経済ニュースで「内部留保」という言葉を耳にしたことはありますか。

政治でも、ある政党が「内部留保課税」を行うことを政策として打ち出し、以前批判が高まりました。

普段生活していて、内部留保と言う言葉は使わないかもしれませんが、ビジネスにおいては重要な言葉です。

今回の記事では内部留保について以下のような点を中心に解説いたします。

・内部留保とは
・内部留保の役割
・内部留保課税とは

内部留保とは

内部留保とは、「社内留保」とも呼ばれ、企業の儲けの蓄えのことを指します。企業は経済活動で得た利益を不況時に備えて、売上・借金・出資の資金調達に分類していますが、その中の「売上による資金調達」を意味します。

企業の純利益から、税金、配当金、役員賞与等の社外に渡すお金を差し引いた残りのことです。会計上では、「利益準備金」、「任意積立金」などと項目で分類され、貸借対照の純資産の部に計上されます。

実は、「内部留保」という言葉は、正式に定義されていません。ただ、黒字企業がある期に獲得した利益を全額配当に回さなかった場合、残った利益(余剰分)を「内部留保」と呼びます。ある1期だけではなく、それを蓄積させたものも「内部留保」と呼ばれます。

輸出型の製造業では外需拡大の恩恵を受けている日本企業が多く、欧米の企業に比べると内部留保が厚いと指摘されています。

総資産に対する内部留保の比率が高ければ、財務が健全であることを示しています。余ったお金をどのように分配するかは、それぞれの企業の考え方によって異なります。

日本企業は諸外国に比べて内部留保の比率が高く、2017年には約400兆円にまでなり過去最大の値だといわれました。「これ以上、内部留保を厚くしておくのは、企業だけがおいしい思いをしていて良くない」とし、批判が多く出ています。

従業員の給与の総額が下がっているにもかかわらず内部留保の比率が高いところの場合、従業員に還元すべきではないかという意見も出ています。

最近では、大株主からの要求や買収を防ぐために、一部を配当にまわす企業も増えています。

内部留保の役割

内部留保は、企業拡大するために使うことができる資金として、企業としては確保しておきたいものです。

しかし、内部留保の役割はそれだけではありません。内部留保が厚いからこそ、信頼が高まり、企業間の取引において大きな役割を担っています。

企業間の取引においては、長期取引を前提としています。企業間同士の信頼がなければ、長期取引は難しいものです。

その信頼を何で測るかと言った時に、内部留保が有効な手段の1つとして用いられます。内部留保があれば、その環境に応じた投資(研究開発費、設備投資等)を迅速に行うことができるため、長期取引の間に企業に何らかの大きな環境変化が生じても、その企業が対応できると見込めます。

一方、内部留保の少ない企業は、環境変化に適応させるために、その都度多くの負債を調達することになります。

環境変化のたびに財務的なリスクを負い、負債が加する企業と、純資産で経営を賄っている企業、どちらが長期的に付き合いたいかと言えば答えは明白でしょう。この純資産が返済不要な軍資金である内部留保なのです。

現在、大手企業も倒産する時代です。内部留保が多ければ、倒産のリスクも低くなります。そして金融機関からの信頼も厚くなり、融資も受けることができます。株式会社であれば、投資家の信頼も厚く、株式の価値が上がるため、企業の地位も向上するのです。

内部留保は現金ではない

内部保留の比率が高い会社に対し、従業員に少しでも給与として還元したり、株式の配当金を増やしたり、と会社の外に還元すべきであるという意見が世間では多く聞かれます。

これらの意見は「内部留保=現金」というイメージが強いからなのかもしれません。

しかし、内部留保の中身は、実は現金ではない可能性もあるのです。内部留保の意味をもう一度考えてみましょう。

バランスシートでいうところの純資産にあたるのが内部留保です。この純資産は、負債と合わせて資産として表記されます。

バランスシートには、純資産はどのように調達したかという記録しか残っておらず、現在どのような形で残っているかという点についてはわかりません。

つまり、純資産(内部留保)の形は現金なのか株式であるのか、もしくは設備なのかわからないのです。企業が本当に現金だけを多く溜め込んでいるのか、という点については表面的な数値では測れません。

したがって、内部保留の比率が高い会社に、現金で還元せよといっても実際には難しい場合もあるのです。

内部保留は必ずしも現金ではないということを知っておきましょう。

内部留保課税とは

内部留保は必ずしも現金ではないと先程述べました。しかしある政党が内部留保への課税を公約に掲げていました。政府としては、内部留保の比率を下げるために、課税をしたいと思っているわけです。これは実現することなのでしょうか。

実際に課税することができます。しかし、企業側二重課税として内部留保課税を避けようとして、配当や自己株を買うようになります。

その結果、内部留保は減りますが、経営が不安定になります。リーマンショックや、世界規模の経済不況のため、企業は内部留保を厚くしておきたいでしょう。

公約の表向きは「利益を生んでいる企業を懲らしめて、正面に還元し、庶民の生活の水準を上げる(水準を守る)」と語られますが、企業が倒産してしまっては元も子もありません。

内部留保課税することが本当に企業にとって良いことなのか、今一度考える必要があるのではないでしょうか。

内部留保のまとめ

  • 内部留保とは企業の純資産のことである
  • 内部留保は必ずしも現金とは限らない
  • 内部留保の比率が高い会社ほど、倒産しにくい(信頼度が高い)
  • 内部留保に課税したいという政府の動きがあるが、二重課税ではないかという批判も出ている