会社の都合により、サービス残業を強いられているという方は少なくありません。
他の社員にもサービス残業をするのが当たり前のような空気が浸透している会社では、やむなく自分もそうせざるをえなくなってしまうことがあります。
自分ひとりの力で職場の状況に立ち向かうのは難しいでしょう、まずはあらかじめ準備をし、しかるべき制度の利用や周りの協力をえることが得策です。
この記事では、以下の3つの対処法について解説します。
・会社に訴える
・勤怠の記録を自分でつけておく
・周囲にアピールする
この記事を通して、サービス残業を強いられる状況を変える準備を今日からでもすることができるようになります。
目次
サービス残業は法律に違反している
サービス残業とは、時間外労働のうち賃金が払われないものをさします。
サービス残業は、かつての日本では多くの企業で当然のようにおこなわれていましたが、本来、サービス残業は違法な行為です。
法律では基本的に、時間外労働には割増賃金が払われなければならないため、サービス残業は法律に違反しています。
近年、過度の長時間労働は社会問題としてとりあげるようになったこともあり、今ではサービス残業は厳しい目を向けられるようになってきています。
しかし、いまだにサービス残業は、様々な形でおこなわれているのが実情です。
サービス残業の例
残業申請をさせないことでサービス残業をさせる
記録上は時間外労働をしていないことにすることで、残業申請をさせないようにするサービス残業の方法です。
定時になったら一度タイムカードを切らせる、という手段が多く用いられています。
あるいは、自己申告定制で常に定時退社であると報告しなければならないようになっているケースもあります。
労働時間ににふさわしくない量の業務与えるのもサービス残業
決められた時間以上の残業は禁止されていても、与えられた仕事量が時間内に終わるものではなく、やむなく自宅で仕事をせざるをえないようにしむける会社もあるでしょう。
自主的に自宅で仕事をする場合は、時間外労働にあたらず、残業代は発生しません。
しかし、持ち帰りを指示された場合や、黙示的に命令された場合は残業にあたります。
黙示的な命令とは、持ち帰りを直接指示してはいませんが、期限までに明らかに終わらない量の仕事を与えられた場合などがあたります。
始業時間前の準備をさせるのも残業にあたる
基本的に社内で会社に指示された行動は労働にあたり、賃金が発生します。
記録上には残らなくとも、就業開始前の朝礼や、掃除、仕事の準備なども就業時間前の会社の指示であれば残業にあたります。
ほかにも、会社で指定されている制服があり、就業時間までに更衣室で着替え終えていなければならないとされている場合、更衣に必要な時間は、本来は残業にふくまれます。
管理職に昇進させてサービス残業させることもある
法律上、監督管理者には残業代は発生しません。しかし、管理職には実体が伴っていなければ管理職とは認められません。
肩書きだけ管理職を与え、サービス残業を強いる行為は違法です。実体が伴う管理職であるかどうかの判断基準は以下の通りです。
管理監督者としての職務を行っているか
経営方針の決定,労務管理,採用上の指揮等が経営者と一体的な立場か
自己の勤務時間について裁量を有するか
手当などの待遇がされているか
このような要素を備えているかで、実質的な管理職であるかどうかを判断することができるでしょう。
サービス残業の実態
労働時間に関する調査では、サービス残業の現実が明らかになっています。
月あたりのサービス残業の平均は、一般社員で18.6時間、課長クラス異常で28.0時間と、かなりの時間にのぼります。
残業時間自体が、一般社員20.5時間、課長クラス異常28.4時間ですから、ほとんどの残業について残業代が支払われていない実態が浮き彫りになっています。
残業について、上司や会社側が適切なマネジメントを行っていないという不満を持つ方も少なくありません。
サービス残業を強いられたときの対処法
会社に訴えてサービス残業に対処する
上司が独断でサービス残業を指示している場合、会社に訴えることで改善されるケースもあります。
会社側が上司の行動を指示している、または黙認している場合は直接の効果がみられない可能性がありますが、まず会社側の態度を確認することも必要です。
使用者が故意にサービス残業をさせている場合、刑事罰の対象にもなりえるため、会社側も好き勝手はできません。
勤怠の記録を自分でつけて対処する
実際に行動を起こす際に重要なのが、サービス残業の証拠を残しておくことです。証拠がなければ、会社側に白を切り通される恐れもあります。
まず、元々の給与について定められた、雇用契約書や、就業規則などが必要です。給与明細も手元に残しておきましょう。
タイムカードなどの記録が時間通りにされていればそれがサービス残業の証拠になります。
会社側が被用者に対して記録の開示を拒んでも、裁判の時には証拠保全という裁判所から直接証拠の提出を求める手続きがあるため、会社側はそれには応じざるをえません。
前述の通り時間通りにタイムカードを通させないケースもあります。
その場合、毎日の出勤・退勤時間をノートやスマホアプリなどで記録して置くことが大切ですが、証拠として弱いため、補完する証拠として残業中のメール等の履歴、パソコンの起動・終了時間のデータも残しておきましょう。
裁判というと通常は1年以上の期間が必要になるため、労力を考えると尻込みしてしまうかもしれません。すぐに裁判しなければいけないというわけではないため、まずは会社と話し合うのがよいでしょう。
裁判はあくまで最後の手段です。しかし、労働者に最後の手段を持っていなければ、会社側としては恐れるものがなく、まともに取り合う気も生まれません。
また、最近は比較的新しい制度として労働審判という制度が始まりました。労働審判は審判が3回以内に終了し、およそ7割は3ヶ月以内に、長引いても半年以内にはほぼ解決する手続きです。
労働審判で解決しなかった場合には、裁判所で争うことになりますが、だいたい80%は労働審判で解決しています。
また、労働問題を専門とした裁判官や審判員が担当しているため、弁護士を雇わない場合でも、個人で手続きを進められる程度のサポートを受ける事が可能です。
周囲にアピールして対処する
サービス残業は周囲に流される形で、心理的に拒否しにくい状況になっていることがほとんどです。
流されるのを止めるために周囲にサービス残業をしないと宣言することが、状況を変えるきっかけになります。
周囲に同じようにサービス残業に不満を持っている同僚がいれば、話をしてみるとよいでしょう。
同僚の協力をえることができれば、状況改善に向けて力強い見方をつけることができます。
また、サービス残業の証拠を抑えているのであれば、労働基準監督署に相談・通報することも可能です。通報したことを会社に知られたくなければ、匿名で扱ってもらえるように要請しましょう。
他には全労連や全国ユニオンなど、労働者組合に相談してアドバイスをもらうことも考えられます。
サービス残業についてのまとめ
- サービス残業は法律違反であり、泣き寝入りする必要はありません。
- ただ、必ずしも会社と徹底抗戦しなければならないというものでもありません。
- 労働環境の改善は、長期的には会社側にとっても利益になります。
- しっかりと準備をすれば、お互いにとってよりよい解決に向けて行動することができるでしょう。
- サービス残業の現実を解決するためには、まずは証拠を抑えておくことが重要です。
- 周囲との相談や、会社側との話し合いを試みましょう。