ビジネスメールや公式文書を作成する際、「本日を以って(もって)終了いたします」という表現を目にしたことはないでしょうか。日常的によく使われる一方で、正しい意味や使い方を問われると自信を持って答えられない方も少なくありません。本記事では、「以って」の読み方・意味・語源から、「持って」との違い・類義語・英語表現まで、ビジネスシーンで即活用できる知識を体系的に解説します。
「以って」って、漢字で書くのか平仮名で書くのかも迷うし、そもそも「持って」との違いって何なんだろう…。
どちらも「もって」と読みますが、意味はまったく異なります。語源や用法のポイントを押さえると、正しく使い分けられるようになりますよ。
「以って」の読み方と基本的な意味
「以って」は「もって」と読む漢語表現で、ビジネス文書や改まった挨拶の場面で頻繁に登場します。日常会話ではあまり使われませんが、公式な文脈では文章に品格と格調を与える重要な表現です。
主な意味は大きく3つに分類できます。日時や出来事を区切る「区切りの用法」、手段・方法・理由を示す「手段の用法」、そして感情や状況を強める「強調の用法」です。それぞれの用例をしっかり確認しておきましょう。
- 【区切り】日時や出来事の境目を示す:「本日を以って閉店いたします」
- 【手段・理由】手段や原因を示す:「これを以って辞令とする」
- 【強調】感情や状況を強調する:「誠に以って遺憾でございます」
「以て」と「以って」、どちらが正しい表記?
本来の正字は「以て」です。これは漢文由来の表記をそのまま引き継いだ形です。一方、音便に合わせて「以って」と表記するスタイルも近年では広く普及しており、どちらも誤りとは言えません。
読みやすさを重視する実用的な文書では「以って」、伝統的な格調を重んじる文体では「以て」を使う傾向があります。どちらを選ぶかは文書のトーンや場面に合わせて判断するとよいでしょう。
公用文や法律文書では「以て」の表記が採用されることが多く、より格式を要求される場面では「以て」を意識するのが無難です。
「以って」と「持って」の違いを正しく理解する
「以って」と「持って」はどちらも「もって」と読みますが、意味はまったく異なります。同音異義語であるため混同しやすく、ビジネス文書での誤用が目立つ表現でもあります。語源はどちらも古語の「もちて」に由来していますが、現代日本語における用法は完全に分岐しています。
| 表記 | 読み | 主な意味 | 用例 |
|---|---|---|---|
| 以って | もって | 区切り・手段・理由・強調 | 「本日を以って終了いたします」 |
| 持って | もって | 物を持つ・所有・負担 | 「カバンを持って来てください」 |
「責任を持って対応します」は「持って(所有・負担)」の意味。「誠意を以って対応します」は「以って(手段・方法)」の意味です。文脈によって使い分けましょう。
「誠意を持って(×)」と書いてしまうと、「誠意という物体を持ち運ぶ」という意味になってしまいます。手段・方法を示す場面では必ず「以って(以て)」を使いましょう。
漢文由来の語源と日本語への定着
「以って」の語源は漢文にあります。漢文では「以(もちて)」という文字が「手段・方法を示す前置詞的役割」を担っており、「以…」の形で「~によって」「~を用いて」という意味を表します。日本が漢文を受容する過程で、この「以」が訓読みで「もって」と読まれるようになり、日本語の副詞・助詞的表現として定着しました。
さらに日本語化する過程で「そして」「それによって」という接続的な意味も付加され、現代では「区切り」「理由」「強調」など幅広い用法を持つ多機能な表現へと発展しています。
漢文の「以」は英語の前置詞「with」や「by」に近い働きをします。「以徳報怨(徳を以って怨みに報いる)」のように、手段・方法を明示する用法が起源です。
ビジネス文書における典型的な使い方
「以って」がビジネスシーンで使われる場面は大きく分けて4つのパターンがあります。それぞれの用法を具体的な文例とともに確認しましょう。
「本日を以って退任いたします」「今月末を以って閉店いたします」のように、日時や出来事を節目として区切る際に使います。ビジネスレターや社内通知で最もよく登場する用法です。
「これを以って正式な通知といたします」「書面を以って代えさせていただきます」のように、特定の物事を手段や根拠として示す際に使います。
「~を以ってしても」の形で、優れた能力や条件があっても困難であることを強調します。「社長の判断力を以ってしても、今回の問題は難しい」のように、否定的な結論の前段で使います。
「誠に以って遺憾でございます」「甚だ以って恐縮ですが」のように、感情や状況を強める副詞的な使い方です。より改まった文体で丁寧さや誠実さを表現したい場面に適します。
また、スピーチや会議の締めくくりに使われる「以上をもちまして~」という表現についても触れておきます。定型句として広く定着していますが、文法的には「以上をもって」が正確な表現とされています。公式文書よりも口語的な場面での使用に限定するのが無難です。
ビジネス文書での使用例まとめ
- 「本日を以って、当プロジェクトは完了いたしました。」
- 「誠意を以って、ご対応申し上げます。」
- 「これを以って、正式な辞令といたします。」
- 「優秀なスタッフを以ってしても、この工程の改善は難しい状況です。」
- 「以上を以って、本日の会議を終了いたします。」
「以って」の類義語と場面別の使い分け
「以って」はやや硬い表現であるため、文書の性格や相手との関係性によっては言い換えを検討することも大切です。類義語を状況に応じて使い分けることで、より自然で読みやすい文章になります。
| 類義語・言い換え | ニュアンス | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 駆使して | 能力や手段をうまく活用する | 「最新ツールを駆使して業務効率化を実現した」 |
| 用いて/によって | 手段・方法(やや中立的) | 「データを用いて市場分析を行う」 |
| 利用して | 積極的・実用的に使う | 「無料ツールを利用してコストを削減する」 |
| これにて | 区切り・終了(口語的) | 「これにて会議を終了いたします」 |
| ~を手段として | 手段を明示する(平易な表現) | 「メールを手段として情報共有を行う」 |
「以って」は格式を重視する公式文書・挨拶状・辞令に最適です。一方、社内向けの報告書やチャットなどカジュアルな場面では「用いて」「これにて」などの平易な表現に置き換えると読みやすくなります。
「以って」を英語に翻訳するときの表現
「以って」を英語に直訳することは難しく、文脈によって対応する英語表現が異なります。ビジネスメールや英文書類を作成する際は、用法に応じて適切な英語表現を選ぶことが重要です。
- 区切り・時点を示す場合
-
effective from(〜より有効)、as of(〜付けで)を使います。例:「as of today(本日を以って)」「effective from the end of this month(今月末を以って)」
- 手段・方法を示す場合
-
by(〜によって)、with(〜を使って)を使います。例:「by this letter(この書面を以って)」「with his leadership(彼のリーダーシップを以って)」
- 理由・原因を示す場合
-
due to(〜のために)、because of(〜の理由で)を使います。例:「Due to his leadership, the project succeeded.(彼の指導を以ってプロジェクトは成功した)」
会話形式で使い方を確認する
実際のビジネスシーンを想定した会話例で、「以って」の使い方を確認しましょう。
このプロジェクト、いつ終了にしたらいいかな?
では、「以上を以って、本プロジェクトを本日付けで完了といたします」とご報告書に記載いたしましょうか。
社長が直接動いてくれたら、この問題も解決できるんじゃないかな。
いや、社長の力を以ってしても、この課題の解決はなかなか難しいと思います。構造的な問題が根深いので。
「以って」に関するよくある質問
- 「以って」をカジュアルな会話で使っても大丈夫ですか?
-
「以って」はやや格式張った印象を与えるため、親しい相手や日常会話では「それで」「これで」「これにより」などの平易な表現に言い換えることをおすすめします。ビジネス文書や公式な挨拶の場面に適した表現です。
- 「以上をもちまして」は誤用になりますか?
-
定型句として広く浸透しているため、実際の会話やスピーチでは許容される表現です。ただし、文法的に厳密には「以上をもって」が正しい形とされています。公式文書や書き言葉では「以上をもって」を使うのが無難です。
- 英語メールで「以って」の意味を伝えるには?
-
「以って」を直訳するのは難しく、用法によって適切な英語表現が異なります。区切りを示す場合は “as of” や “effective from”、手段を示す場合は “by” や “with”、理由を示す場合は “due to” や “because of” を使うと自然な英文になります。
- 「以て」と「以って」はどちらを使えばよいですか?
-
どちらも正しい表記ですが、公用文・法律文書・格式の高い場面では「以て」が一般的です。読みやすさを優先する実用的な文書やビジネスメールでは「以って」でも問題ありません。文書のトーンや場面に合わせて選択しましょう。
- 「以ってしても」はどのような場面で使いますか?
-
「~を以ってしても」は、優れた能力・条件・人物であっても困難である、という逆説的な状況を表す際に使います。「彼の実力を以ってしても合格は難しかった」のように、後ろに否定的・困難な内容が続くのが基本的な使い方です。
まとめ:「以って」を正しく使ってビジネス文書の品格を高める
「以って(もって)」は、日常語ではなくビジネス文書や改まった場面で活きる格式高い表現です。正しく使いこなせれば、文章に説得力と品格を加えることができます。今回の内容を振り返り、要点を整理しておきましょう。
- 「以って(もって)」はビジネス文書で使える格式高い漢語表現
- 用法は「区切り」「手段・理由」「逆説的強調」「感情強調」の4パターン
- 「以って」と「持って」は同音でも意味が異なる。誤用に注意
- 表記は「以て」が正字だが、「以って」も実用的に広く使われている
- カジュアルな場面では「これにて」「用いて」などへの言い換えが有効
- 英語では「as of」「effective from」「due to」「by」を用法に応じて使い分ける
「以って」を正しく理解し使いこなすことで、ビジネス文書の完成度は確実に上がります。今後の文書作成や挨拶状に、ぜひ積極的に活用してみてください。

