この記事では「慇懃」の読み方や意味について解説いたします。

読み方も漢字も見聞きする機会が珍しいということもあり、どういった使い方をするのか想像できないという人が多いかもしれません。

そこで今回は「慇懃」の語源や関連語、類義語や対義語等も含めて取り上げました。

それでは一つずつ確認していきましょう。

慇懃の読み方・意味・使い方

「慇懃」は「いんぎん」と読み、「人に接する物腰が丁寧で礼儀正しいこと」や「親しい交わり」といった意味です。

良い意味でも悪い意味でも使うことができる言葉で、例えば以下のような使い方をします。

・彼女の慇懃な態度にはいつも感心する。

上記は彼女の礼儀正しい態度に対して好意的に思っているということを表した例文です。

慇懃の語源

「慇懃」という言葉は7世紀後半から8世紀後半に編まれた『万葉集』に登場し、「ねもころ」という読み方で「心を込めて」という意味で使われていました。

また平安時代末期に成立した『色葉字類集』(いろはじるいしゅう)では、「いんぎん」と読まれています。

そして時代と共に意味も変遷していき、今日の意味で使われるようになりました。

なお「慇」は「憂え悼んで心を傾ける」や「丁寧」、「懃」は「苦しむ」、「疲れるほどに気をつかう」という意味があります。

慇懃の関連語

「慇懃」は他の語を伴って使われることがあります。

この項目では、「慇懃」を使った四字熟語を二つピックアップしました。

慇懃無礼

「慇懃無礼」は「いんぎんぶれい」と読み、以下のような意味で使われます。

・言葉や態度が丁寧すぎて、かえって無礼であるさま
・あまりに丁寧すぎると、かえって嫌味で誠意が感じられなくなるさま
・うわべは極めて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさま

「無礼」は「礼儀をわきまえないこと」や「失礼」を意味する言葉で、「慇懃」と合わさることによって上記のような意味になるというわけです。

例えば「彼の敬語は過剰すぎて慇懃無礼に感じられた」であれば「敬語の使い方が丁寧すぎて、帰って無礼に感じた」という意味が適当でしょう。

慇懃尾籠

「慇懃尾籠」の読み方は「いんぎんびろう」で、意味は「丁寧の度が過ぎて不快感を与えること」です。

「尾籠」とは「礼を失すること」や「無礼」を表しているので、「慇懃」とセットでは上記のような意味になります。

例えば「あのお店はスタッフの慇懃尾籠な接客が災いし客足が遠のいている」では、「スタッフの丁寧さの度が過ぎているので、それが不快感を与え客が訪れなくなっている」ということです。

慇懃のビジネス上での使い方

「慇懃」はビジネス上でも使われることがある言葉で、例えば次のような使い方が挙げられます。

・彼の慇懃な振る舞いは、営業部の模範になっている。

「慇懃な振る舞い」は、「丁寧で礼儀正しい振る舞い」という意味です。

営業部は人と接することが多い部署だからこそ、そういった振る舞いができる人をモデルにしているということでしょう。

・誰に対しても慇懃であることから、彼女は社内外を問わずとても人気がある。

誰にでも礼儀正しく接することができる人は、あらゆる人から好意的に思われるものです。

この例では、そういった態度ができる彼女が会社の内外を問わずに人気であることを表しています。

慇懃の類義語と例文

「慇懃」の類義語としては、以下のようなものが考えられるでしょう。

・丁寧

・懇ろ

上記の類義語を使った例文は、下記のようなものが挙げられます。

・彼女の電話対応はいつも丁寧だ。

「丁寧」は「ていねい」と読み、「動作や態度がぞんざいでなく礼儀正しいこと」や「仕事のやりかたが雑でなく、念入りなこと」という意味です。

この例では、彼女の電話対応がいつも礼儀正しいということを表しています。

・あのレストランは、懇ろな対応をすることで評判だ。

「懇ろ」の読み方は「ねんごろ」で、意味は「心がこもっているさま」や「親身であるさま」です。

この例だと、「懇ろな対応」が人気になっているということでしょう。

慇懃無礼の類義語と例文

「慇懃無礼」の類義語は、次のようなものが該当します。

・おためごかし

・小手先

また例文としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

・彼の言動はどうしてもおためごかしにしか思えない。

「おためごかし」とは「相手のためにしているように振る舞って、実は自分の利益のために行動している」という意味です。

この例では、人の為を装って自分の為にしている言動が見透かされているということが読み取れます。

・小手先のお礼など、しない方が良いだろう。

「小手先」は「こてさき」と読み、「表面上は良い感情を見せていても、心の中には違う感情がある」を意味しています。

この例だと、表面上は良くても心が伴ってないお礼はしない方が良いということです。

慇懃の対義語と例文

「慇懃」の対義語は、下記のようなものが考えられるでしょう。

・無礼

・不躾

また上記の対義語を使った例文としては、次のようなものが挙げられます。

・無礼な態度がきっかけとなり、彼は担当を外されてしまった。

「無礼」の読み方は「ぶれい」で、「礼儀をわきまえないこと」や「失礼」という意味です。

そうした態度をすると、上記のように仕事や役目を外されてしまうことがあるかもしれません。

・不躾を承知で上司を諌めた。

「不躾」は「ぶしつけ」と読み、「礼儀作法をわきまえないこと」や「無作法」を意味します。

この例では無作法だと自覚した上で、上司に対して忠告をしたということです。

慇懃の英語表現

「慇懃」の英語表現としては、「courtesy」や「intimacy」等が該当するでしょう。

また例文は以下のようなものが考えられます。

・She is known for her courtesy.(彼女は礼儀正しいことで知られている。)

「courtesy」は「丁寧」や「礼儀正しい」という意味で、それが周りの人にも知られているということが読み取れるでしょう。

・We were able to build intimacy.(私たちは親交を深めることができた。)

「intimacy」は「親交」という意味があり、「build intimacy」で「親交を深める」ことを表現します。

慇懃無礼の英語表現

「慇懃無礼」の英語表現は「smarmy」が適切でしょう。

例えば「I think that he is such a smarmy」のように使います。

「smarmy」は「丁寧すぎる」や「媚びる」という意味があり、上記の文では「彼は慇懃無礼だと思う」という意味です。

まとめ この記事のおさらい

・「慇懃」は「いんぎん」と読み、「人に接する物腰が丁寧で礼儀正しいこと」や「親しい交わり」という意味がある

・「慇懃」という言葉は『万葉集』や『色葉字類集』に登場し、時代と共に読み方が意味が変わっていき今日の意味として使われるようになっていった

・「慇懃」には、「慇懃無礼」や「慇懃尾籠」といった関連語がある

・「慇懃」の類義語としては、「丁寧」や「懇ろ」等が挙げられる

・「慇懃無礼」の類義語は、「おためごかし」や「小手先」といったものが考えられる

・「慇懃」の対義語には、「無礼」や「不躾」等がある

・「慇懃」の英語表現としては、「courtesy」や「intimacy」が挙げられる

・「慇懃無礼」の英語表現には、「smarmy」が適切