当記事では「OEM」について解説します。
「OEM」は主に自動車製造を始めとした製造業界で使われている言葉で、メーカーの営業マンと話をする中で登場することが多いです。「OEM」についての理解を深めておくことで、そうした話がより頭に入りやすくなります。
本記事では、そもそも「OEM」とは何かというところから、「OEM」のメリットとデメリット、ビジネスシーンでの活用例、そして英語表現について説明していきます。
目次
OEMとは
まずは「OEM」がどういうものなのかについて説明していきます。「OEM」の意味はもちろんのこと、紛らわしい言葉である「ODM」や「PB」との違いについても押さえておく必要があります。
OEMの意味
「OEM」は「original equipment manufacturing」の略称で、その意味は企業が別のメーカーに製品の製造を委託し、受託したメーカーが委託した側の企業のブランドで製品を生産して供給することです。OEMを行う企業のことを指すこともあります。
委託企業はメーカーであることもあれば、小売業者や卸売業者であることもあります。
企業の活動を大まかな工程に分けると、「企画・設計・開発」「製造」「物流」「販売」の4つになります。このうちの「製造」の部分を他のメーカーに委託するのがOEMです。これにより、さまざまなメリットを得られます。
委託方式は「垂直的分業方式」と「水平的分業方式」の2通りです。
「垂直的分業方式」は委託側の企業が受託側のメーカーを指導します。一方、「水平的分業方式」は同じ水準の技術力の企業同士間でOEMを行う方式です。
国際的には、中国や東南アジアなどの安価な労働力に着目してOEMを委託する日本企業が多いです。一方で、欧米企業からのOEMを受託しているメーカーもたくさんあります。
「OEM」と「ODM」の違い
ODMは「Original Design Manufacturing」の略です。OEMが製造の部分だけを委託するのに対し、ODMは企画・設計・開発の部分までを受託メーカーが担います。場合によっては、物流や販売の部分も行うこともあります。携帯電話業界やパソコン業界でとくに多く見られる手法です。
「OEM」と「PB」の違い
PBとは、「Private Brand」の略で、小売業者や卸売業者が商品の企画・設計・開発と販売を行うブランドのことです。製造の部分を他のメーカーに委託するので、OEMと混同されがちです。
OEMのメリットとデメリット
「OEM」のポイントは製造と企画・設計・開発や販売の機能を分離するということです。
それによって、委託者(製造企業)と受託者(下請企業)の双方にメリットがあります。しかし、メリットの裏にはデメリットも潜んでいます。ここではそうしたメリット・デメリットについて解説していきます。
委託者側のメリット・デメリット
委託者側のメリットとして第一に挙げられるのが、コストダウンです。
製造を行わない場合、自社の工場を持つ必要がなくなるので、その分コストを削減することができます。また、受託メーカーには小ロットでの製造に対応できる企業が多く、製造量を柔軟に調整できます。それによって、売れなかったときに大量の在庫を抱えるリスクを回避しやすくなるのです。
一方、製造によって発生していたかもしれない利益が得られなくなるというデメリットもあります。
第二に、ブランドの知名度が向上しやすくなることが挙げられます。
製造を行わない分、企画・設計・開発や販売のほうに人員や時間、労力をかけられるので、新たに商品を開発し、それをどんどん販売することで、自社ブランドの商品を世に送り出すことができるのです。
しかし、受託メーカーが製造以外のノウハウを身につけ、自社ブランドの商品を販売することによって、将来的に競合相手になってしまうリスクも孕んでいます。
受託者側のメリット・デメリット
受託メーカー側のメリットとして第一に挙げられるのは、生産量が増えるということです。
これにより、人員や設備を有効に活用でき、利益の確保に繋がります。商品が売れれば売れるほど生産量は増え、メリットも大きくなります。しかし、価格や生産量の決定権は委託企業が持っています。生産量は増えても価格を抑えられてしまうと利益の確保が困難になります。
第二のメリットは、技術力の向上です。もともと持っている生産能力を活かしてOEMを受託することで、得意分野ならば技術がさらに向上して特化企業として企業間で有名になることもあります。
また、さまざまな商品の製造を通して技術の幅が広がり、新たな分野を開拓できるという効果も期待できます。
しかし、販売は委託者側のブランドで行われるので、消費者の知名度が向上しにくいというのがデメリットです。契約によっては商品のパッケージやカタログに販売元として委託企業の名前、製造元として受託メーカーの名前が表記されることもありますが、そうでない場合もあります。
OEMのビジネス上での活用例
「OEM」はさまざまな業界で活用されています。とくに、多種多様な商品を取り扱う「家電製品」「化粧品」「コンビニエンスストア」では、OEMが盛んです。
家電製品
家電製品の場合は、ヤマダ電機の「HERB Relax」のように、家電量販店がPB商品を開発しています。当初は大手のメーカーがOEMを受託していましたが、次第に小ロットでの製造に対応できるメーカーが受託するようになっていきました。
中には、先述のようにOEM受託をしつつ自社ブランドの製品を開発し、販売する企業もあります。たとえば、「日本電熱株式会社」は熱に関する技術を活かして空気清浄機や乾燥機などのOEMを受託していますが、その一方で全自動のコーヒーマシンを開発し、販売を行っています。
化粧品
化粧品は多様なニーズがあり、それらに対応するために、小ロットで生産できるOEMが活用されています。化粧品の品目は100を超えており、全てを製造できるメーカーはまず存在しません。特定の品目をメインにしたり、特化したりしており、分類すると以下のようになります。
- 基礎化粧品メイン型:化粧水や乳液などがメイン
- 固形石鹸特化型:固形石鹸専用の大規模な製造設備を持つ企業が多いため、専業であることが多い
- メイクアップ化粧品メイン型:口紅などを得意とする「色モノ型」とファンデーションなどを得意とする「粉モノ型」に大別される
- エアゾール化粧品メイン型:エアゾール(スプレー缶)タイプの化粧品がメイン
また、化粧品は薬事法によって都道府県に申請しなければ販売できません。受託メーカーの中にはそんな薬事申請を代行するところもあります。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアでも近年、食品や日用品でPB商品が多く見られます。たとえば、セブンイレブンは弁当や調理パンなどで、さまざまなメーカーにOEMを委託しているため、品揃えが多様です。
その品揃えを支えるOEM受託メーカーの一つが、「わらべや日洋ホールディングス株式会社」です。弁当やおにぎり、和菓子などを提供しています。
全国にセブンイレブン専用の工場を設置していたり、セブンイレブン全店の8割以上の店舗に納品していたりと、セブンイレブンのためにあるといっても過言ではありません。
OEMの英語表現
先述のとおり、「OEM」はもともと「original equipment manufacturing」という英語を略した言葉なので、そのまま「OEM」と言ってもネイティブの人に伝わります。
(家電製品をOEMベースで生産しているメーカーはたくさんあります)
また、「OEM」は基本的には名詞として使われますが、ときどき末尾に「ed」などを付けて動詞として使うこともあります。
(その化粧品はA社にOEM供給されています)
まとめ この記事のおさらい
- 「OEM」とは、メーカーが他の企業からの委託を受け、依頼者側のブランドで製品を製造して供給する手法、またはそれを行う企業
- OEMは製造と他の工程を分離することで、委託者と受託者の双方にメリットをもたらすが、そのメリットの裏にはデメリットも隠れている
- OEMは家電製品や化粧品など、多種多様な商品を取り扱う業界で特に盛んに行われている
「OEM」についての解説は以上です。
OEMは企業の活動を合理化し、多様なニーズに応えていくためには必須の手法であるといえます。デメリットもあるということを念頭に置きつつ、有効活用していくことが、今後も多様化を続ける価値観に対応していく鍵となるでしょう。