人手不足が大きな問題になっている業界があるのは、ニュースや新聞でみたことがあるでしょう。今では、人手不足が原因で倒産に追い込まれる会社が少なくない事態に直面しています。

ここでは、人手不足が倒産に至ってしまう原因や懸念されている業界について解説いたします。

将来を見据えたビジネスパーソンとして、大きな問題になりつつある人手不足倒産の知識が身につきます。

人手不足が倒産の原因になる

帝国データバンクが実施した「人手不足倒産」の動向調査は、2014年から2017年を比較した調査です。その中で、2017年上半期の「人手不足倒産」が、4年前の2013年上半期と比較すると2.9倍に増加にしていることがわかりました。
(参考:帝国データバンク)

以前から人手不足と言われる業界はいくつかあり、人手不足と低賃金で成り立ってきていた特殊な業界とされていました。しかし、ここにきて、そのひずみが表面化してきていると言えます。

人手不足倒産の原因

倒産に至るほど人手が確保できないのには、いくつかの原因が考えられます。

賃金が上がらない

人手を集めるには、賃金をあげるのが手っ取り早い方法です。

しかし、それは、会社の運営コストが上昇することを意味します。賃上げによるコスト増は、本来は売上でカバーされるものです。しかし、現在起こっている人手不足倒産の場合、そのコスト増=人件費を売上でカバーできない、生産性の低い事業が多いのです。

賃上げによるコスト増は、商品やサービスの販売価格に上乗せすれば、すぐに回収できると思う人も少なくないでしょう。販売価格の上昇は、顧客の購買意欲を低下させてしまうのが一般的です。経済学でいっても価格は、需要と供給のバランスで決まるもので、販売側がコントロールできるものではないのは当たり前です。

コスト増は、顧客には全く関係のないのことです。そして、賃金の高い低いも社会の一般論で判断されるもので、従業員になるかもしれない顧客がどう判断するかにも委ねられている部分があります。

こうして、売上を伸ばす余地がなくなり、尚且つコスト増も補えないことが考えられるので、賃金を上げることもできなくなり、生産性の低い負のスパイラルに巻き込まれていきます。そして、最悪の場合には倒産に至ってしまうのです。

社員教育ができていない

新入社員を育てるためには、丁寧で的確な教育が大切になります。それには、教育にあたる社員がいなければいけません。

しかし、人手不足になりがちな会社では、教育の時間が取れずに、教育をできる社員が育っていないことが多々あります。

教育されず、よくわからないまま、ただ仕事をこなすだけの新入社員は、本人のやる気もないように感じ、一緒に働く社員にとっては、足手まといになる可能性もあります。他の社員とうまくコミュニケーションも取れなくなってしまい、辞めたくなってしまうのは仕方がないことです。

即戦力の採用は難しい

新入社員が多い会社や辞める人が多い会社では、即戦力になる人材の採用を目指す傾向にあります。新入社員のような時間とコストがかかる教育をしなくても済みますし、教育できる社員がいない場合には、そう考えるのも当然と言えます。

しかし、即戦力になる人材を採用するにもコストがかかります。

継続的に働いてもらうのですから、教育のように比較的短い期間ではなく、長期に渡ってのコスト増となります。どの会社でも即戦力は欲しいので、ある程度の高給を提示しなければなりません。そうなると、即戦力になる人材の採用も難しくなってしまいます。

会社イメージが悪い

「ブラック企業」や「ホワイト企業」との言葉が使われ、社会が労働環境に敏感になっています。

そんな中、インターネットやSNSの普及で、職場に関する悪い噂はかなりのスピードで拡散してしまうようになりました。インターネット上では、その会社がブラックと言われているのか、すぐにわかってしまいます。

また、ブラック企業が多いと言われる業界は、業界自体がブラックと見なされることも多くあり、イメージが悪くなってしまうのを避けられない状況です。事実かどうかは別にしても、悪い噂は口頭でも広がりやすいものです。今の拡散のスピードは採用活動にも大きく影響します。

業界、会社に対しての悪いイメージが、採用活動に影を落としてしまうこともあります。

人手不足が深刻な5つの業界

人手不足と言われる業界には、共通した特徴があります。それは、「若者離れ」です。人手不足倒産は、今後も増えるのではないかと言われ、懸念されている業界があります。

建設

2020年の東京オリンピックで、業界としては好調と言われる建設業界ですが、それと同時に人手不足が声高になっています。

肉体労働が基本の建設業界は「若者離れ」が顕著になっています。過酷なゆえ、賃金をあげても人手不足が深刻なのが、この業界です。業界内の価格競争の過熱化やオリンピック後の先行き不安も、若者離れに拍車をかけています。

運送

急激な需要の拡大で労働環境の劣化が表面化し、整備しつつある運送業界も、いまだ過酷なイメージが強く、若者離れが起こっています。

職種によっては、ドライバーの高齢者が問題になっているところもあり、若者のモチベーションの向上が難しい環境になっていることもあります。

IT業界

ここ最近、急激に人手不足に陥っているのがIT業界です。

IT長者という言葉が生まれたのは、90年代に業界がまだブルーオーシャンで生産性の高い事業が可能だったからでしょう。今ではレッドオーシャン化し、仕事量と賃金が見合わないと言われる業界になってしまいました。

若者の労働への価値観の変化も、IT業界ではネガティブに働いています。

レッドオーシャン:競争率が高い市場
ブルーオーシャン:競争率が低い市場

サービス業(小売、飲食など)

ブラック企業と言われた会社は、小売や飲食に特に多いです。

それがこの業界へのイメージを悪くしてしまい、採用活動に影響しています。たとえ、募集広告で良い条件を提示しても、なかなか若者からの反応がないのは、悪いイメージの拡散が激しいからと言えます。

介護

高齢化が進み、需要が高まる業界で、未経験者でも採用される業界ですが、人手不足に陥っています。

肉体労働なうえに、精神的にも辛い介護の現場では、仕事が賃金と見合っていないと言われる代表的な業界です。人を相手にするので、休日などの待遇面でも、他の業界よりも厳しく、若者離れにつながっています。

人手不足倒産についてのおさらい

・人手不足倒産は、4年前に比べて約3倍にも増えています。
・その背景には、賃金が上がらない、社員教育ができていない、即戦力の採用は難しい、企業イメージが悪いなどが挙げられます。
・特に人手不足倒産が懸念される業界には、若者離れがみられ、建設、運送、IT業界、サービス業や介護などがあります。