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ビジネスシーンで時々「斟酌」という言葉が使われることがありますが、その意味を明確に把握しているか否かで、ビジネスの流れに影響を及ぼすことがあります。
ですが、ほとんどの人はなんとなく雰囲気で捉えて、流してしまっているかもしれません。
また、似たような意味の言葉で「忖度」がありますが、明確な違いについての説明が難しい言葉です。
この記事では「斟酌」の正しい意味や「忖度」との違い、類義語、対義語や英語表現についてをご紹介します。
言葉の正しい意味を知れば、相手の要望にも間違えずに対応ができるようになるでしょう。
斟酌の読み方と意味、使い方
「斟酌」は「しんしゃく」と読みます。
意味は、以下になります。
- 他人の心情や事情をくみとること
- あれこれ照合して、ほどよくすること
- 遠慮すること
(角川 国語辞典)
「斟酌」とは、相手の気持ちだけでなく、その背景まで推し量り、それらを考え合わせた上でほどよくすることという意味です。
「ほどよくする」とは良い塩梅に調整するということで、条件や諸事情などを加味した上で、皆が納得のいく「良い加減」にするよう物事を運ぶことです。
また、「遠慮すること」とあることから、自分の利益よりも先方の心情を汲んで相手を立てる印象も受けます。
「斟酌」の「斟」は、酒を酌み交わすという意味や、事情を汲み取る、相手を思いやるという意味があります。
また、「斟酌」の「酌」はお酒を飲む時の「酌をする」という字で、どちらもお酒を酌み交わすという意味です。
このことから「斟酌」とは、腹を割ってお酒を酌み交わし、相手を思いやることが伺えます。
ビジネスでは、接待としてよくお酒の席が用意されますが、その理由はお酒が入ると腹を割って建前以外のことも話せるからでしょう。
「斟酌」とは、お互いに気を許して相手のことをよく知り、本音の部分を思いやって物事を進めるという意味なのです。
斟酌と忖度との違い
「斟酌」は、先に挙げたように、相手やその背景を推し量って適当に対処することです。
一方「忖度」は、他人の気持ちを推し量るという意味です。
推察し推量することであり、考え合わせて物事を進めたり調整したりするのとはまた異なります。
- 斟酌:相手やその背景を推し量って適当に対処すること
- 忖度:他人の気持ちを推し量ること
つまり、斟酌は物事の行方までを含むのに対し、忖度は推し量ることにとどまります。
ただし、とどまるといっても、日本語特有の曖昧な余白を含んだ表現として使われることがままあります。
昨今政治界隈で注目となり、2017年の流行語大賞に選ばれた「忖度」も同様のニュアンスです。
このとき流行した「忖度」は、空気を読んだ上に物事を運ぶことまで含まれるような意味合いに捉えられて使われていましたが、正しくは「推測する」範疇を出ないのです。
もし、自分の心情や事情は控え、相手の気持を推し量って物事を調整するという意味なら、「斟酌」のほうが相応しい表現となります。
斟酌のビジネス上での使い方
「斟酌」はビジネスの場では法律が絡んだときによく使われます。
「斟酌」を含む言葉では「斟酌事由」というものがあり、たとえば交通事故などでは加害者の精神面や経済面を考慮するという意味で使用される言葉で、「刑罰を決める際、判断材料として加害者の背景や心情を汲み取ることができる」という意味です。
ビジネスの場ではあまり使われることはありませんが、もし出てきたなら「先方の諸事情をくみ取った上で、判断や決定などをする」ということになります。
また、「斟酌折衷」という四字熟語があり、覚えておくと役に立つ言葉です。
斟酌して中間を取るという意味で、条件や事情、心情などを考慮に入れつつ中立に立つなどの意味で使われることが多い四字熟語です。
斟酌の類義語と例文
斟酌の類義語としては、以下のものがあります。
- 参酌・・・他のものを参考にして長所を取り入れること
- 酌量・・・事情をくみ取って刑罰や処置などを軽減すること
- 考慮・・・そのことをよく考えてみること
- 顧慮・・・あることを考慮に入れて心遣いをすること。気遣うこと
- 勘考・・・考えること。思案
類義語を使った実際の例文は下記となります。
第三者の意見を参酌して、適切な対処をする。
被告人の切迫した精神状態は、情状酌量の余地がある。
設計する際は、ライフスタイルをよく考慮した上で行う。
万が一、火災が発生することも顧慮して任務につく。
お年寄りや小さな子どもなどが食べることも勘考したメニュー作り
それぞれ意味が重なる部分もありますが、少しずつニュアンスや使えるシチュエーションが異なります。
上記にて掲載している類義語は、「斟酌」と同等に使うと意味合いが異なってしまうことがあるので注意が必要です。
斟酌の対義語と例文
では、「斟酌」の対義語とその例文についてもご紹介します。
明確な「斟酌」の対義語はありませんが、似たような意味としては以下のようなものがあげられます。
- 思慮に欠ける
- 無遠慮
- 融通がきかない
- 独善的
- なおざり
どれも、先方の事情や気持ちは一切鑑みず、額面通りに執り行うといった意味です。これらの言葉を使うと、以下のような例文になります。
性別も年齢もまるで違うのに、同じ作業を割り当てるのは思慮に欠ける。
自分の要求ばかりを無遠慮にアピールする。
お互いにとって有益なのに、決まりを優先するとは融通がきかない人だ。
有無を言わさず決定するのは独善的だ。
誠意を尽くしたのに、なおざりな対応をされた。
「思慮に欠ける」や「無遠慮」はそのままの意味ですが、「融通がきかない」は柔軟性がないという意味で、「独善的」は「相手の言うことを聞かずに1人で決めてしまうことです。
最後の「なおざり」は、深く心に留めず、おろそかにするという意味で、「斟酌」の対義語としては一番近い表現といえます。
斟酌の英語表現
「斟酌」を英語で表現する場合、「consideration」になります。
直訳は、考慮・考察といった意味で、使い方は以下のとおりです。
- in consideration of〜
「He was pardoned in consideration of his youth.」
(彼はその若さを考慮され、無罪となった)
まとめ この記事のおさらい
「斟酌」はビジネスシーンでの利用は少ない単語ですが、「忖度」との違いなどを知っておくと、相手の意図を汲み取って正しい対応が可能です。
・「斟酌」とは、相手の事情や気持ちをくみ取り、思いやった上でほどよくするという意味
・「忖度」は「斟酌」と似ているが、その後の経過や行方までを含む「斟酌」と異なり、「忖度」は相手の気持を推し量ることにとどまる
・ビジネス上では法律関連で「斟酌事由」と使う場合や、「斟酌折衷」という四字熟語などがある
・英語では「consideration」と表現する