税理士は国家資格で、税理士として働くには「税理士試験」に合格しなければなりません。税理士試験は科目ごとの合格制度があるなど、他の試験とは違う特徴もあります。この記事では税理士試験の概要や特徴、合格率などについて解説します。
税理士試験とは
税理士試験について説明する前に、税理士の仕事に簡単に触れておきます。
税理士の仕事
税理士は、個人や企業からの依頼で、税務に関する申告・申請・請求などの代行、税務書類の作成、税務相談などを行う仕事です。
税理士には税理士だけが行える3つの独占業務があります。
1.税務代理
納税者の代わりに、税務署等への申告・申請を行います。税務調査の立ち会いも税務代理業務のひとつです。
2.税務書類の作成
税務署に提出する過程申告書、相続税申告書などの書類を、納税者に代わって作成、提出します。
3.税務相談
税金はいくらになるのか、必要な手続きはなにかなど、税務の相談に応じます。
独占業務以外の仕事としては、試算表や決算書を作成する会計業務、経営に関わるアドバイスを行うコンサルティング業務などがあります。
税理士になるために必要な国家試験
税理士は国家資格です。税理士になるためには、税理士試験に合格する必要があります。税理士試験は科目選択制度や科目合格制度、学位取得などによる科目免除制度があるのが特徴です。
税理士試験の概要
受験資格
是利子試験の受験資格は、学識、資格、職歴といったさまざまな分野の資格が定められていて、いずれか一つの要件を満たせば受験が可能です。
■主な受験資格
1.学識による受験資格
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、法律学又は経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者
・司法試験合格者
・公認会計士試験の短答式試験に合格した者
2.資格による受験資格
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記検定上級合格者
3.職歴による受験資格
・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
試験の申込には、受験資格を有することを証明する書面を提出する必要があります。
また、上記以外にも受験資格として認められるものがあります。詳しくは国税庁の税理士試験のページを参照してください。
試験科目
税理士試験の試験科目は11科目あり、そのうち5科目を選択して受験する制度です。
■必須科目
・簿記論
・財務諸表論
■選択必須科目(いずれか1科目が必須)
・所得税法
・法人税法
■選択科目
・相続税法
・消費税法(消費税法・消費税法いずれか1科目のみ)
・酒税法(消費税法・消費税法いずれか1科目のみ)
・国税徴収法
・住民税(住民税・事業税いずれか1科目のみ)
・事業税(住民税・事業税いずれか1科目のみ)
・固定資産税
試験の日程
税理士試験は年1回、3日間の日程で実施されます。2019年度の試験は下記の日程で実施されました。
■試験日
8月6日(火)
簿記論 9:00~11:00
財務諸表論 12:30~14:30
消費税法又は酒税法 15:30~17:30
8月7日(水)
法人税法 9:00~11:00
相続税法 12:00~14:00
所得税法 15:00~17:00
8月8日(木)
固定資産税 9:00~11:00
国税徴収法 12:00~14:00
住民税又は事業税 15:00~17:00
■受験申込の受付
5月8日(水)から5月20日(月)まで
■合格者の発表
12月13日(金)
受験料
税理士試験の受験料は、科目をいくつ受験するかによって変わります。
1科目 4,000円
2科目 5,500円
3科目 7,000円
4科目 8,500円
5科目 10,000円
受験料は申込時に相当額の収入印紙で納付します。
受験地
2019年の受験地は下記の通りです。
北海道・宮城県・埼玉県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・熊本県・沖縄県
年によって多少変わることがありますので、実際の受験地は、国税庁の税理士試験公告を確認してください。
税理士試験の特徴
全11科目から5科目を選択する
税理士試験の特徴のひとつは、科目選択制度だということです。全11科目の中から5科目を受験し合格すれば税理士試験に合格となります。
科目には必ず受験しなければならない必須科目と、選択性の科目があります。詳しくは前章【試験科目】を参照してください。
1回の受験で5科目全てに合格する必要はない
税理士試験は科目合格制度を採用しているのも特徴です。
税理士試験に合格するためには5科目に合格しなければなりませんが、1回の受験で5科目すべてに合格する必要はなく、複数年かけて5科目を合格すればよいシステムです。一度合格した科目については期限なく有効となりますので、次回からは足りない科目を受験していけばよいのです。
「簿記論」などの科目合格でも履歴書に書ける
税理士試験の合格科目は、就職活動に使う履歴書の資格欄に記入して問題ありません。どの科目を合格しているかを知れば、その人がどんな分野に精通しているかが分かります。求職者にとっては強いアピールポイントとなりますし、採用側にとっても有益な情報です。合格している科目があれば、ぜひ「〇年〇月 税理士試験 簿記論 合格」のように、年月と合格科目を記載しましょう。
税理士試験の難易度
合格率
平成30年度および平成29年度の科目別の合格率は次の通りでした。
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 30年度合格率 | 29年度合格率 |
簿記論 | 11,941 | 1,770 | 14.8 | 14.2 |
財務諸表論 | 8,817 | 1,179 | 13.4 | 29.6 |
所得税法 | 1,704 | 209 | 12.3 | 13.0 |
法人税法 | 4,681 | 542 | 11.6 | 12.1 |
相続税法 | 3,089 | 363 | 11.8 | 12.1 |
消費税法 | 7,859 | 833 | 10.6 | 13.3 |
酒税法 | 546 | 70 | 12.8 | 12.2 |
国税徴収法 | 1,703 | 182 | 10.7 | 11.6 |
住民税 | 460 | 62 | 13.5 | 14.3 |
事業税 | 418 | 46 | 11.0 | 11.9 |
固定資産税 | 845 | 126 | 14.9 | 13.3 |
合計 | 42,063 | 5,382 | 12.8 | 17.0 |
表を見ると分かるように、受験者数は科目によって大きく異なります。また、合格率を学歴別で見ると、大学在学中の合格率が比較的高く、年齢別では25歳以下が高いという結果となっています。
必要な勉強時間はどのくらい?
税理士試験の合格までにかかる勉強時間は、科目ごとに違いもあり一概には言えないところもありますが、目安として、ボリュームの多い所得税法、法人税法は600時間程度、ボリュームの少ない酒税法、国税徴収法で150時間程度といわれています。
予備知識があるかどうかなどで個人差もありますので、あくまでも参考として考えてください。
働きながら試験合格を目指す人も多い
税理士試験は難関といわれ、働きながら試験合格を目指すのはなかなか難しいところもあります。しかし、働きながら試験合格を目指すメリットもあります。
税理士試験は科目合格制度なので、いっぺんに全部の科目を勉強しなくても、何年かかけて計画的に合格科目を増やしていくことができます。
うまく時間をやくりくできれば、働きながらでも試験対策は可能です。
また、科目ごとの合格実績は就職活動の履歴書に書くことが出来るので、受験対策期間が長引いて途中で就職を考えたときにも有利です。勉強時間を確保するのはたいへんですが、会計事務所などで実務に携わることで勉強に役立つこともあるでしょう。
税理士試験の科目免除制度とは
税理士試験には、特定の学位を取得していたり国税に従事していることによる科目免除制度があります。
学位取得による科目免除
■平成14年3月までに大学院に進学した人が免除される科目
・商学の学位(修士または博士)を持つ者は会計系の科目(簿記論、財務諸表論)
・法学、または経済学のうち財政学の学位(修士または博士)を持つ者は税法系の科目(選択必修及び選択科目)
■平成14年4月以降に大学院に進学した人で、会計系あるいは税法系の修士論文を執筆し学位を得た上で、それぞれの科目に1科目以上合格した人が免除される科目
・会計学に属する科目等の学位を持つ人は残る会計系の科目
・税法に属する科目等の学位を持つ人は残る税法系の科目
国税従事による科目免除
■10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者が免除される科目
・税法系の科目
■23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者が免除される科目
・会計系の科目
特定資格による試験免除
・弁護士・公認会計士(一部研修が必要)の資格取得者は全科目免除
弁護士は無試験で税理士として登録することができます。公認会計士が税理士として登録するには、税理士試験の受験は必要ありませんが、税法に関する研修を修了する必要があります。
税理士試験の勉強方法
独学
税理士試験の合格率は、科目によってばらつきはあるものの、例年15%前後と難関といってよいものとなっています。予備校に通うのがスタンダードな勉強法ですが、科目合格制度を採用しており、何年かかけて合格を目指すことが可能なので、独学で臨む人も少なくはありません。
必須の2科目は受験者が多いため、参考書など書籍やインターネット上で学習できるコンテンツも多く出回っています。
独学は費用が抑えられることや、自分のペースで学習できることがメリットです。簿記や会計の基礎知識が身についている人、自分の納得できる方法でじっくり勉強したい人は、独学に挑戦するのも良いかもしれません。
専門学校や予備校に通う
税理士試験の勉強でもっともスタンダートなのは、専門学校や予備校に通うことです。各校、初学者向けのコース、受験経験者向けのコース、夜間通学できるコースなど、さまざまな講座を開講しています。
複数科目を受講することで受講料が割引になるなどの特典がある講座もありますので、自分のレベルや費用、生活スタイルに合わせて検討するとよいでしょう。
予備校や専門学校は費用がかかりますが、、分からないことがその場で質問できること、周りの人のレベルが実感できることなどがメリットです。強制的に勉強する環境をつくらないとなかなか続ける自信がない人には、通学タイプの勉強が向いているといえるでしょう。
通信講座を受ける
働きながら学校に通うのが難しい人や費用をおさえたい人は、通信講座を利用する方法もあります。スマホやタブレットで学習できる講座なら、通勤時間や休憩時間を活用しての勉強も容易です。
通信講座は通学に比べ費用が抑えられるのがメリットのひとつです。予備校が近くにない人は通学にかかる時間や費用もかさみます。通信講座での受験対策も検討してみるとよいかもしれません。
税理士試験についてのまとめ
- 税理士は、税務に関する申告・申請・請求などの代行、税務書類の作成、税務相談などを代行する仕事です。
- 税理士は国家資格で、税理士として働くには「税理士試験」に合格しなければなりません。
- 税理士試験は5科目の合格が必要ですが、科目合格制度があり、1回の受験で5科目を合格する必要はありません。
- 税理士試験の合格率はおおよそ15%前後ですが、科目によって違いがあります。
- 税理士試験は、学位取得・国税従事・特定資格による科目免除制度があります。
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