仕事のやりがいも大切ですが、生活の基盤になる収入も大切な事のひとつです。就職や転職を考えているときは、平均年収が気になるのも当然でしょう。
ここでは、日本の平均年収、平均年収ランキング、東京と道府県の平均年収についてなどを解説します。この記事を読むことで、就職や転職について、より多角的に考えられるようになります。
日本の平均年収は432万円
日本の平均年収は、国税庁の調査で知ることができます。年に一度実施される「民間給与実態統計調査結果」では、前年の実績をもとに毎年9月に発表されています。
今年平成30年9月に公開された「民間給与実態統計調査結果」は、平成29年12月31日の民間事業所の源泉徴収義務者から、所得税の納税の有無を問わずに所得を得ている人が対象です。
上記の事から「民間給与実態統計調査結果」は、給与所得者個人個人の実際の所得から、平均年収を割り出したものではありません。
複数の所得をいくつかの事業所から得ている人は、事業所の数と同じく人数をカウントています。
平成29年分民間給与実態統計調査結果では、1年を通じて勤務した給与所得者の年間の平均給与は432万円です。男女別では、男性が男性532万円、女性287万円という違いがあります。
雇用形態に着目すると、正規社員が494万円、非正規社員が175万円です。
正規とは正社員だけでなく、役員や青色事業専従者も含まれているため注意が必要です。非正規にはパートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などが含まれています。
前年度、平成28年分民間給与実態統計調査結果では、平均給与が422万円、男性521万円、女性280万円、正規487万円、非正規172万円で、全てでいくらかの増加がみられています。
平均年収が高く感じる理由
平均年収の数字をみると、実際にもらっている金額よりも高く感じる人も多いでしょう。しかし、年収とは源泉徴取前の給与にボーナスなどが含まれている金額をさしています。
単純に月収を12でかけるよりも必然的に多く、厳密にいえば、会社から配布されたものや定額で譲られたものなども、現物支給として給料明細に金額が記載されている場合は含まれています。
民間給与実態統計調査結果では、平均年収の給料手当と賞与の内訳も公開されており、平成29年度平均年収432万円のうち、給与手当が364万円、賞与が68万円と記載されています。
平成28年度平均年収422万円では、給与手当が357万円、賞与は65万円です。
平均年収の中央値は平均よりも低い
平均年収とは、単に年収の総額を調査対象者の人数で割っただけの数字で、一般の人からすれば現実から離れた数字を示すこともあります。
例として、100人のうち年収が400万円のひとが99人、年収1億円の1人いたとすると、平均年収は、1,000万円をこえてしまいます。
より現実的な平均的年収を知りたい場合は、中央値に着目するのがよいでしょう。中央値とは、対象すべてのうちのちょうど真ん中の人の年収をさしている数字です。
民間給与実態統計調査結果では、中央値の発表はありませんが、年収を100万円単位で区切った給与階級別分布が発表されています。
すでに給与階級別分布も発表されている平成28年度民間給与実態統計調査結果では、最も構成比の比重が多いのが17.5%を占める300万円超、400万円以下の854万人で、全体の中央値の50%が調査結果の比重の層に収まっています。
実際の平均年収は、平成28年度では422万円ですが、中央値は平均年収以下になる事がわかるでしょう。
平均年収のランキング
各企業別の平均年収の公的な調査はありません。
参考になるものとして、「就職四季報2019年版」をもとに東洋経済オンラインが集計した以下のランキングが参考になるでしょう。トップ10には、総合商社やマスコミ、広告代理店業などが名を連ねています。
1位:キーエンス 1,861万円
2位:朝日放送 総合職 1,518万円
3位:ヒューリック 総合職 1,418万円
4位:三菱商事 1,386万円
5位:伊藤忠商事 1,384万円
6位:ファナック 1,318万円
7位:住友商事 1,255万円
8位:日本経済新聞 1,254万円
9位:電通 1,248万円
10位:丸紅 1,221万円
第1位のキーエンスは計測・制御機器の大手企業で、高収入企業として名高い会社です。最近の営業利益率は、50%超えを記録しています。
上記の平均年収ランキングに対し、民間給与実態統計調査結果では、以下の業種別の平均給与を発表しています。
1位:電気・ガス・熱供給・水道業 747万円
2位:金融業・保険業 614万円
3位:情報通信業 598万円
4位:学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業 510万円
5位:製造業 507万円
平均年収は小幅ながらも増加していますが、業種別の平均年収では、電気・ガス・熱供給・水道業、不動産業,物品賃貸業、金融業・保険業のみが、前年平均年収に比べて減少している結果がでています。
給料は労働に対して支払われるものであるため、高給になればそれなりに忙しい仕事です。年収だけでなく、待遇や働きやすさなど、自分の働き方にあった会社を選ぶ事が重要でしょう。
東京都とその他の地域の平均年収
民間給与実態統計調査では、都道府県別の平均年収の発表はありません。公的な調査で、都道府県に調査があるのは厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。
賃金構造基本統計調査は、労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするためのものです。
調査範囲は10人以上の常用労働者を雇用する民間事業所で、有効回答が得られたものに限っています。最新のものは平成29年賃金構造基本統計調査の結果で、平成29年6月分の賃金等についての調査結果です。
賃金構造基本統計調査での賃金の全国の平均は304.3千円で、前項で解説した民間給与実態統計調査結果よりも低水準です。
都道府県別の平均賃金は以下の通りです。
1位:東京都 377.5千円
2位:神奈川県 329.8千円
3位:大阪府 326.1千円
4位:愛知県 318.3千円
5位:京都府 311.6千円
6位:千葉県 309.4千円
7位:奈良県 300.7千円
8位:三重県 300.0千円
9位:茨城県 299.8千円
10位:広島県 297.6千円
1位:青森県 234.8千円
2位:宮崎県 235.5千円
3位:岩手県 236.8千円
4位:秋田県 240.8千円
5位:沖縄県 244.4千円
6位:佐賀県 246.6千円
7位:山形県 246.7千円
8位:長崎県 253.4千円
8位:島根県 253.4千円
10位:熊本県 253.8千円
都道府県別の平均賃金では、東京と青森では大きな差がある事がわかります。上記順位のトップに入っている都府県は、人口も多いことから平均を押し上げていると見ることもできます。
当然のことながら、東京と東京以外の道府県では生活にかかるコストも違います。
生活費の基本となる家賃では、東京と地方では数万円の開きがあるため、平均年収が高いからといって、生活も楽とはいい切れません。
総務省統計局が5年ごとに発表している住宅・土地統計調査では、専用住宅の家賃が最も高いのが東京都で、77,174 円という結果が出ています。もっとも安い家賃は青森県では、36,529 円です。
住宅・土地統計調査は平均賃金のランキングと一致しており、東京都と青森県の家賃の年間の差額は約4万円×12か月で48万円ほどの開きがある事は興味深い点です。
参考:平成29年賃金構造基本統計 調査結果の概況 都道府県別
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平均年収についてのまとめ
- 日本の平均年収は、年に一度実施される「民間給与実態統計調査結果」で知ることができます。
- 平成29年分民間給与実態統計調査結果では、平均給与は432万円とされています。前年度、平成28年分では、422万円だったことから、わずかながら増加しています。
- 平均年種が高く感じる理由には、年収が源泉徴取前の給与にボーナスなどが含まれている金額で示されている理由があります。
- また平均よりも実態に即した、平均年収の中央値でないところも理由のひとつです。
- 給与階級別分布からいえば、平成28年度民間給与実態統計調査結果では、300万円超、400万円以下に中央値があると予想されています。
- 「就職四季報2019年版」をもとにした平均年収ランキングは、1位:キーエンス 1,861万円、2位:朝日放送 総合職 1,518万円、3位:ヒューリック 総合職 1,418万円です。
- 民間給与実態統計調査結果による業種別ランキングでは、1位:電気・ガス・熱供給・水道業 747万円という結果です。
- 賃金基本統計調査において、東京と道府県の平均賃金では、東京都は1位で377.5千円、最下位が青森県の234.8千円です。