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「残滓」という言葉は、普段ほとんど耳にすることはありませんが、小説を読んでいるときなどに目にしたことがある人もいるでしょう。馴染みのない言葉なので、読みや意味がわからないまま流してしまったことがある人もいるのではないでしょうか。
この記事では、「残滓」の読み方と意味、使い方や例文、類語や英語表記について解説します。「残滓」は頻繁に使われる言葉ではありませんが、覚えておくことで話や読み物に出てきたときによりの一層理解を深めることができるでしょう。
「残滓」の読み方
「残滓」は「ざんし」または「ざんさい」と読みます。本来の正しい読み方は「ざんし」で「ざんさい」は慣用読みです。
慣用読みとは、正式な読み方以外によく使われる読み方が定着しているものをいいます。「残滓(ざんさい)」の他に慣用読みが定着している代表的な言葉には、「早急(さっきゅう・そうきゅう(慣用読み)」「貼付(ちょうふ・てんぷ(慣用読み)」「重複(ちょうふく・じゅうふく(慣用読み)」などがあります。
これらの例からもわかるように、慣用読みのほうが広く使われているケースがほとんどです。「残滓」も「ざんし」「ざんさい」の2つの読み方があることを覚えておきましょう。
「残滓」の意味
「残滓」とは「容器などの底に残っているかす。残りかす。」の意味です。
「滓(かす)」は「液体の沈殿物。おり。おどみ」の意味がありますので、「残」と合わせて、「液体の容器の底に残ったかす」の意味をあらわしています。
「残滓」の使われ方
「残滓」は意味の通り「容器の底に残ったかす」のこととして使われる場合ももちろんありますが、物質が残っていることをさすのではなく、感情や概念が残っていることをさす場合もあり、「時の残滓」「記憶の残滓」のような使われ方をします。
また、小説などでは、漠然と残るなにかをさす言葉として使ったり、なにかの名残り、または心に残ったわだかまりのようなものをあらわす表現として、比喩的に使われることが多くなっています。
「残滓」を使った例文
「残滓」を「容器の底に残ったかす」という意味で使う例としては、次のようなものがあります。
「残滓」を名残りや残りを表わす意味として使う場合の例としては、次のようなものがあります。
小説で使われている「残滓」
名残り、わだかまりを「残滓」という表現を使ってあらわしている小説を紹介します。「残滓」の使い方がイメージしやすくなることと思います。
人々の思いや時の残滓が、その床の軋みのひとつひとつに、壁のしみのひとつひとつに留まっていた。
(村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下))
ここにこそ「人生」は、あらゆるその残滓を洗って、まるで新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いているではないか。
(芥川竜之介/戯作三昧)
心の底にたまっていた残滓(かす)のような不安が一ペんに洗い去られたような気がしたのである。
(尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇)
「残滓が残る」は二重表現
「残滓」を使うときに注意しなければならないのが二重表現です。「ワイングラスに残滓が残っている。」のように「残る」をつけて使ってしまいがちですが、これは間違いです。
「残滓」に「残り」のと同じように二重表現になってしまいます。例文のように「ワイングラスに残滓がある。」「ワイングラスに残滓がついている。」のようにするのが適当でしょう。
「残滓」の類語
「残滓」と同じような意味で使える言葉には次のようなものがあります。
残り。余りのことです。「残滓」は残ったかす=いらないもの、の意味が強いですが、残余は不要なものということではなく、今どれだけ残っているかを示します。例えば、特定の財産が生産されて後に残った積極財産を「残余財産」といいます。
他の部分が取り去られた後に残った物のことです。「残留」は「残留孤児」などで使われるように、そこに「留まる」意味を含んでいます。
残分も「何かが取り除かれた後に残っているもの」のことです。化学製品のふるい分けなどで残ったものを指すのに「残分」が使われます。
「残滓」と「残渣」の違い
類語のところでは紹介しませんでしたが、「残渣(ざんさ)」も「残滓」と似た意味を持つ言葉です。しかしこの2つの言葉は「残り」の解釈に違いがあります。
「残滓」は残りかす、すなわちいらないもの、不要物を表わしています。「残渣」は同じく残りをあらわしますが、溶解やろ過の後に残る不溶物(溶けきらなかったもの)をあらわします。
漢字もどちらも「残」と「さんずいの付く字」からなっており、また「ざんし」「ざんさ」と発音も似ていることから使い間違いや聞き違いをしがちなので、注意しましょう。
「残滓」の英語表現
「残滓」の英語表現は、物質が残っていることを表わすなら「residue」を使うとよいでしょう。
火薬の残留
残滓を回収する
名残りや風習などを表わすには「vestige」を使うとよいでしょう。
この記憶は私がアメリカに住んでいたときの残滓だ。
「残滓」についてのまとめ
- 「残滓」は「ざんし」または「ざんさい(慣用読み)」と読みます。
- 「残滓」は「容器などの底に残っているかす。残りかす」の意味です。
- 「残滓」はもともとの意味の通り物質が残っている様子を表わすほか、感情や概念が残っていることを表わすときにも使われます。
- 「残滓が残る」は二重表現です。
- 「残滓」の類語には、「残余」「残留物」「残分」などがあります。
- 「残滓」の英語表現は、物質的なことを表わすには「residue」を、名残りや風習などを表わすには「vestige」を使うとよいでしょう。