日本では給与所得者自身が所得税の計算や支払い業務を行わなくて済むように、また確実な納税のためにあらかじめ所得税を徴収した上で給与を支給する、源泉徴収が行われています。月々の税務処理や年末調整をより確実にするためにつけられる源泉徴収簿とは、どんな帳簿なのでしょうか。ここでは、初めての方にも分かりやすい、源泉徴収簿の解説や具体的なつけ方について解説しています。

源泉徴収簿とは

源泉徴収簿とは、年末調整や毎月の源泉徴収を正確に、かつ効率よく行う為に毎月つけられる帳簿を指します。源泉徴収簿には、源泉徴収対象者から申告される控除対象扶養親族や、月々の給料の支払い額、その給料から控除された税の金額などを記入します。

源泉徴収簿は、税務・財務処理の簡略化や効率化を目的に着けられるものですので、税務法上で決められたフォームがあるわけではありません。企業ごとに決められたフォームや、給与台帳などの代用できるものがあれば、それを使用しても大丈夫です。

決められたフォームはないものの、源泉徴収簿のフォームは、国税局が公開しているフォームを採用している企業や事業主が圧倒的に多いです。なぜなら、国税局のフォームを使用する事により、源泉徴収票の発行時や、年末調整、月々の税務処理もより確実に、かつ簡略化できるからです。
国税局が公開している源泉徴収簿のフォームは、国税局のサイト内、源泉所得税関係の「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成」のページより、PDFファイルとしてダウンロードできます。

源泉徴収票との違い

毎月つけられた源泉徴収簿を元に年末調整を行い、算出されたその年一年間の年収・所得・控除金額・源泉徴収額が記載された票が、源泉徴収票です。

源泉徴収票は、年末調整や確定申告と関わりの深い物ですので、一般企業の場合、年末である毎年12月に発行される事がほとんどです。対して、源泉徴収簿は、票ではなく帳簿であり、毎月つけるものです。つまり、源泉徴収簿を元にして作成されたものが、源泉徴収票です。

源泉徴収簿の書き方

源泉徴収簿は、まず甲欄か乙欄を選択します。甲乙欄は、扶養控除等の申請を提出しているか、給与収入が本業か副業かによって選択します。

甲欄…主たる収入の場合(本業)
乙欄…従たる収入の場合(他に主たる収入がある場合、副業)

その後、所属している部署や職名、住所・氏名の個人情報、整理番号を記入します。
また、源泉徴収簿は税務署に提出する源泉徴収票ではなく、あくまで税務管理の簡略化を目的とした帳簿です。ですので、マイナンバーの記入の必要はありません。

毎月の給与支払い時の厳然徴収簿の書き方

毎月の給与支払い日に源泉徴収簿をつけます。

支給日時…給与支払い日を書きます。
総支給金額…定期代などの非課税の通勤費を除いた、支払った給与の総額を書きます。
社会保険料等の控除金額…健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの控除金額の総額を書きます。
社会保険料等控除後の給与等の金額…総支給額から社会保険料等の控除金額をひいた金額を書きます。
扶養親族等の数…あらかじめ提出されている扶養控除等の申請書で確認し、扶養親族の数を書きます。
算出税額…源泉徴収額を指します。扶養親族等の数と社会保険料等控除後の給与総額などから、源泉徴収額を算出し、その金額を書きます。

賞与付与時の源泉徴収簿の書き方

毎月の給与支払い日だけでなく、賞与の付与も収入であり、源泉徴収の対象となります。給与支払い時と同様に、源泉徴収簿をつけます。

支給日時…賞与付与日を書きます。

総支給金額…付与された賞与の総額を書きます。
社会保険料等の控除金額以下は、給与支払いの際の源泉徴収簿の付け方と同じです。算出税額に、扶養親族等の数と社会保険料等控除後の賞与総額などから、厳選聴取額を算出して書きます。

源泉徴収の算出方法

甲欄(本業)の場合
例:給与総額300,000円 定期代10,000円 社会保険料合計(健康保険・厚生年金・雇用保険)49,000円 配偶者あり(専業主婦)子供2歳の場合

① 給料総額から社会保険料を引いて、社会保険料等控除後の金額を出します。(通勤費は、一定金額まで非課税のため、ここでは気にしなくてOK)
300,000円-49,000円=251,000円
② 国税局が公開している「給与所得の源泉徴収税額表」から、対応している箇所を見ます。251,000円かつ扶養家族が一人の場合(16歳未満の子供は、扶養家族にカウントされませんので注意)251,000円以上254,000円未満、扶養家族一人の欄には5,020円という金額があります。これが、源泉徴収額となります。

また、「給与所得の源泉徴収税表」は、国税局のサイト内PDFで公開されています。

国税局 源泉徴収税額表

源泉徴収簿以外に年末調整に必要な書類

年末調整に必要な書類は、「源泉徴収簿」「扶養控除等の申告書」「保険料控除等申告書」の3点になります。

扶養控除等の申請書…あらかじめ、該当する従業員などに記入・提出してもらいます。
保険料控除等申請書…生命保険料の控除証明書や地震保険料の控除証明書を元に、控除保険料を計算しておきます。生命保険料の控除証明書や地震保険料の控除証明書は、該当する従業員などに提出してもらいます。

まとめ 源泉徴収簿の極意

・年末調整や確定申告を行う時、正確にかつ作業を簡略して行えるようにつけておく帳簿を、源泉徴収簿という。また、源泉徴収簿を元に算出された1月1日から12月31日までの給与総額や所得総額、源泉徴収額の合計などを記載した票を源泉徴収票という。
・源泉徴収簿に決まったフォームはなく、企業で定めている物や、管理台帳など代用できるものがあれば代用しても良い。ただし、多くの企業で採用しているのが、国税局で公開している源泉徴収簿のフォームである。
・源泉徴収簿は、源泉徴収が発生する時に都度記入する。一般企業の場合は、給与支払い日と、賞与付与日に帳簿付けをする。
・源泉徴収簿を記入する時には主たる収入である本業なら甲欄、従たる収入である副業なら乙欄を使用する。
・源泉徴収簿に記入する個人情報は、役職名や所属部署、住所や氏名、整理番号。税務署への提出書類ではなく、管理帳簿の為、マイナンバーを記入する必要はない。
・源泉徴収簿に書く金額は、支給日時は給与支払い日や賞与付与日、総支給金額は定期代などの非課税の通勤費を除いた、支払った給与の総額、社会保険料等の控除金額は健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの控除金額の総額、社会保険料等控除後の給与等の金額は総支給額から社会保険料等の控除金額をひいた金額を書く。
・源泉徴収簿の扶養親族等の数は、あらかじめ提出されている扶養控除等の申請書通りに扶養親族の数を書く。
・源泉徴収簿に記載する算出税額は、算出された源泉徴収額を書く。源泉徴収額の算出には、国税局の発行している「給与所得の源泉徴収税額表」から、該当する箇所を見て出す。
・年末調整に必要な書類は3点。「源泉徴収簿」「扶養控除等の申告書」「保険料控除等申告書」。また、扶養控除等の申請書は該当する従業員へあらかじめ記載の上、提出してもらう。保険料控除等申請書の作成には、生命保険料の控除証明書や地震保険料の控除証明書が必要になる為、該当する従業員などに提出してもらった上で控除する保険料をあらかじめ算出しておく。