この記事では、「墨守」の、類義語・対義語、表現について考察します。

「墨守」は馴染みの薄い言葉で、日常生活で目にすることはほとんどありませんが、文章では見かける表現です。

「墨守」と聞いて戸惑わないために、この記事を読んで「墨守」の正しい意味や使い方を学んでください。

「墨守」の読み方と意味

「墨守」とは、「昔からのしきたりや自説を守って変えないこと」の意味で、「ぼくしゅ」と読みます。

「墨守」の「墨」は、中国の春秋戦国時代の思想家「墨子(ぼくし)」のことで、墨子がある作戦で城を守ったことが語源になっています。

墨守の使い方

「墨守」はしきたりや自説に固執するというネガティブな意味に使われることが多いですが、「しっかりと守る」というポジティブな意味でも使われます。例えば、日本の伝統文化は、昔からのしきたりや手法を墨守してきました。

墨守してきたからこそ、今も伝統文化に触れることができるのです。しかし、世の中には古くからの習慣や方法に固執することが、企業や団体の発展を阻害していることも少なくありません。

つまり、「墨守」は、その環境を善とするか悪とするかの解釈によって意味が変わってきます。固執することが良いと思えば、「墨守」は美徳になり、古びた習慣でしかないと思えば「墨守」は、発展を邪魔する足枷にもなるのです。

「墨守」を使う時は、どちらの意味で使うのかを明確にしましょう。

墨守の語源

「墨守」の語源は、思想家の墨子のある作戦での勝利に由来しています。

「非攻(ひこう)」という平和思想の持ち主であった墨子は、楚の王が宋を攻撃するという情報を得て、楚の王に攻撃をやめさせようと単身楚に赴きました。

楚では、公輸盤(こうゆばん)という工匠が、巨大なはしご車のような雲梯(うんてい)を作り、戦の準備を進めていたのです。墨子は、楚の王に机上での攻防戦を提案し、もし墨子が勝てば楚への攻撃は中止することを約束させました。

革帯を城壁、木札を武器に見立てて机上での戦いは開始されました。公輸盤は気を見て攻撃をしかけますが、ことごとく墨子に防御されてしまいます。9回もの攻撃に墨子は全て勝利をおさめたのです。

敗れた公輸盤が、「今は私の負けですが、私には貴方に勝つ策はあります。今は言えませんが」というと、墨子は「私もどうすればあなたに勝てるか策はありますが、言わないでおきましょう」と言ったのです。

楚の王は、墨子にその意味を尋ねました。

墨子は、「公輸盤の策は、私を殺すことです。私の策は、私がいなくても300人の弟子がすでに宋の守りについていることです」と言いました。その言葉を聞いて楚の王は宋への攻撃を中止したのです。

このことから「墨守」という言葉が生まれました。

「墨守」の例文

「墨守」にはネガティブな意味合いで使われる場合とポジティブな意味合いで使われる場合があります。

ネガティブな意味合いの例文

・どんなに旧習を墨守しようとしても、時代には逆らえません。
・相変わらず同じ手法を墨守している会社に未来はありません。
・彼があれほど自分の説を墨守するのか、私にはその理由がわかりません。

ポジティブな意味合いの例文

・日本古来の建築様式を墨守してきたからこそ、大きな震災にも耐えられたのです。
・辛抱強い兵士たちのおかげで、要塞を墨守できました。
・先祖代々の家訓を墨守してきましたから、今の成功があるのです。

また、墨守を使った四字熟語に「旧套墨守(きゅうとうぼくしゅ)」があります。「旧套」とは古くからの習慣やしきたりのことです。

例文

・角界の旧套墨守のしきたりに、さまざまな批判が巻き起こっています。
・伝統文化が失われつつある今、旧套墨守に価値があるのです。
・旧套墨守な体制だから、国民が政治離れしていくのです。

「墨守」の類語後と例文

「墨守」の類語には、「固持」「堅持」「固守」「固執」「拘泥」「保守的」などがあります。

固持(こじ)
意見や信念などをしっかり持って変えないこと。例文
・彼は自説を固持して、絶対に譲りません。
堅持(けんじ)
自分の考えや態度をかたく守って、他と妥協しないこと。例文
・いつまでも批判的な態度を顕示していては、出世に影響しますよ。
固守(こしゅ)
あくまでも守り通すこと。例文
・厳格なしきたりを固守してきたからこそ、伝統文化が守られているのです。
固執(こしつ)
自分の考えや意見をかたく守り、変えないこと。例文
・異常なまでに固執したからこそ、偉大なる発見につながったのです。
拘泥(こうでい)
必要以上に気にすること。こだわること。例文
・彼女は自分の意見に拘泥して、人の意見には耳を貸しません。
保守的(ほしゅてき)
考え方や行動、習慣などを変えない傾向にあること。例文
・最近は、保守的な考えの若者が多くなっているようです。

また、「旧套墨守」の四字熟語の類語としては、「旧態依然」「保守退嬰」があります。

旧態依然(きゅうたいいぜん)
昔のままで変化や進歩がないこと。例文
・そのような旧態依然とした考え方では、会社の発展は見込めません。
保守退嬰(ほしゅたいえい)
昔からの習慣や制度に執着して、新しい物事を受け入れようとしないこと。例文
・経営陣がいつまでも保守退嬰のままでは、時代の波に乗り遅れてしまいます。

「墨守」の対義語と例文

「墨守」の明確な対義語はありませんが、類語の対義語として「没却」「譲歩」「妥協」「進歩的」などが考えられます。

没却(ぼっきゃく)
捨て去って無視してしまうこと。例文
・日本の精神文化が没却されてしまうかと危惧しています。
譲歩(じょうほ)
自分の考えや主義をまげて、他人の意見に従うこと。例文
自分では譲歩したつもりでしたが、実際は周りの人が譲歩したようです。
妥協(だきょう)
対立していた一方、もしくは両方が譲ることで意見をまとめること。例文
・今回の交渉では、安易な妥協はしたくありません。
進歩的(しんぽてき)
進歩しているさま。新しい考えや思想を持っていること。例文
・彼の進歩的な見方には、いつも感心されられます。

「墨守」の英語表現

「墨守」の英語表現では、「adhere」がありますが、かなり形式ばった表現なので、一般的には「固執する」意味での「cling」「keep」「stick」などを使います。

・He adhered to old customs.
(彼は古くからの習慣を墨守しました。)・Country-people cling to old customs.
(田舎の人々は古い習慣を墨守しています。)・He was set on keeping the tradition.
(彼はあくまでも伝統を墨守しようとしました。)

・He sticks to his own opinion.
(彼は自分の意見を墨守しています。)

まとめ この記事のおさらい

  • 「墨守(ぼくしゅ)」とは、「昔からのしきたりや自説を守って変えないこと」の意味です。
  • 中国の思想家「墨子(ぼくし)」が、机上の戦いで敵の攻撃を9回防いだことが由来。
  • 「墨守」には、ネガティブな意味で使われる場合とポジティブな意味で使われます。
  • 四字熟語としては「旧套墨守(きゅうとうぼくしゅ)」があります。
  • 「墨守」の類語は、「固持」「堅持」「固守」「固執」「拘泥」「保守的」、四字熟語では「旧態依然」「保守退嬰」。
  • 「墨守」の対義語としては「没却」「譲歩」「妥協」「進歩的」などが考えられます。
  • 「墨守」の英語表現は、「adhere」「cling」「keep」「stick」などです。