現代では、大企業を中心に「早期優遇退職制度」を導入している企業が多くなっています。

この記事では「早期優遇退職制度」とはどのようなものか、「早期優遇退職制度」がもたらす影響などを、企業側、雇用側それぞれに分けて解説します。

そもそも早期優遇退職制度とはなにか?

「早期優遇退職制度」とは、定年退職を迎える前に退職することにより、退職金が優遇される制度のことです。

定年退職との大きな違いは、定められた定年よりも早い段階での退職であることで、定年退職よりも退職金が優遇されることや、雇用者が自分の意志で退職のタイミングを決めることなどがあげられます。

早期退職制度ができた背景には、団塊の世代が50代に差しかかった1990年代に、企業が若返りを図ることを目的に導入が進んだことがあります。

2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、定年を64歳以下としている企業は継続雇用を希望した人について65歳まで継続雇用をすることが義務づけられました。

高年齢者雇用安定法の改正を期に、退職年度を自ら選べる制度を導入した企業もあります。

早期優遇退職制度には2種類ある

早期優遇退職制度には、「選択定年制」「早期希望退職制度」の2種類があります。

選択定年制は早期退職を選択できる制度

選択定年制は、定年退職を迎える前に自分の意志で早期退職を選択できる制度です。企業内の世代間のバランスを図る目的で、期間を決めずに人事制度として継続的に実施されています。

選択定年制を導入している多くの企業では、45歳、50歳、55歳など節目の年齢を設定し、その年齢に達する時点で退職するかどうかを本人が選べるシステムを採っています。

選択定年制を活用して早期退職した場合には、退職金の割り増しなどの優遇を受けることができます。逆に退職を選ばず企業に残る場合には、役職を外したり給料のダウンが行われる場合もあるため注意しましょう。

早期希望退職は臨時で早期退職者を募る制度

早期希望退職は、主に企業の業績が悪化したときに臨時で早期退職者を募るものです。多くの場合、一定の年齢以上の社員を対象に志願者を募ります。

志願者の数が企業の設定人数に及ばない場合は、企業側から特定の社員に早期希望退職を勧める場合もあります。

早期希望退職の制度を活用して早期退職した場合は、退職金の割り増しなどの優遇を受けることができるほか、再就職の斡旋を受けることが出来ます。

選択定年制と早期希望退職の違い(自己都合と会社都合)

選択定年制も早期希望退職も、働いている側が自分の意志で退職を決めるものですが、退職理由には違いがあります。

定年退職制の場合、基本的には自己都合の退職で、早期希望退職の場合、基本的に会社都合の退職です。

自己都合の退職と会社都合の退職とでは、失業給付金の支給開始時期に違いがあります。自己都合の退職の場合は、失業給付金の支給まで約3カ月の待機期間を要します。

しかし、会社都合の退職の場合、3カ月の待機期間がなく失業給付金の支給を受けることができ、給付日数も会社都合の退職のほうが長く設定されている事が特徴です。

国民健康保険の減額措置があることも特徴です。

早期退職制度は公務員にもある

早期退職募集制度は公務員にもあります。

2013年には早期退職募集制度が定められ、45歳以上の職員を対象に、早期退職した場合の退職金が、定年前の残念数1年につき3%本給(公務員では俸給月額)が割増されると定められました。

早期退職募集制度が定められた前年の2012年には、公務員の退職手当が約400万円減額されることが発表され、地方公務員の大量退職が話題になりました。

早期優遇退職のメリットとデメリット

早期優遇退職の企業側のメリット

人件費を削減できる

早期優遇退職制度を導入することによる企業側の一番のメリットは、人件費を削減できることです。特に早期希望退職制度は会社の経営が悪化したときに再建を図るために取られる方法です。

企業にとって人件費は大きな経費のひとつであるため、退職金の優遇措置で一時的に経費がかさむことを考慮しても、給料の高い層が退職することは充分にコスト削減効果が期待でき、企業の再建に大きな意味を成します。

企業の若返りを図れる

企業の若返りを図ることができるのも、早期退職制度を導入した企業のメリットのひとつです。日本は少子高齢化が進んでおり、企業の中でも社員の平均年齢の上昇が顕著になっています。

早期優遇退職制度で一定の年齢以上の社員が退職することにより、企業の若返りを図ることができるメリットがあります。

早期優遇退職の社員側のメリット

退職金の優遇が受けられる

早期優遇退職制度を活用する社員側としての一番のメリットは、退職金が増額されることと、定年まで待たずに退職金を手にすることができることです。

定年後に事業を始めようと考えていた人は、前倒しで計画を進めることもできるようになります。老後の資金が十分に用意できている場合は、早めに仕事をリタイアして趣味などに時間を費やすこともできます。

転職先の斡旋を受けられる

早期希望退職を募っている場合は、企業の業績が悪化していることが考えられます。長期的に考えれば、会社に残るよりも早めに転職をしたほうがよい結果になるかもしれません。

早期優遇退職制度を活用して退職した場合は、企業から再就職先の斡旋を受けられることも少なくありません。制度を利用してうまく転職ができることでメリットを得ることが出来ます。

早期優遇退職制度の企業側のデメリット

優秀な人材を失う可能性がある

早期優遇退職制度を導入することによる企業側のデメリットには、企業側としては残って活躍してほしいと考えている人が制度を活用して退職してしまう可能性があることです。

優秀な人は転職先を探しやすいため、早期優遇退職制度を活用して退職することが多く、コスト削減は叶っても企業の質が低下してしまうことがあります。

組織が混乱する可能性がある

多くの人が一時期に退職することにより、一時的に組織が上手く回らなくなり混乱をきたす可能性があります。

どの社員が早期退職を希望するかが事前にわからないため、フォロー体制を整えることが難しいことはデメリットでしょう。

早期優遇退職制度の社員側のデメリット

転職先が見つからない可能性がある

企業が転職先を斡旋してくれることもあるとはいえ、50代~の転職は容易なものではありません。

早期退職前に転職先の目途をつけていないと、転職先が見つからない焦りから、結果として不本意な再就職を決めてしまうことにも繋がります。

早期優遇退職制度の活用にあたり考えておくべきこと

収入ダウンを賄える(まかなえる)か考えておく

早期退職をして再就職した場合、退職金は優遇されますが、再就職先での給料が今までより劣ることが考えられます。

早期退職を決める前に、今の会社に残った場合と再就職した場合を比較してこの先の人生設計を立ててみることが大切です。

転職市場でのアピールポイントを考えておく

再就職するにあたり、自分の市場価値をしっかり考えることも重要です。

自分のアピールポイントはなにか、転職先に貢献できる能力はなにかを整理し、転職活動に備える事が求められます。

再就職以外の道も考えてみるとよい

早期退職の後、すぐに再就職するだけが道ではありません。今までと違う分野にチャレンジしたい場合、いったん職業訓練校に通うという選択もあります。

退職金を利用して起業や開業をすることもできるため、広い視野で次の人生を考えてみるのもよいでしょう。

早期優遇退職制度についてのまとめ

  • 早期優遇退職制度とは、定年退職を迎える前に退職することにより、退職金が優遇される制度のことです。
  • 早期優遇退職制度には、人事制度として継続的に導入されている「選択定年制」と、臨時で募集される「早期希望退職制度」があります。
  • 「選択定年制」は自己都合の退職、「早期希望退職制度」は会社都合の退職となる場合が多く、失業給付金の支給に違いがあります。
  • 公務員にも早期退職制度があります。
  • 早期優遇退職制度の企業側のメリットは、人件費の削減や企業の若返り、デメリットは優秀な人材が辞めることや組織の混乱です。
  • 早期優遇退職制度の社員側のメリットは、退職金の優遇や再就職先の斡旋、デメリットは希望に合致した転職先が見つかりにくいことです。
  • 早期優遇退職制度を活用する前に、収入ダウンを賄えるか、自分のアピールポイントはなか、再就職以外の道はないか、などを考えておくことが大事です。