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この記事では「鑑識」について解説します。
鑑識は、日常生活ではほとんど接することがない特殊な職業です。
刑事ドラマでは必ずといっていいほど登場しますが、改めて考えてみると、鑑識の仕事にはどんなものがあるのか、鑑識にはどうすればなれるのかなど、詳しいことを知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事を通じて、鑑識の基本的な仕事や鑑識の仕事に就くための道のり、気になる年収や将来性などを知ることができます。
将来的に鑑識の仕事に就きたいと考ている人にはもちろんのこと、そうでない人にも、社会人としての見聞を広めるのに役立てていただけるでしょう。
鑑識とは
鑑識(かんしき)は、よく調べて物の真偽や良否などを判断することを意味する言葉ですが、犯罪や事故の捜査に関わるシーンでの鑑識は、指紋や血痕、筆跡などを調べることを指します。
現場に残された様々なものから、事件解決への手がかりを掴むのです。
犯罪や事故の捜査では、指紋や血痕などの調査そのものを指して「鑑識」ということもありますし、鑑識を行う部署、またその部署に所属して鑑識を行う人のことも「鑑識」と呼びます。
この記事では、鑑識を行う人ついての解説をしていきます。単純に「鑑識」と呼ばれるほか、「鑑識官」「鑑識課員」「鑑識さん」などの呼び名もあるようです。
鑑識の仕事内容
鑑識の仕事は、大まかにいうと犯行現場や事故現場で、犯人捜し、事件解決につながりそうな証拠を集めて調べることです。
犯罪や事故の件場では、目でパッと見て判断できるもの以外にも、様々なものが事件解決への糸口となります。まずはそれらを現場で見逃すことなく採取するのが大事な仕事です。
現場における鑑識の業務は主に次のようなものです。
- 身元が判明していない遺体の身元を確認するための照会業務
- 現場に残された遺留品などから犯人や関係者を探し出す警察犬の活動
- 事件現場での指紋採取、足跡採取、DNA鑑定につながる血液、体毛などの採取
犯人へつながる手がかりとして真っ先に思い浮かぶのが指紋でしょう。
その他にも、皮膚や髪の毛、血液、唾液、書かれた文字、足跡などからも個人を特定することができます。
また、交通事故であれば、その場に残されたガラス片やプラスチック片、タイヤ跡や塗装の跡なども事件解決への大きな手がかりとなります。
鑑識は、各都道府県警察本部の刑事部の中に鑑識課として設置されているほか、一般の警察署の刑事課の中に鑑識係として置かれています(都道府県によって組織編成は異なります)。
鑑識というと、事件現場で指紋や凶器の欠片など細かいものを収集しているイメージがまず浮かびますが、実はその他の業務もあります。
警察犬の活動や、犯人の似顔絵、モンタージュ写真の作成も鑑識が行う仕事のひとつです。
本部の鑑識課は専門分野ごとに各係に分かれています。
東京都の警察本部である警視庁を例にとると、身元不明者を調査する鑑識管理係、DNA採取や現場図面の作成を担当する現場鑑識、検視を担当する検視係、警察犬の活動を行なう警察犬係、現場の写真撮影を行う現場写真係などに分かれて作業を行っています。
現場で採取され持ち帰られた資料は鑑定が行われます。現場では現場鑑識が資料の採取を行い、指紋や足跡の鑑定業務は警察事務職員が担当するというように、一連の鑑識の仕事を分業で行われるのが通常です。
指紋などの資料を採取する技術は、鑑識課に所属していない警察官でも身につけています。警察官の資格として鑑識技能検定というものがあり、初級は警察学校時代に取得しているものなのです。
本部のように大がかりな組織となっていない所轄の警察署では、指紋や足跡など基本的な資料採取は、現場に出た刑事課の警察官が行うことも少なくありません。
「鑑識」と「科捜研」の違い
現場で採取した資料の分析を担当する部署としては、鑑識のほかに科学捜査研究所があります。科学捜査研究所は、俗に「科捜研(かそうけん)」と呼ばれます。こちらもテレビドラマなどで何度か耳にしたことがある人が多いでしょう。
鑑識と科捜研はどちらも事件解決の手かがりとなる資料の調査を行います。それではこの2つの部署はなにが違うのでしょうか。
まず、鑑定内容が違います。
鑑識が行うのは、指紋の照合や足跡の調査などです。
採取した指紋をデータベースと照らし合わせて、過去の犯罪者の中に同一の指紋を持った人がいないかを調べたり、足跡から一致する靴を見つけたりするのは、鑑識が担当している作業です。
鑑識が採取した資料を高度な技術を用いて科学的に分析するのが科捜研です。鑑定の代表格であるDNA鑑定も科捜研が担当しています。
東京都を例にとると、警視庁の科捜研は次の科に分かれています。
- 法医科
血液、唾液などの退役、骨、歯、髪の毛などからDNAを鑑定します。 - 物理科
交通事故や爆発事故などの原因究明や車両や弾丸などの鑑定を行います。 - 文書鑑定科
筆跡の鑑定や偽造文書の鑑定、ポリグラフ検査などを行います。 - 第一化学科
火薬、爆発物などを鑑定します。 - 第二化学科
覚醒剤などの違法薬物の調査をします。
鑑識と科捜研は採用ルートも異なります。
鑑識は警察官として刑事部に属しています。採用ルートは警察官採用試験を受けて警察官になった人の中から、鑑識として任命される形です。
一方で科捜研は、科捜研で働く専門職を募集する形がとられています。警察官採用試験とは別に、各都道府県で科捜研職員の採用試験が実施されます。
科捜研で働く技術者の採用は毎年必ずあるというわけではなく、募集も若干名のため、競争率が高くなっているようです。
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鑑識になるには
鑑識になるにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
各都道府県が実施する警察官採用試験に合格する
鑑識は、各都道府県警察本部の刑事部もしくは所轄の警察署の鑑識係に所属する警察官です。したがって、鑑識になるためには、まず警察官採用試験に合格しなければなりません。
警察官採用試験は各都道府県で実施されています。高卒からでも警察官への道は可能です。
採用試験に合格した後は警察学校に入校して教育をうけます。警察学校を卒業してようやく警察官としての第一歩が始まるわけです
警察官としてキャリアを積みながら「鑑識課」への異動を狙う
警察学校を卒業すると、はれて警察官として仕事をすることになるのですが、いきなり刑事や鑑識の仕事に就けることはまずありません。誰でもはじめは交番勤務が基本です。
交番勤務でキャリアを積んで刑事課に配属され、鑑識課に所属が決まってやっと鑑識として働くことができるのです。
そもそも刑事課は人気の高い部署ですから、刑事課に配属され鑑識の仕事に就けるまでには、ある程度の年月と努力が必要です。
常日ごろから上司に希望を伝えたり鑑識課の職員と交流を持つなど、コミュニケーション力も必要になってくるでしょう。
鑑識の年収
総務省発表の「令和2年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、鑑識だけの統計はないのですが、警察職の平均給与月額は 456,572円でした。これに年2回の賞与(およそ4.45月分)がプラスされたものが年収となります。
このデータは平均年齢が38.4歳ですので、ここまでの給料になるには何年かの期間を要するでしょう。
参考までに、警視庁の令和2年度の採用情報を見ると、初任給は次のようになっています。
- Ⅰ類採用者 月給25万3,300円
- Ⅲ類採用者 月給21万3,900円
鑑識の勤務体系と休日
基本の勤務時間は公務員に準じますので、平日の朝から夕方までとなります。加えて週に1度程度当直の日があります。機動鑑識に配属されると交代制の24時間体制を組んでいますので、夜勤の日も生じます。
とはいえ、鑑識は刑事部の中に所属しており事件はいつ起きるかわかりません。時間外の勤務も当然のことながら少なくありません。
急な呼び出しに対応しなくてはならないときや、時間になっても帰宅できない日があることは覚悟をしておく必要があるでしょう。
鑑識の将来性
鑑識の仕事は現場に残された資料から犯人逮捕につながる証拠を割り出し、スピーディーな事件解決に導くことです。
残念なことですが、この世から事件や犯罪がまったくなくなる日はこないでしょう。科学的な側面から事件解決をサポートする鑑識の仕事がなくなることはありません。
犯罪の手口が多様化している今、科学技術を駆使して事件解決への道のりを作る鑑識の仕事は大変重要な位置を占めています。科学技術は日々進歩しており、今後ますます鑑識の活躍が期待されるのではないでしょうか。
まとめ この記事のおさらい
- 鑑識の仕事は、犯行現場や事故現場で事件解決につながりそうな証拠を集めて鑑定することです。
- 鑑識は、各都道府県警察本部の刑事部の中に鑑識課として設置されています。一般の警察署の刑事課の中には鑑識係として置かれています。
- 資料の採取や鑑定のほか、警察犬の活動やモンタージュ写真作りも鑑識の担当です。
- 鑑識は主に指紋の称号や足跡の調査などを行い、科学捜査研究所(科捜研)はDNA鑑定などの高度な科学技術を用いた分析を行います。
- 科捜研の職員は警察官採用試験とは別に実施される専門職の試験で採用されます。
- 鑑識になるには、警察官採用試験に合格して交番などでキャリアを積んだ後に刑事部の鑑識課に配属される必要があります。