現代でも血なまぐさい戦争の歴史は繰り返されていますが、その昔世の中がまだ秩序立っていなかった頃は、あちこちで国盗り、つまり領土の拡大を目的にした争いが行われていました。
我が日本はいうに及ばず、ヨーロッパや中国でも同様であり、様々な書物によってそれを窺い知ることができます。
席巻はそうした中でも、古代の中国の歴史書から日本に伝わった言葉です。
無論今の日本で、侵略戦争など起こす者などいません。
しかし版図を拡げるという意味では、現代の戦場ともいえるビジネスシーンにおいても、脈々と受け継がれ用いられているといえます。
この記事ではその由来と共に、どういった使われ方をしている言葉かを解説していきます。
席巻の意味と使い方
席巻は「せっけん」と読み、特に巻を「かん」ではなく、他にあまり用例のない「けん」と読ませるのが特徴です。
難しい方の「捲」(「捲土重来」などにも使われます)を用いて「席捲」と表記する事もあります。
席巻の意味は自分の力や名声を、広い範囲に渡って知らしめ影響を及ぼすことです。
先に述べたように、この言葉は中国の前漢(紀元前の時代)の史書に見られます。
それは、藁で編んだ敷物(席)をくるくると巻き取るように、簡単に領土を攻め落とし自分のものにする、という意味で使われたものでした。
おそらくこの敷物を中国全土の地図に見立てていたのでしょう。
また、「ある期間の内に、勢いを持って侵攻をはたす」という意味合いを強く持ちますので、むしろ結果にスピードが重視される現代にこそ相応しい言葉ともいえます。
席巻は本来侵略の事ですが、現代では、領土拡大といえば主にビジネスでの成功を意味します。
席巻の例文
コンピュータや通信などの情報分野に限って見ても、ソフトバンクの孫氏やアップルのジョブズ氏、マイクロソフトのゲイツ氏など、一代で世界中にその名を轟かせたこれらの著名人が、「席巻」の最も大きな例です。
その他、色々な意味で世間を騒がせた堀江貴文氏なども、日本を席巻したといってもよいのではないでしょうか。
「席巻する」と動詞にする事で、その物がどれほど世の中にはばかり、人の心を掴み、また「名が売れている」のかを表す事ができます。
またこの言葉は比喩である事から、その他の様々な現象にも、事の良し悪しを問わず用いられる事があります。
例えば伝染病の蔓延や、音楽のヒットや、プロスポーツチームの快進撃などです。
日常会話的な例文は下記になります。
席巻の類義語
前述のジョブズ氏などは、しばしば「時代の寵児」などともてはやされます。
寵児というのは愛されている子供の事のため、この場合「時流に適合し、恩恵を受けている人物」という意味になります。
また(たとえ一時的だとしても)世間を騒がせるという意味では「一世を風靡する」という表現もあります。
靡は「なびく」と訓読みにする事もでき、風によって物がなびく様子を「強い影響力」に例えた言葉です。
その他、「耳目(じもく)を集める」「脚光(きゃっこう)」「今をときめく」なども、似たさまをあらわす言葉といえるでしょう。
席巻の英語表現
「征服」を意味するconquer(コンカー)やtake over、「支配する」という意味ではdominateなどの言葉を挙げる事ができます。
この他「侵略する」という意味ではaggressやinvade、「領土拡大」にはexpand one’s territoryといった表現があります。
また最近よく耳にするのが「バズる」ですが、これは英語のbuzz(大勢がめいめいに話し合っている、ガヤガヤとした喧騒)から来た若者言葉で、「一気に注目を浴びたり、ヒットしたりする」事をあらわします。
席巻の類義語
- 席巻(せっけん)とは、攻め込んで領土を広げることから転じた言葉です。
- 元々は古代中国の言葉であり、現代では意味は世の中に名を知らしめたり、広く力を及ぼす事をいいます。
- ビジネスでのシェア拡大や人気の上昇、病気の蔓延にいたるまで様々な場面で使える言葉です。
- 席巻は、どちらかというと「短期間のうちに一気に勢いをつける」といった意味合いが強くあります。
- 席巻に似た言葉としては「時代の寵児になる」「脚光を浴びる」「一世を風靡する」「バズる」などがあります。
- 英語では、conquerやtake overといった表現をする事ができます。”