ここでは「以って」という言葉について解説します。「以って」は本来、「以て」が正しい表記とされていますが、近年では「以って」という表記も定着しつつあります。

そこで本項では「以って」のくわしい意味や使い方について、語源や類義語、英語表現を含めて解説しています。どうぞ最後までお読みください。

「以って」の読み方・意味・使い方

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「以って」は「もって」と読みます。意味は「本日を以って閉店(今日で閉店)」のように日時のあとに用いて区切りや期限をあらわす用法。あるいは「定年を以って本日付で退職(定年で今日退職)」のように理由や原因を示す用法があります。

また「誠に以って遺憾であります(非常に遺憾です)」のように感情や状況を強調する表現としても用いられます。さらに「本辞令を以て支店長に任ず(本辞令により支店長に任命)」のように手段や方法を示す用法もあります。

一方、接続助詞的用法では「丈夫で以て安価(丈夫でしかも安い)」のように「~に加えて」「~の上に」という意味になります。有名な17条憲法の「和を以て貴しと為す(和を何より大切なものとせよ)」では、手段と強調の両方の意味を含んでいます。

「以って」の語源

「以って」は「持ちて(もちて)」という言葉が語源とされています。「持ちて」は動詞の「持つ」の連用形の「持ち」に接続助詞の「て」がついたもの。元は「(手に)持って」という意味もありましたが、それが失われて現在の意味に変化しています。

「以って」と「以て」はどっちが正しい?

近年ではインターネットを中心に「以って」と「以て」のふたつの表記が混在しています。本来、正しいのは「以て」という表記です。にもかかわらず「以って」が広く用いられている理由は、発音をそのまま文字化したわかりやすさにあるといえるでしょう。

また「以て」は「似て」と読み違うことも少なくありません。その点、「以って」には誤解も読みにくさもないという実用的なメリットがあります。前述のように正しいのは「以て」ですが、将来的には「以って」も正解になるかもしれません。

「以って」と「持って」の違い

「以って」と「持って」は共に「もって」で語源も同じ「持ちて」に行き着きます。ただし現代では「以って」と「持って」は全く別の意味の言葉となります。「以って」は意味は先述のとおり区切りや期限、手段や原因、強調などを示す言葉です。

一方、「持って」は「持つ」の連用形の「持ち」に接続助詞の「て」がついたもの。意味は「バッグを持つ」のように手で物をつかんで維持することや「車を持つ」のように所有すること。「免許を持つ」のに権利や資格を備えていることなどを示します。

また「好感を持つ」というように気持ちや感情を抱くことや、「勘定は私が持つ」というように金銭などを負担する、といった多彩な意味があります。

初期の日本語では漢字が当て字として用いられたため「以って」と「持って」は同じ「持ちて」から派生したとされていますが、現代では全く別の言葉です。PCやスマホで誤変換されることもありますので、使用する際は注意が必要です。

漢文における「以って」の意味

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「以って」の「以」は古代の農器具をあらわす「耜(し)」が変異した象形文字とされています。農機具は作物を育てる目的で使うことから、「以」はやがて「(道具を)用いる」「(道具)によって」という意味の漢字になったとされています。

漢文における「以って」は「以」という漢字を「もちて」と訓読したことに由来します。意味は「以」という漢字の本来の意味を反映して、手段や材料などあらわす「~によって」「~で」などをあらわすのが基本になります。

日本の古典ではほかにも接続詞的な用法で「そして」「それについて」といった意味や、語調や文意を強める表現でも用いられます。

ちなみに、ひらがなの「い」は「以」という漢字の草書体が語源です。

「以って」のビジネス上での使い方

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「以って」という言葉はやや古風で堅いニュアンスがあります。そのため日常会話ではあまり使われませんが、逆にビジネス文書やあらたまった席でのスピーチなどでは現在でもよく使われる言葉になっています。

「以って」の用例でビジネスシーン特有と言える使い方が「以ってしても」というフレーズ。これは「~であったとしても」「~を用いたとしても」という意味をあらわす言葉で、以下の例文のように後半には否定的な意味の文章が続きます。

「以ってしても」の例文

・社長の経営手腕を以ってしても、コロナ禍での赤字転落は避けようがなかった。

・ノーベル賞を受賞した経済学者の頭脳を以ってしても、今回の不況を予測することは不可能だった。

ビジネスシーンで「以って」を使う場合に注意したいのは、「~をもちまして」という表現です。たとえばイベントの終わりに司会者が「以上をもちまして、本日のイベントは終了とさせていただきます」と述べる用法が近年ではあたりまえになっています。

しかしながら「以って」は動詞ではありません。そのため「もちまして」という丁寧表現はできません。「以上をもちまして」という表現は、現在では定型文に近い形で多用されていますが、文法的には間違った用法ということになります。

「以って」の類義語と例文

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「以って」と同じ意味の類義語としては、「駆使して」「用いて」「によって」「利用して」などをあげることができます。

「駆使して」の例文

スマホを盗まれた被害者が位置特定アプリを駆使して犯人の居場所を特定した。

「によって」の例文

「もって」の漢字表記を「以って」とするのが良いか悪いかは人によって意見の相違がある。

「利用して」の例文

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「以って」の英語表現


「以って」は使い方によって意味やニュアンスが変わる言葉です。英語に翻訳する場合は、細かいニュアンスが伝えにくい点はありますが、全体としての意味を考慮するなら以下のような表現で翻訳できます。

まず「~を用いて」という意味では「by」「with」など。「~理由(原因)で」の意味では「because of」「due to」「cause」など。「(今日)から」の意味では「from」をあげることができます。

「due to」を使った例文

Due to the fact that you failed to pay us on time, you have to pay a late fee within 24 hours.

未払い料金の発生を以て24時間以内に延滞料金をお支払いいただきます。

「with」を使った例文

I love to draw whenever I have time just with a ballpoint pen and a piece of paper.

時間があれば紙とボールペンだけで絵を描くのが好きです。

まとめ この記事のおさらい

  • 「以って」は区切りや期限、手段や方法などを意味する言葉です。
  • 「以って」は本来、「以て」が正しい表記です。
  • 「以って」の類義語には「駆使して」「用いて」「によって」などがあります。
  • 「以って」の英語表現は「by」「with」「because of」「due to」などがあります。