現代では成果主義を取り入れる企業が増えているため、給与体系が年俸制の企業も少なくありません。

就職や転職先選びでは給与も大切な要素であるため、年俸制への理解不足が満足のいく就職や転職にならないこともあります。

在職中でも給与携帯が変わることもあるでしょう。ここでは年俸制とはなにか、年俸制のデメリット、年俸制で注意すべきポイントなどを解説します。

この記事を読む事で、満足のいく就職や転職、在職中の好条件の引き出しなどができるようになります。

そもそも年俸制とはなにか?

年俸制とは、雇い主と労働者が合意のもと、1年単位で給与総額を決める給与体系をさす言葉です。

前年度の成果をもとに年俸が取り決められるのが一般的であるため、成果主義の給与体系と捉えることもできます。

大企業では、年俸を計算するための計算基準がしっかり取り決めてある場合が多く。中小企業では、取り決めが雇い主と労働者の話合いで決められることも多いです。

平成29年就労条件総合調査結果によると、過去3年間で賃金制度の改定で年俸制の拡大・導入を行った企業は4.9%です。

1,000人以上の企業においては11.2%が年俸制の拡大・導入の改定を行っているという結果もあるため、これからも増えると考える人も少なくありません。

平成31年4月1日に労基法改正案で新たに導入されることになる「高度プロフェッショナル労働制」は、労働時間と賃金の連動を完全に切り離す考え方であるため成果主義と似ています。

参考:厚生労働省 「働き方改革」の実現に向けて
(平成27年2月13日付け労働政策審議会建議)

給与の支払いが年に一度しかないという思い込みがありますが、実際の年俸は労働基準法で定められている賃金支払いの5原則に従っており、分割して毎月1回以上支払われます。

賃金支払いの5原則とは、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上払いの原則、一定期日払いの原則です。

年俸制のボーナスは会社次第で変わる

年俸制ではボーナスがないと思っている人も少なくありませんが、年俸制のボーナスは会社の就業規則や雇用契約書の定め方次第です。

定め方次第で、ボーナスの支払われ方は主に2つあります。

年俸とは全く別で、追加支給の形をとる場合がわかりやすいですが、年俸にボーナスを含んで支払いがある場合があります。

年俸を12等分するのではなく、16等分して毎月は1/16を支払い、決まったボーナス月や、年に2回は3/16を支払うなどの形式をとることもあるでしょう。

求人票に年俸制とある場合には、ボーナス=賞与の有無だけでなく、どのように支払われるかも合わせて確認しましょう。賞与が別枠の年俸額と賞与を含んでの年俸額では、大きな差があります。

年俸制のデメリット

年俸制は労働者にとって、毎年の更新で給与総額の変動リスクがあります。月給制でも成果主義を取り入れている企業はありますが、年俸制の成果主義のほうが厳しい評価になる傾向があります。

年俸があがる分にはよいですが、成果があがらない次の年には半額になるなど大幅な減額も考えられます。生活レベルの維持の仕方や住宅ローンなどの支払い計画などは注意深く考える必要があるでしょう。

企業側にとっても、年俸制にはデメリットがあります。年度初めに決定した年俸額は、あとから変更することはできません。

万が一、企業に大きな損害を与えるようなミスなどを起こしても、その年の年俸額を減らすことはできず、次の年度の査定まで待たなければいけません。

野球選手がけがをして試合に出られなくなったとしても、契約したシーズンの年俸はきっちり支払われるのと似ています。

成果主義に連動した給与体系であるため、個々の労働者に対して年俸を算出する手間があります。

就業規則などで年俸の基準を統一することも可能ですが、個々の労働者への周知と同意をもらうことは省けないため、一定の手間や時間はどうしてもかかってしまうでしょう。

年俸制とは何か、制度の解説とメリットやデメリットを詳しく解説

年俸制で注意すべきポイント

年俸制の注意点として、年俸の中になにが含まれているかや、年俸制の仕組みを理解して確認しなければいけないポイントがいくつかあります。

年俸制の社員には残業代を払わない会社がある

年俸制の場合には、残業代を支払わなくてもいいという誤った認識を持っている人が少なくありません。確かに、労働基準法で管理監督者に該当する部課長などの役職者なら、残業代はなしでも合法です。

しかし、一般労働者には、残業代は支払わなければいけません。

年俸額の中に固定残業代が含まれていない場合、残業代は全額支払われます。固定残業代が含まれた年俸額の場合も、残業時間を超過した時間分に関しては、残業代は支払われなければなりません。

年俸額の内訳に固定残業代の明記がない場合には、法的には全額が基本給と見なされて、残業代は時間に応じて全額支払われます。

明らかに長時間の残業時間に対して残業代の支払いがない場合には会社に相談しましょう。納得がいく返答がない場合、労働基準監督署に相談してみるのもよいでしょう。

年俸制の残業代の計算は、基礎になる金額に迷うことがあります。年俸制でも、給与支払いの5原則に基づき、年俸を等分してボーナス部分も計算して支払われたり、別枠でボーナスがあったりします。

残業代の計算の基礎のためにボーナス部分を省いて考えてしまいがちですが、正しくありません。

労働基準法では、残業代の基礎の計算に、臨時に支払われた賃金と1か月を超える期間で支払われる賃金は含めなくてよいとされています。

行政通達では、あらかじめ支給額が確定されているものはボーナスとみなされません。年俸制のボーナスは、残業代の基礎の計算に含まれます。

別枠でボーナスが決められた金額を設定されている場合、年俸額+ボーナス÷12か月が基礎賃金です。ボーナスを含んだ年俸額の場合、残業代の基礎の計算は、全年俸額÷12か月で算出します。

年の途中で年俸額を合意なしで変えるのは契約違反

月給制では、年度途中に業績悪化などを理由に基本給が引き下げられて、給与が減額になることが考えられます。

しかし、年俸制では、たとえ企業の業績悪化などがあっても年度途中で減額するのは契約違反です。

万が一減額しなければいけないような場合には、企業は同意のサインをもらわなければいません。あくまでも労働者の合意が基本であるため、同意してもらえない場合の減額は違法です。

更新の際の理不尽な大幅な減額

前項で、年俸制には大幅な減額のリスクがあると説明しました。しかし、減額はあくまでも成果への正当な評価があっての減額を意味しています。

減額は、企業内のルールに沿っているか、ルールがない場合も社会通念上理不尽な減額ではないか、周りの人との整合性はあるかなどを検討すべきです。

過去には、社員が年俸額の減額が不当として裁判を起こしたことがあります。人事権を超えた年俸額の減額だと判断され、前年度と同等の年俸を支払うべきとの判決が出ました。

年俸額の交渉において、明らかに理不尽な減額で納得できないときには、じっくり会社と話し合う事が大切です。

状況が変わらない場合には、労働基準監督署に相談する、場合によっては裁判をするのも解決方法の一つです。

年俸制についてのまとめ

  • 年俸制とは、雇い主と労働者が合意のもとで、1年単位で給与総額を決める給与体系のことをさしています。前年度の成果をもとに年俸が取り決められるのが一般的であるため、成果主義の給与体系と見ることもできます。
  • 年俸制のボーナスは、会社の就業規則や雇用契約書の定め方次第で、全く別でボーナスの追加支給があるケースと年俸にボーナスを含んでいるケースがあるでしょう。
  • 労働者側からみた年俸制のデメリットには、毎年の更新で給与総額の変動リスクがあり、生活の計画を立てにくいとの意見もあります。
  • 企業側は年度初めに決定した年俸額は、あとから変更できません。
  • 年俸制で注意すべきポイントとして、基本的には残業代は支払われるべき、年の途中で年俸額を変えられない、更新の際の理不尽な大幅な減額などがあります。