塩梅の類義語には、「さじ加減」「塩加減」「案配」「按配」「コンディション」などをあげることができます。
  • 「塩梅」と「按配」は読みも意味も同じ同音同義語ですが、「塩梅」を使う方が一般的です。
  • 塩梅の英語表現には、「taste」「seasoning」「feel」「rate」などがあります。