働き方に対する考え方が変わりつつある現代、同じように働き方の政策のひとつであるワークシェアリングが注目されています。フルタイムで働いている人も知っておくとよい言葉です。

ここでは、ワークシェアリングとはなにか?厚生労働省があげるワークシェアリングの内容、ワークシェアリングのデメリット、海外・日本での事例などを解説します。

多様化する働き方を実現するために、この記事を読むことでしっかり理解しておくことができます。

そもそもワークシェアリングとはなにか?

ワークシェアリングは「仕事の分かち合い」とも呼ばれ、一人当たりの労働時間を減らして仕事を作り出す=雇用者数を増やすことが目的です。

政策のひとつとして、オランダ、フランス、ドイツ、アメリカなどで取り入れられています。

ワークシェアリングが誕生した背景には、長時間労働による過労死がある一方、失業で自殺が増加したことなどが起因しています。

マクロ経済におけるワークシェアリングは、雇用を安定化させるとともに、労働の流動化と産業構造の転換を促進することが可能と考えられています。

ワークシェアリングによって、長期的な失業を避けることができ、低賃金でも働きたいと思っている失業者は、ワークシェアリングで生まれたされた雇用につくことができるようになります。

ワークシェアリングは、ヨーロッパ型の社会民主主義の中で生まれた発想とされていますが、アメリカでも導入され、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)が以下6つのワークシェアリングを定義しています。

週あたりの労働時間短縮による雇用の創出

ジョブシェアリング
フルタイムの労働者が1人で担当していた仕事を、2人以上の労働者にチームで担当させる方法です。より多くの雇用の機会を提供できるというメリットがジョブシェアリングにはあります。

早期退職措置としてパートタイム化
退職後の再雇用とは別に、退職自体を早めてパートタイムや嘱託職員(しょくたくしゃいん)として雇用する方法です。
自発的パートタイム化
働き方に対する考えが変わりつつある今、自発的にフルタイム雇用からパートタイム雇用に変えたい人、ライフステージの変化でパートタイムからフルタイムに移行する逆のパターンも考えられます。
連続有給休暇時の代替要員
病気などの事情で、長期的に有給休暇を取得する労働者の変わりに他の人を雇用する方法です。
キャリア・ブレーク時代の代替要員
女性の社会進出において避けられない、出産・育児のための休暇の間、代替要員を雇用するのもワークシェアリングのひとつになるでしょう。

厚生労働省が掲げるワークシェアリングとは

日本では、厚生労働省がワークシェアリングを政策のひとつとしてすすめています。労働環境がアメリカやヨーロッパとは違うことから、日本では以下の4つのワークシェアリングのかたちが掲げられています。

雇用維持型
不景気な時や企業の業績が悪化した時などに、失業者を出さないことにスポットを当てたワークシェアリングです。
 
ひとり当たりの労働時間を減らすことで、企業の人件費を抑えて失業者を出さないする考え方です。
雇用創出型
短時間労働を組みわせることで、それまでのひとりでやっていた仕事量を分散、雇用を生み出すワークシェアリングの方法のことをさしています。
緊急対応型
雇用維持型に似ている緊急対応型は、より一時的な企業業績に関わる受注の悪化や生産の低下などに対して行われる、雇用維持のためのワークシェアリングでしょう。
 
一時的な勤務時間の短縮などで対応する形式です。
多様就業型
働き方に対する考えが多様化していることから、様々な人の働き方の希望に合わせた就業形態の導入することをさしています。
 
働けなかった人が働く機会を見つけられたり、在宅勤務、兼業や副業などさまざまな雇用形態はあるでしょう。

ワークシェアリングのデメリットと導入するための条件

ワークシェアリングでは、フルタイム労働者よりもパートタイム労働者が増える傾向があります。雇用形態の多様化は雇用創出には重要ですが、パートタイム労働者の位置づけが問題でしょう。

フルタイム労働者とパートタイム労働者の間での賃金格差も問題です。

給料だけでなく、ボーナス(賞与)の格差や男女間での賃金格差なども是正しなければ、ワークシェアリングの導入と維持は難しいでしょう。

ワークシェアリングの導入のためには、安定した収入や社会保障の安心感など、今までの従業員の思考を変える必要があります。

平均寿命が延びていることもあり、働き続けられる環境や求められる役割や能力などについて、それぞれの世代でのキャリアのあり方などの整備も必要です。

また、ワークシェアリング導入したときには、多くの人が一時的な給料や報酬の引き下げを感じる期間があるでしょう。生活水準を見直さなければいけないこともあるでしょう。

労働者が抵抗感をあまり持たない、または理解してくれることもワークシェアリング導入の大切な条件です。

ワークシェアリングの導入で、従業員の年齢層が変わることも考えられます。短い時間のみ働くスタイルは、比較的高齢な労働者が能力を活かせるチャンスでもあります。

受け入れる企業と周りの労働者が合意の上ですすめていくのが必須でしょう。

ワークシェアリングの事例

ワークシェアリングは、すでにヨーロッパを中心に事例があります。日本企業でも海外進出先でワークシェアリングによって、雇用を維持できた事例もあります。

ワークシェアリングの海外での実例

ワークシェアリングの成功例としてよくあがるのが、オランダです。

1980年代前半にオランダ病とまでいわれた経済危機に見舞われたときのことです。オランダは労働法を改正して、時短によるワークシェアリングを幅広く導入しました。

ワークシェアリングに加えて、政府は減税と社会保障の負担を削減することで実質的な収入の減少を抑える政策を取りました。

企業は労働時間の短縮に努め、労働組合は賃金の抑制に協力することで効果的な政策になった事はいうまでもありません。

1996年には、同一労働同一労働条件の取り決めがなされて、フルタイム労働者とパートタイム労働者の格差がなくなりました。

2000年には自発的にパートタイム、フルタイムを転換する権利を労働者に与えたことで、2001年のオランダの失業率は2.7%までに低下した成功例もあります。

ドイツでも、ワークシェアリング導入の成功例があります。1980年代に金属産業や自動差産業に関わる企業の労使協約で、労使側が自発的に導入を決めた経緯があります。

オランダの事例同様、労働時間の短縮で不況を乗り越えるために行われました。オランダを追って、2001年にはドイツでも同一労働同一賃金やパートへの差別の禁止がされています。

日本のワークシェアリングの実例

日本企業では、アメリカ進出したトヨタ自動車が、現地の工場でのワークシェアリング導入で成功しています。

アメリカにある6つの工場で、不況による業績悪化から雇用維持が難しくなったときに導入を決めました。

ひとり当たりの労働時間を1割減らし、給料も1割削減することで、トヨタと労働者が合意しました。人件費=固定費を削減し、雇用を維持しつつ、トヨタはアメリカでの不況を乗り越えることに成功しています。

ワークシェアリングについてのまとめ

  • ワークシェアリングは、「仕事の分かち合い」といわれ、一人当たりの労働時間を減らし、社会全体において他の人の仕事を作り出す=雇用者数を増やすことも目的にしています。
  • ワークシェアリングが誕生した背景には、長時間労働による過労死がある一方、失業で自殺が増加したことなどが起因しています。
  • 基本的にはヨーロッパ型の社会民主主義の中で生まれたのがワークシェアリングの発想とされていますが、アメリカでも導入されています。
  • 日本では、厚生労働省がワークシェアリングを政策のひとつとしてすすめています。
  • 日本のワークシェアリングには、雇用維持型、雇用創出型、緊急対応型、多様就業型の4つがあるでしょう。
  • 導入を成功させるためには、従業員の思考を変える、一時的な給料や報酬の引き下げを受け入れる、幅広い年齢層の従業員を受け入れる合意などが条件になるでしょう。
  • ワークシェアリングは、すでにオランダやドイツなどヨーロッパを中心に事例があります。また、日本企業でもトヨタは海外進出先でワークシェアリングによって、雇用を維持できた事例もみられます。