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「おっしゃられる」は「言う」の尊敬語として使われていますが、文法的には不適切な二重敬語とされています。
一方で、二重敬語でも習慣的に定着した言葉は許容すべきとの意見も多く、「おっしゃられる」も誤用とされながらも慣習として定着しています。
この記事では、「おっしゃられる」の誤用例と正しい表現をはじめ、類義語や二重敬語の正しい使用法についても解説しています。
「おっしゃられる」はマナー違反?
敬語の「おっしゃられる」は尊敬語の「おっしゃる」と、尊敬の助動詞「~られる」を合わせた二重敬語です。
二重敬語とは、ひとつの言葉に同じ種類の敬語を二重に使うことで、一般にはマナー違反とされています。
なぜ「おっしゃられる」はマナー違反とされながらも社会に定着しているのでしょうか。
敬語は長く使われるうちに敬意が徐々に失われる傾向があります。
これを「敬意逓減(けいいていげん)の法則」といいます。
たとえば「お前」や「貴様」はもともと敬語の代名詞でしたが歳月とともに敬意を失い、こんにちでは逆に人を見下した無礼な呼称に変化しています。
「おっしゃる」は現在でも模範的な敬語ではありますが、江戸時代から使われてきた言葉だけに、敬意低減の法則で「敬意が足りない」と感じる人が増えたのかもしれません。
そこで二重敬語の「おっしゃられる」が最上位の尊敬表現として浸透したものと考えられます。
文化庁が2007年に発表した文化審議会の『敬語の指針』でも「二重敬語は一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある」と使用の可否については含みを持たせています。
逆にいえば「二重敬語は一般に適切ではないとされている」ことは文化庁も認めているわけで、「おっしゃられる」も社会に定着しているとはいえ、現状では多くの人が適切ではないと判断していることを考慮しなければなりません。
現状では二重敬語の「おっしゃられる」はマナー違反です。
「おっしゃる」と言い換えることで正しい敬語になります。
「おっしゃる」と「おっしゃられる」の違い
「おっしゃる」は、動詞「言う」の尊敬語です。
「おっしゃられる」は前述したように「おっしゃる」に「られる」を加えた二重敬語です。
敬語の「おっしゃられる」はマナー違反ですが、「(相手に)言われる」という受け身の敬語での「おっしゃられる」は二重敬語ではなく適切な敬語表現になります。
たとえば「そんな無茶を言われても困ります」という文章の「言われても」を敬語で「そんな無茶をおっしゃられても困ります」という表現は間違いではありません。
また「言える(言うことができる)」の尊敬語として「よくもまあ、そんなことがおっしゃられますね」という使い方も可能です。
「おっしゃられる」の一般的な誤用例
「おっしゃられる」が誤用になるのは以下の例文のように「言う」の敬語として用いたケースです。
- 先ほど専務がおっしゃられた中で「時間外労働を削減すべき」というご指摘に関しましては、私も大いに賛同しております。
- 部長がおっしゃられたように本契約書に記載された条項以外にも法律上の一般条項がございます。
二重敬語に気をつけよう!正しい使用法
二重敬語は一般には不適切な表現とされていますが、「おっしゃられる」や「お召し上がりになる」のように広く定着している言葉もあります。
「おっしゃられる」は「おっしゃる」、「お召し上がりになる」は「召し上がる」が正しい使用法です。
ただし現実には「おっしゃられる」も「お召し上がりになる」も気にならない、という人も少なくありません。
一方で、文化庁が2007年に文化審議会答申として示した「敬語の指針」では、敬語を使うときの基本的な考え方として「敬語は過剰でなく適度に使う」と記載されています。
二重敬語の「おっしゃられる」に慣れてしまった人には物足りないかもしれませんが、正しい敬語の「おっしゃる」や「召し上がる」には簡潔な美しさがあります。
敬語は丁寧なほどよいわけではありません。
「おっしゃられる」や「お召し上がりになる」のように敬語を二重に連ねるのは正しい使用法ではないと考えた方がよいでしょう。
ビジネスシーンでの「おっしゃられる」の使用
「おっしゃられる」は不適切な二重敬語の代表格ですが、現在では国会の質疑や大企業の取締役会でもふつうに使われるほど社会に浸透しており、いまさら禁止することは不可能に近い状況です。
しかしながらビジネスシーンでは、以下に示す理由から「おっしゃられる」の使用は避けたほうが無難です。
「おっしゃられる」を避けるべき理由
「おっしゃられる」を避けるべき理由のひとつは、ビジネスでの言葉遣いは企業の命運を左右するほど厳格にチェックされることがあるからです。
敬語のマナーに厳格な相手に対して二重敬語を使用すると、「こいつ、敬語もまともに使えない浅学非才の無礼者か」と思われてしまうかもしれません。
複数のライバル企業と受注を競い合うような場面では、些細な敬語のミスひとつで社会人としての信頼を失い、ライバルに契約を奪われてしまうことも多々あります。
ビジネスの現場では小さなミスも許されません。敬語は基本に忠実で正しい使い方をマスターすることが重要です。
ビジネスシーンで「おっしゃられる」を避けるべき理由のふたつめは、敬語表現が回りくどくなることです。
敬語は重ねれば重ねるほど敬意が高まる、というわけではありません。
過剰な敬語は相手と自分との間に距離を置いてしまうだけでなく、逆に敬遠しているかのような印象を与えることにもつながります。
「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」ともいうように、言葉使いが丁寧すぎるとかえって無礼にあたることがあります。
ビジネスでは会話や文章を問わず用件は簡潔明瞭に正しく伝えることが重要です。
ビジネスでの「おっしゃる」の正しい使い方
「おっしゃる」は「目上の人が言う」という行為をあらわす敬語です。
ビジネスシーンでは上司や先輩、顧客や取引先の担当者、初対面の人などが「言う」という行為を尊敬語で「おっしゃる」と表現します。
「おっしゃる」は主語が示す人に敬意を示す敬語ですので、自分に対しては使えません。
またビジネスで顧客や取引先の人と面談する際は、相手を立てるために自社の社員の行為については尊敬語を使わず、謙譲語を使うのがマナーです。
たとえ自分が勤める会社の社長でも、顧客の前では「(自社の)社長がおっしゃったように」とは言いません。
この場合は謙譲語で「先ほど社長が申しましたように」というのが正しい使い方です。
類似の敬語表現とその使用例
「言う」の尊敬語は「おっしゃる」のほかに「言われる」「述べられる」「話される」などがあります。
「言われる」と「話される」は、それぞれ「言う」「話す」の受け身と同形ですので、使用する際は受け身と敬語を混同されないように格助詞の「が」「を」 「に」などを適切に使い分けることが重要です。
次に「述べられる」は「述べる」の未然形に動詞「述べる」の未然形に、尊敬の助動詞「~られる」が付いた敬語です。
「述べる」は人が意見や考えを口にすることをあらわす動詞です。
普通の会話や独り言などを「述べる」とは言いませんので注意してください。
- 社長は今年度の給与増額は難しいが夏のボーナスの増額については前向きに検討中だと話された。
- 今日の講義の中で先生は相手の立場の違いに合わせた敬語の使い分けについて述べられた。