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デモや立てこもり事件の現場などで盾を構えて警備にあたる機動隊の姿は、ニュースなどで誰でも一度は目にしたことがあるでしょう。
この記事では、その「機動隊」について、仕事内容や種類、機動隊員になるためにはどうしたらよいのかを中心に解説します。
機動隊とは
機動隊は警察の中の部隊です。自衛隊のように警察とは別の組織を想像している人も多いと思いますが、各自治体の警察に設置されている部隊です。警察の警備実施の中核として治安警備、災害警備、雑踏警備などにあたる専門の組織が機動隊です。
機動隊は常に集団で行動します。集団だからこその機動力、警備力を持っていることが特徴です。警察官ですので、デモなどで危険行為や法律に違反する行為をした人を検挙することができます。
機動隊は人命救助やさまざまな警備に対応するための特殊な車両や装備を有しています。装備としては防水、難燃加工のされた特殊な制服やヘルメット、盾、催涙ガスなどがあります。警備車両も人員輸送車、遊撃放水車、爆発物処理車、現場指揮官車など普段の生活ではなかなか見かけない特殊車両を多数有しています。
機動隊の仕事内容
機動隊の主な仕事内容は大きく4つあります。
■治安警備
大規模な犯罪や暴動、テロなどを未然に防ぎ、それらが発生してしまったときには鎮圧に向けて機動隊が活躍します。
歴史を振り返ると、1960年代に多発した学園紛争ではデモ行進や立てこもり事件の鎮圧に活躍しています。1969年に起きた東大安田講堂事件の学生と機動隊のもみ合いは歴史的にも語られるものとなっています。1972年のあさま山荘事件も機動隊の活躍が広く知られる事件です。今でも報道番組などで目にする機会があるのではないでしょうか。
機動隊にはテロなどに迅速的確に対処するため、専門的な技能や装備を有する機能別部隊が設置されています。
<銃器対策部隊>
銃器等を使用した事案への対処を主たる任務とし、重大事案発生時には、特殊部隊(SAT)と連携して対応に当たります。また、全国の原子力関連施設の警戒警備も行っています。
サブマシンガン、ライフル銃、防弾車両などを装備した部隊です。
<爆発物処理班>
爆発物を使用した事案の発生に際し、爆発物の処理、被害の発生防止、証拠保全等を行います。
X線透視装置、防護服、爆発物処理ロボットなどを装備しています。
<NBCテロ対応専門部隊>
NBCテロ(核(Nuclear)、生物(Biologica)、化学(Chemical)物質を使用したテロの総称)が発生した場合の原因物質の検知・除去、救出救助、避難誘導等を行います。
NBCテロ対策車、化学防護服、各種検知器などを装備した部隊です。
■災害警備
地震、台風などの災害発生時には、人命救助や地域の治安の維持に活躍します。機動隊には災害の現場で活躍するといった機能別部隊が設置されています。
<レスキュー部隊>
救出救助に係る技能や装備を有し、災害や事故の発生時に出動して活動を実施します。
警視庁では日頃の訓練の成果を競い合う場として、機動隊対抗レスキュー競技大会を実施しています。
<レンジャー部隊>
高層ビルや断崖等の現場において、ロープ技能等を駆使して各種活動を実施します。
<水難救助部隊>
潜水技能をいかし、災害や水難事故等における救出救助、捜索活動等を実施します。
■雑踏警備
スポーツの国際試合が行われる際や大きなお祭りやイベントなど、大勢の人が集まる場において、人々の安全を守り暴動を抑止するために機動隊が警備にあたります。
近年、注目を浴びた雑踏警備では、2013年にサッカーワールドカップに日本が出場することが決まった夜、渋谷駅前のスクランブル交差点に集まった人々に向けて、現場指揮官車の上から巧みな言葉で呼び掛けるDJポリスが印象的です。それまでにないその場に集まる人々の心理に呼び掛けたアナウンスで混乱や事故を防いだとして、担当した機動隊員は警視総監賞を受賞しています。また、雑踏警備では女性隊員も近年目覚ましい活躍を見せています。
■警護警備
国内外の要人が参加するイベントや式典などで、現地や移動中に用心の身の回りを警護するのが警護警備の仕事です。要人が来日した際には昼夜を問わず警護にあたります。
警視庁警備部警護課では、要人警護に専従するSP(セキュリティポリス)が内閣総理大臣や国賓の身辺警護を行っています。SPの選抜には、柔道か剣道いずれかで2段以上、射撃の技術に優れていることや英会話力など、厳しい基準があります。
機動隊の種類
各都道府県警察には、常設部隊として機動隊が設置されているほか、第二機動隊、管区機動隊が設置されています。
本機機動隊(第一機動隊)
各都道府県警察に設置され、集団警備力によって有事即応体制を保持する常設部隊です。約8,000人がこの職に就いています。
特別機動隊(第二機動隊)
特別機動隊は、臨時で設置される機動隊のことで、第二機動隊ともいわれます。警察署勤務員等から指定され、機動隊を補完して警備実施に当たる部隊です。
管区機動隊
平常時には警察署等で勤務しながら、機動隊に準じた形で警備訓練を行い、大規模警備等においては道府県を越えて広域運用される部隊です。約4,000人がこの職に就いています。
各自治体の警察庁の機動隊は、基本的にこのような部隊構成ですが、警視庁(東京都警察の本部)には第一機動隊から第九機動隊、および特科車両隊が設置されています。
機動隊員になるには
まずは警察官採用試験に合格して「警察官」を目指す
機動隊は警察の組織で、機動隊員も警察官の一人です。従って、機動隊員になるにはまず「警察官採用試験」に合格しなければなりません。
警察官採用試験に合格した後は、全寮制の警察学校で6か月もしくは10か月の訓練を受けます。警察学校を卒業するといよいよ警察官としての実務に就きますが、初めは交番勤務となるのが一般的です。
その後、本人の希望や適性に応じて機動隊へ配属
新任警察官は交番勤務から始めるのが一般的ですが、業務に就きながら、適性があると認められた人や志願をして認められた人が、機動隊に異動になるというのが基本的な道です。
警察官採用試験を受験するには、身長・体重、視力、色覚などの身体条件を満たしていることが必要ですが、機動隊員になるには、柔道・剣道の腕前、射撃の技術、逮捕術などで、ほかより秀でた技術を持っていることを求められます。また、基本的には体力に優れた若手の警察官が機動隊員として採用されるケースが多いようです。
厳しい訓練に耐えられるだけの体力も必要
機動隊は有事に備えて常に訓練を行っています。レンジャー訓練や潜水訓練など、機動隊ならではの特殊訓練もあります。厳しい訓練に耐えうる体力を有していることは機動隊員としての基本です。また、日頃から病気をしないように自己管理を怠らないことも大事です。
機動隊は、災害やデモの現場など危険で厳しい環境での業務がメインになります。いつ何が起こるかわからない現場で的確に行動することが求められる仕事ですから、その時々の環境に適応する能力、命令を的確に理解して実行する力、冷静な判断力も必要とされます。
機動隊の年収
総務省発表の「平成30年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、機動隊員だけの統計はないのですが、警察職の平均給与月額は456,228円でした。これに年2回の賞与(およそ4.45月分)がプラスされたものが年収となります。
このデータは平均年齢が38.4歳ですので、若くして機動隊に配置された警察官はここまでの給料になるには何年かの期間を要するでしょう。
参考までに、警視庁の採用情報を見ると、初任給は次のようになっています。
Ⅰ類採用者 月給25万3,300円
Ⅲ類採用者 月給21万3,900円
機動隊の勤務体系と休日
機動隊の勤務体系は、基本的には警察官と同じく、当番、非番、休日を繰り返す3交代勤務です。急な有事の際にはこれに関わらず出動を命じられることもあります。
機動隊の将来性
機動隊は警察の中の部隊で隊員は警察官ですので、公務員の立場です。公務員は基本的に倒産やリストラの危機がありませんので、安定して働き続けることができる職業です。
機動隊が出動しなければならない災害や事件はないに越したことはありませんが、今後の日本や世界の状況を考えると、機動隊の活躍が求められる場面は増えていくことが予想されます。
機動隊についてのまとめ
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